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大日本国憲法の草案がうっかり盗まれた!? 伊藤博文が滞在していた金沢区の旅館、東屋とは?

ココがキニナル!

金沢区の東屋という旅館で伊藤博文が大日本帝国憲法を起草したそうですがその草案を盗まれてしまう事件が発生したらしいです。東屋は廃業してしまったようですが当時の面影は残っているのでしょうか?(たこさん)

はまれぽ調査結果!

金沢区にあった旅館「東屋」で発生した、大日本帝国憲法の起草案盗難事件は翌日無事に発見された。当時をしのばせる面影はなく、記念碑が建っている。

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ライター:細野 誠治

起草と経過。盗難と、その顛末



もう少し、この東屋界わいや大日本帝国憲法起草について掘り下げてみよう。
 


東屋跡にも程近い、神奈川県立・金沢文庫へ
 

お話を伺った学芸課長の西岡氏と参考資料


 ・『金沢文庫と明治の元勲たち  伊藤博文と陸奥宗光 』
   神奈川県立金沢文庫 刊
 ・『伊藤博文公と金沢別邸』
   楠山永雄 著/金沢郷土史愛好会
 ・『ぶらり金沢散歩道』
   楠山永雄 著/金沢郷土史愛好会

上記の3書籍から歴史を紐解いてみよう。

極々、簡単ですが、ちょっと歴史の勉強を。
 


草案の中心人物は伊藤博文(1841~1909)


265年に渡り続いた江戸時代が終わりを告げ、新しい明治という時代が到来。
1868(慶応3)年のこと。当時、日本には憲法がなかった。
憲法設立は、幕末期に諸外国と結ばれた日本に不利(不平等)な条約を改定するため、また開かれた国会を開くためにも憲法の制定が必要との声が上がっていた。
 


自由民権派の中心メンバー、板垣退助(左)と大隈重信らからの要求も


当時、内務卿(実質的な総理大臣)だった伊藤博文を中心として憲法の制定が始まる。
メンバーは以下の通り。
 


井上毅<こわし>(1843~1895)。憲法、皇室典範を担当
 

伊東巳代治〈みよじ〉(1857~1934)。議院法を担当
 

金子堅太郎(1853~1942)。貴族院令、衆議院議院選挙法を担当


伊藤、井上、伊東巳代治、金子の4人に加え、顧問としてドイツの法律学者のロエスレル・モッセが参加していたという。

では、そもそも何故「東屋」での草案作りだったのか?
伊藤博文のお気に入りの宿だった、という点もあるのだが、厳密に言うと広く知られているものとは少し違っていた。
 


明治20年代の「東屋」


実際の草案作りは、横須賀市の「夏島」にあった伊藤博文の別荘で行われていたそうだ。
 


現在の「夏島」エリア Google mapより
 

当時の「夏島」は独立した「島」だった


夏島の伊藤博文の別荘は部屋数が少なく狭かったという。
 


夏島別荘の間取り


そのため伊東巳代治、金子堅太郎の2名が「東屋」に宿泊。
井上毅は野島にあった「野島館」に宿泊。伊藤博文だけが夏島の別荘で寝起きをしていたのだ。
 


「野島館」も現存はしていない
 

野島にある伊藤博文金沢別邸は、晩年に造られたもの(これはまた、別の話)


問題の「東屋」は起草のための事務所兼宿泊所として利用されていたそうだ。

近くの旅館に寝泊まりをし、船で夏島へ日参する日々。
この行動には理由があった。伊藤博文たち起草メンバーは自由民権派からの妨害を恐れていたため(自由民権派は、ドイツ式の国家権力の強い憲法が作られるのではと危機感を募らせていたと言われる)。

しかし、事件は起こってしまう。1887(明治20)年、8月6日の深夜。
東屋に泊まっていた伊東巳代治の部屋に泥棒が入り、機密書類の入ったカバンが盗まれてしまう。
 


巳代治、やらかす


機密の漏洩を恐れていたはずも盗難に遭ってしまった。
被害の当事者の伊東巳代治は、ひどく狼狽したと伝えられている。
 


『伊藤公憲法資料盗難之顛末』


すわ、自由民権派による犯行か? と思われた盗難だったが犯人はただの物盗りだったようだ。
近くの大豆畑でカバンは発見され、機密書類は無事だった。
(同封されていた100円ほどの現金が抜き取られていた。現在の価値にすると100万円くらい)
この犯人は捕まってはいない。
  


