追跡取材! 進行中の「三浦メダカ」保全活動をレポート!
ココがキニナル!
自生地を失った三浦メダカ。保全のために用意された三浦市にあるビオトープで行われている、三浦メダカ保全活動の現状とは?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
成魚・稚魚どちらも確認され、今年も繁殖した模様。2017年に作られた新池でも! 夜のビオトープでは、闇夜を照らす可憐な光も!?
ライター:田中 大輔
メダカだけじゃない! 希少なトンボの子どもたちも
さて、このビオトープ、これまでにも伝えてきた通り、メダカ以外の生き物も豊富だ。
例えば、大池にはエビが多く住んでいて、今回もお手伝いをさせていただいた素人の筆者でもバンバカ取ることができる。
小さくてもエビ。持つと手の中でピチピチと跳ねる感触が気持ちいい
大池ではあまりヤゴなど水棲昆虫が取れなかったのだが、勝呂さんは「エビがたくさんいるからだと思う」と話す。問題になるほどではないそうだが、テナガエビは水棲昆虫を獲物にするし、ヌマエビたちとはエサが競合するんだそうだ。
魚類ではメダカのほかにハゼの仲間が多く見られ、今回の調査でも数種類のハゼが捕獲された。中でも個人的なお気に入りは、こちらのヌマチチブ。
ちょっといかつい顔のヌマチチブ。かわいい
ハゼらしいずんぐりした体形がなんともかわいらしい。
ほかのハゼよりもちょっと太っちょな感じがまたかわいい
ハゼもヌマエビたちも素人目には全部一緒に見えるが、実は種類が豊富。
採集後の計測の際には、プロの目でしっかりと種類を見極めていくからさすがの一言だ。
また、新池ではオオアオイトトンボのヤゴもどっさり。
こちらの細長いのがオオアオイトトンボのヤゴ
こちらは別のトンボのヤゴ。一口にヤゴと言っても、だいぶ形が違う
成虫のオオアオイトトンボは、イトトンボの名前の通りに細い体をしていて、青みがかったメタリックな色をしている。
三浦半島ではかなり貴重なトンボとのことで、「新池がメダカ以外の生き物にも貢献していることが分かってよかった。掘ったかいがあったね」と勝呂さんも笑顔で話してくれた。
夜のビオトープを彩る
大人も子どもも含めてたくさんのメダカが見つかり、エビやカニ、ハゼにカエル、ヤゴなど多種多様な生き物が捕獲された今回の調査。
今回の調査ではアカテガニも採集された
いつもならここで調査は終了なのだが、今回は調査が終わった後、夜のビオトープにも連れていってもらうことに。
街灯のないビオトープ内は真っ暗で、昼間とはまったく違う雰囲気。どこからかカエルの鳴き声が聞こえ、同行した嶋津さんも「シュレーゲルアオガエル!」とテンションアップ。
そんな真っ暗な空間にわざわざ向かったのは、ある生き物に会うためだ。
夜に楽しみな生き物と言えば・・・
葉っぱの上にちょこんとたたずむヘイケボタル
そう、ホタルだ。
この時期は、ゲンジボタルの繁殖期が終わり、ヘイケボタルが多く見られるタイミングだ。
懐中電灯の明かりを消して水辺の茂みに目をやると、チラチラと光る緑色の光。数匹だけ目撃したゲンジボタルに比べるとヘイケボタルは光が小さい。そのため派手さはないが、なんとも繊細で凛とした輝きを見せてくれる。
手の上で光を放つヘイケボタル。ぜひ生で見てほしい輝き
ホタルはビオトープができた当初から順調に増えてきているそうで、人目に触れないこの場所で幻想的な光を放ち続けてきたようだ。
勝呂さんは、「この場所もゆくゆくは、市民団体の人たちだけでなく、地元の人たちにも関心を持ってもらわないといけない」とこのビオトープの将来像を描く。
環境保全というと一般の人にはちょっととっつきにくいが、「まずは観察会なんかを開いて、興味を持ってもらいたい。最初のきっかけにホタルはぴったり」と小さな虫たちに期待を寄せた。
取材を終えて
調査開始から6年を数え、メダカもほかの生き物も順調に数を増やすこのビオトープ。
すぐに、というわけにはいかないが、関係者たちはそろそろ次の段階のことも考え始めている。
環境や生き物に関わりのある市民団体はもちろん、前述の通り、近所に住んでいる人たちも巻き込んでこの場所を守っていかなければならない。
そんな日が少しずつ近づいてきている。それを知ってか知らずか、メダカたちは今日もビオトープで静かに暮らしている。
―終わり―