晴れ着の丸昌

　
続いて、南区西中町にある「丸昌」でお話を伺った。
　

京浜急行線「黄金町」駅より徒歩2分（写真提供：丸昌）

　
丸昌は1967（昭和42）年に創業。横浜に本社を構え、貸衣装のレンタル・販売・記念撮影などを中心に、神奈川県外含め13店舗を持つ晴れ着の専門店だ。

出迎えてくださったのは、取締役社長の鹿島邦彦（かしま・くにひこ）さん。鹿島さんも、成人式当日、新横浜で「はれのひ」被害者の受け入れ対応を務めたお一人だ。
　

物腰柔らかな鹿島さん

　
はじめに、はれのひ騒動に関して、「同業者として申し訳ない気持ち、そして娘を持つ親として人ごとではなく憤りを感じております」と一言。

当時の様子について鹿島さんは、「当日の午前6時過ぎに新横浜国際ホテルへ状況を確認しに行くと、ホテル前で新成人のお嬢さんやお母様が涙を流しており、これはただ事ではないと感じました」と話す。
　

成人式翌日の新横浜国際ホテル前

　
丸昌は成人式当日、式典会場である横浜アリーナ近く、学校法人岩崎学園2号館と3号館を貸切って着付けとヘアセットを行っていた。
着付け会場に戻ると、すぐに当日受け入れの担当窓口を設置し、正午以降より受け入れが可能だと新横浜国際ホテルに伝えたそうだ。

現場のスタッフに一部始終を話すと、「そういう状況であれば、いくらでもやります！」と、逐一現場の状況を受け入れ担当と共有して、必死に対応してくれたという。

受け入れた新成人には、新横浜国際ホテルの着付け代金と同額の3万円（税込）を実費とし、草履やバッグなどの小物を持っていない方については、予備として持参していた小物を実費に含み貸出したそうだ。
　

「はれのひ」から草履とバッグが届かない新成人が多数

　
鹿島さんは、「300名近くのスタッフがおりましたので、1人当たり1時間30分前後でお支度を終えられたと聞いています。合計13名の方を受け入れ、付き添いに来られたご両親からは『本当にありがとうございます』と、申し訳なさを含んだ感謝のお言葉をいただき、何とも言えない気持ちでした」と、心苦しそうに当日の思いをこぼした。
　

「当日は伝票から何からすべてアドリブで対応しました」

　
今回の騒動を終えて、今の気持ちをうかがうと、「振り袖をご予約される方々は、成人式のために積み立てをされていることも多く、そういった方々の気持ちを踏みにじるようなことは、あってはいけないこと。お一人お一人が一生に一度のことですので、当日しっかりとお支度をして送り出すことが我々の役目です」と話してくれた。

魂のこもった言葉に、胸が熱くなった。

そして丸昌では、2018（平成30）年成人で「はれのひ」の被害に遭った方々へ、無償で振り袖の記念撮影を行うそうだ。その際、振り袖や小物がない方には無償でレンタルするとのこと。
　

ほかにも何か力になれることがないか検討中という（丸昌HPより）

　
最後に鹿島さんから、「丸昌では、いつ、誰が予約しても同じ条件です。お値段や特典でのサービスではなく、成人式当日の会場やお支度に全力を注ぎたいと考えております。卒業式の袴などでお悩みの方も、お気軽にご相談ください」というメッセージをいただいた。
　
　

取材を終えて

　
今回お話をうかがった「いわきや」と「丸昌」以外にも、多くの同業者が一致団結し、出来る限りの救済処置を行ったという。

大騒動の中、「何とかして助けたい」と奮闘する方々が、騒動後も何とか力になれないかと救済の声を上げる姿に、何度も目頭が熱くなった。
予想外の出来事にも対応できたのは、長年積み重ねてきた経験と、確固たる技術力の賜物なのだろう。

「はれのひ」騒動の真相究明とともに、成人式当日に救済の手を差し伸べたすべての方に敬意を表したい。
　
　
ー終わりー
　
　
取材協力
いわきや株式会社　横浜本店
http://www.iwakiya.net/
晴れ着の丸昌　横浜店
http://www.hareginomarusho.co.jp/