草案の夏、厳戒の夏島



この事件をきっかけに、伊藤博文、井上毅、伊東巳代治、金子堅太郎の4人は夏島の別荘で「合宿」状態で起草を行うことになる。
(起草に参加した法律学者のモッセは、夏島に近い寺に寝泊まりをしていたと伝わっている。この場所は判明していない)
 


明治期に描かれた夏島。手前中央が夏島、右奥が野島


盗難事件が起こったのは8月6日。以降、夏島の狭い部屋で4人の男たちが膝を詰めて話し合いを行うことになる。

当時は冷房もなかった時代。
伝わるには、話し合いに煮詰まると4人は部屋を出て、夏島の海で泳いでリフレッシュをしていたそうだ。
 


起草に詰まったら、海へ


約1ヶ月間に及んだこの「合宿」で、ついに大日本帝国憲法の起草が完成する。
1887(明治20)年の6月上旬から、同年9月上旬までの3ヶ月の出来事だった。

その後、4人が練った起草は東京の官邸に舞台を移され修正作業が行われ、1888(明治21)年3月、ついに草案を脱稿。
枢密院(天皇の最高諮問機関)が設置され、明治天皇臨席で審議が行われ制定・公布に至る。
 


1889年2月11日、公布(『憲法発布略図』揚州周延<ようしゅう・ちかのぶ>・画)




もうひとつの起草の地、伊藤博文別荘のあった夏島へ



起草の地、盗難のあった「東屋」の現在の様子は冒頭の通り。では、もうひとつの地、伊藤博文の別荘のあった「夏島」は現在、どうなっているのだろうか?
行ってみよう。
 


舞台は横須賀市へ。京急線「追浜」駅が最寄り


改札を出て、ひたすら東へ。
(または京急追浜駅から夏島、住友重機械間バスで「夏島」で下車。徒歩5分)
 


夏島貝塚通りに伊藤博文の別荘跡地はある
 

夏島貝塚の隣
 

ここがかつての別荘跡地。現在は記念碑が建つ


起草メンバーら4名が投宿した伊藤博文の別荘は、今はなく記念碑が建てられている。
役目を終えた建物は取り壊され、小田原城近くに移設されたという。
理由は、伊藤博文の父の老後の居宅として。しかし1923(大正12)年の関東大震災によって消失してしまったそうだ。

この石碑の設置は1926(大正15)年。
 


写真に見える木・タブノキ辺りが別荘のあった場所


地元の古老の記憶にあった「タブノキの側に別荘が建てられていた」という証言をもとに記念碑が建てられたそうだ。
 


かつての記念碑


しかし太平洋戦争により荒廃。その後の1951(昭和26)年に改修され再除幕。さらに1975(昭和50)年、かつての場所から200メートル離れた場所に移設され現在に至っている。
 


伊東巳代治、金子堅太郎らが発起人となり作られた
 

明治憲法草案起草の跡
 

記念碑に刻まれた文言と、その拓本
 

ユニークな形は76枚の御影石をはめたもの。憲法全76条を表している
 

記念碑から見える景色。海は見えない




取材を終えて



憲法起草の地を3ヶ所回ってみて感じたことは、当時をしのばせるものは「何ひとつ見えなかった」ということ。
草案の盗難事件が起こったのは1887(明治20)年。今から128年も前の出来事。しのばせるものが何もないのも仕方のないことだ。

ただ、当たり前に、すべてのものは人が作るのだと改めて思う。
一刻も早い近代化への道程に必要なものを、情熱を持って作られたのだと、その場に立って想う。
 


近代への礎、その地


起草に関わった4人の先人が見ていた海が唯一、当時をしのばせるものかな、と。
金沢と、横須賀の海が見ていた、憲法起草の地が少し誇らしい。
そんなキニナル場所でした。


―終わり 


明治憲法起草の地(東屋跡)
 京急線「金沢八景」駅より徒歩10分
明治憲法草創の碑
 京急線「金沢八景」駅より徒歩15分
神奈川立 金沢文庫
 〒236-0015 横浜市金沢区金沢町142番地
 電話:045-701-9069
明治憲法起草地記念碑
 京急線「追浜」駅よりバス
 夏島、住友重機械間バスで「夏島」で下車。徒歩5分

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  • 何故か全て見た覚えがあるものばかりだなと思っていたら、横浜歴史博物館や神奈川県立歴史博物館で見た資料や、実際に釣りに行った時についでに前を通ったから見掛けただけでした。

  • 誰か明治天皇が偽物だからこいつが出世したって言ってなかった? 全く歴史なんて出鱈目ばかりだな。

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