海の公園に打ち上がる大量の“藻”の実態とは?
ココがキニナル!
八景島海の公園の砂浜に、青藻が大量に打ち上げられており、海水浴どころではありませんでした。この藻は昔からあるものなのでしょうか?それとも、環境が影響しているのでしょうか?(jbさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
藻は「海の公園」ができた直後、昭和57年ごろからあるが、5、6年前から減ってきている。環境が悪いわけではなく、むしろ水質はどんどん良くなっていた!
ライター:吉岡 まちこ
正体はアオサ。八景島の海をきれいにする働きもしている!(つづき)
ところで「海草」と「海藻」の違いはご存知だろうか?
「海草」は海底に根を張り、花を咲かせて種子で増えるもの。世界でも50種ほどしかない。
一方、「海藻」は数万種類もあり、胞子で増えるもの。コンブ、ワカメ、そして今回のアオサもこの類。
どちらも光合成をし、海中に酸素を供給し、また魚介類の産卵の場所や稚魚を育む場所として欠かせない。しかも、富栄養化を引き起こし赤潮の原因ともなる窒素・リン酸・カリウムをグングン吸収してくれることで、水質を浄化してくれてもいる。
特にここ海の公園では、アオサにずいぶん助けられてもいるようだ。
海の公園といえばアサリの潮干狩り。アサリは海水を吸い、栄養分を体内に残してきれいな水を吐き出すろ過装置となるが、海中の酸素も吸い取ってしまう。毎年異常発生するアサリが酸欠状態にならずにすむのは、アオサがあったおかげなのだという。
海の中にしゃがんでいる人が。あの辺にはもうアオサは浮いてないし、きれいで透明な水
「浅瀬の土砂や護岸にくっついたままじっとしてくれていれば、ありがたい存在なんですけれどねぇ」と木村さん。
アオサがくせ者なのは、根がなくても育つので、ちぎれた葉っぱ1枚1枚が海に漂いながら光合成してどんどん大きくなること。そして、浜辺に大量に漂着し腐って臭くなることなのだ。
「藻が浮いていると海が汚れているように見えるけれど、水質そのものはきれいなんですよね」と溜息まじりのお二人だ。
ライバル「アマモ」の出現で、アオサが減っている!?
このアオサと同じような立地、同じような水質を好む海草で、注目されているのが「アマモ」。
なぜなら、アマモはアオサと違い「海草」なので、ちゃんと根を張り、浮遊しない。ニラのような葉はちぎれにくく、魚が安心して卵を産み付けられ、大型動物から身を隠しながら稚魚が育つには最適な“海のゆりかご”になるからだ。
タチの悪いアオサをアマモに置き換えたらどうだろう、という計画が実行されているのだ。
「『金沢八景-東京湾アマモ場再生会議』という市民グループが金沢八景にあるんです。東京湾にもともと自生していたアマモを復活させ、東京湾に魚や貝が集まる海の森をよみがえらせようと、約10年前から取り組みを始めているんです」(木村さん)
アマモ場の再生は、まず花を採取し、種を撒いて苗を作り、それを海中に植樹する。
非常に手間がかかるが、その努力で野島公園沖と海の公園沖にアマモ場が拡がってきた。
海底が濃く見えているのがアマモ場(青線で囲ってある部分)。写真は干潮時
10年前にはアマモ場のアの字もなかったのが、今では海の公園だけで2ヘクタール。
アマモが富栄養化の原因となる物質をどんどん吸収してくれる5月いっぱいまでは、アオサがはびこるのを許さないほどになり、春先の掃除が不要になったそうだ。
取材当日の様子を見て、「今日なんかは少ないほうですよ。昨日の朝掃除したあと、1回満潮があっただけだから」と石向さん。アマモ場のおかげで、アオサは確実に年々減っている。15年前の写真を見て納得だ。
何かの養殖場?と思ってしまう15年前の光景
ひどい時は下に下に潜って堆積し、砂から下に1mくらいドロドロになって溜まっていたそうだ。
この写真よりちょっと前、平成4、5年の処理量は年間1000トン。それが5、6年前から600トン台になり、昨年は500トンを切っている。
そして今年ついに、今年度の“海水浴場水質検査”で最高ランクのAAに!去年まではBだったのに。ちなみに県内のAAランクは三浦海岸、茅ケ崎、小田原など。鎌倉、葉山などはA、片瀬海岸、辻堂はBだった。(神奈川県発表『平成23年度海水浴場水質検査結果[PDFファイル]』より)
アマモ場が育ち、5、6年前からはいろんな生き物も増えてきたという。
なんと小さなエビや、ウミタナゴ、メバル、アジの子どもやサンゴダツが集まり、サヨリやアオリイカも産卵に来ているのだそう!海の公園の生き物は、これまでの倍の150~160種類にもなった。
「この夏は私も何回もここでシュノーケルしました。アマモ場は見てると楽しいですよ。潮が引くと大人の腰の高さぐらいなので気軽に行けちゃいます」と木村さんが教えてくれた。
シュノーケルは春先から11月ごろまで楽しめるという。アマモ場の様子、是非そっと覗いてみては。
取材を終えて
海にものが浮いていると“汚れている”と思いがちだが、汚れているどころか水質はどんどん良くなっていると聞いて、安心した。
南東向きに口を開いているため、宿命的に夏場は南風にのった浮遊物がたまりやすい海の公園。
アマモそれ自体は、富栄養化の原因となる水中の物質を効率よく取り込んで成長するため、海からすれば水質浄化に貢献しているといえる。
でも、流れ着く量があまりに膨大すぎた。
海の生物にとっても、人間にとっても、救世主・アマモのがんばりに期待したい。
もっともっと豊かになった海の公園に出会えるのが楽しみである。
― 終わり ―
とうさんさん
2013年03月29日 13時12分
アオサ、伊豆あたりでは地元民が集めて乾燥させて、汁などで食しているが、ここのはやっぱりばっちいから食べないのかな?
shi-taさん
2012年06月21日 15時09分
[このコメントは編集部宛なので削除して構いません] アマモとアオサの名前が変になっていた件を修正ありがとうございました。しかし。最終段落「・・・海の公園。アマモそれ自体は、・・・」は間違いで、文脈からみると、この記事の主役の「アオサそれ自体・・・」が正解と思います。▼これからも楽しい地元記事をお願いします、楽しみにしています。(戸塚の中屋が老舗中の老舗とは知りませんでした…)
shi-taさん
2012年06月21日 11時03分
記事の最後のほうでアマモ(イイモノ)とアオサ(ワルモノ?)の名前が混乱してませんか:-)。でも、アマモもアオサも水質改善に役立っていたんですね。そしてアオサは干して砕くと焼きそばに使えるという・・・ちょっと違いますか:-p