横浜の「魔の池」、川崎の「綱下げの松」・・・各地に残る災害の言い伝えとは
ココがキニナル!
相模川で鮎が大漁♪と嬉しいニュースと思いきや、昔からの言い伝えで「鮎が大漁の時は大地震がある」と地元では複雑な気持ちだそう。他にも都市伝説的な言い伝えを調べて下さい。(ホトリコさん)
はまれぽ調査結果!
県内にも多く残されている地震や水害に関する言い伝えや伝承。今もゆかりが残る伝説や、「信ぴょう性がある迷信」も?
ライター:はまれぽ編集部
水害への備え(続き)
・多摩川の氾濫を防ぐ亀(川崎市川崎区)
川崎市にも、水害に関する言い伝えがとても多い。多摩川などの河川の氾濫に苦しめられてきた過去が教訓として色濃く残っているようだ。
川崎区砂子(いさご)の宗三寺(そうさんじ)の縁起として、「開祖となった僧侶が諸国修行中にこの場所で渇きを訴えた際、小さな亀に手招きをされた。そちらへ向かうと豊かな湧き水があり、のちに、その恩に報いるために堂を建てた」というものがある。
京急川崎駅の目の前にある宗三寺
その後、堂が多摩川の氾濫で流されそうになった際、大亀が現れて濁流を抑え、堂が守られえたという。
大亀が出現したのち、池は干上がってしまったというが、現在の京急川崎駅の辺りにあった大きな池だったそうだ。
川崎市内では同様に、「諏訪社のご神体である大蛇が矢上川の洪水から社を守った」という神社にまつわる言い伝えも残されており、河川の氾濫にさらされてきた地域の歴史と、そこから生まれた水にまつわる生き物への崇拝文化を感じることができる。
・洪水から人々を救った綱下げの松(川崎市高津区)
川崎で有名な洪水の伝承と言えば、高津区下作延の「綱下げの松」だ。
やはり多摩川が氾濫した際、多くの建物や人が流されたが、高台にあった老松から白い布でできた綱が下りてきて、それに捕まった人たちが助かった。実はその綱は白い蛇の神様だったという言い伝えだ。
この白蛇を今も祀るのが、川崎市営緑ヶ丘霊園に隣接する「松寿弁財天(しょうじゅべんざいてん)」。
石段を登り切った先に、小さな社がある
「不届き者が多いので賽銭箱を撤去しました」と張り紙があった
こちらが三代目と伝えられる「綱下げの松」
社には白蛇が祀られている。洪水が来ませんように・・・
・洪水で出来た池に沈んだ娘(川崎市高津区)
高津区久地には「お千代の池」という伝承が残っている。
子どものいない夫婦が池の端にある弁天様に願をかけ、娘を授かる。その子にお千代という名前を付けて可愛がっていたが、ある日弁天参りの道中に、足を滑らせたお千代は池の中に沈んでしまう。
両親が嘆いていると、水から浮かび上がったお千代が微笑みを浮かべたのちに顔が大蛇のようになり、また池の中に消えていったという。
この伝説のあった「お千代の池」は、久地の「川辺(かわなべ)」という場所にあった。現在の住所表記に川辺の名前は残されていないが、久地駅前の建物にはその名残がある。
ビルの名前に川辺の文字
裏手はすぐに多摩川
氾濫を繰り返していた多摩川近辺では、こうした池にまつわる伝承が多かった。しかし、1934(昭和9)年に高い土手が築かれてからは池の名残もなくなり、現在は建物などになっている。
例えば、川崎大師の参道で「キンコ屋」という小間物屋を営んでいた老婆が、息子に金を使い込まれて身を投げたとされる川崎区中瀬の「キンコ池」。この池があった川崎市中瀬の場所も、その後は小松製作所の工場に。現在は工場跡がマンションに生まれ変わっている。
池の跡がいまやマンションに。やはり川付近の歴史を伝える(© OpenStreetMap contributors)
・大山阿夫利神社の下社が見えなくなると雨(伊勢原市)
伊勢原市では、「大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)の下社が見えなくなると雨が降る」という伝承がある。
同市の「大山」は「雨降り山」とも呼ばれ、「阿夫利」という神社名もこの呼び名に由来するといわれる。
大山阿夫利神社の下社。本社ははるか山頂だ(フリー素材より)
山頂よりも高度の低い下社が見えなくなる雲や霧がかかれば、雨が降るという言い伝えは、洪水などへの警戒よりも、渇水時の雨乞いの意味もあったようだ。
また、「大山の西、蓑毛(みのげ)・田原に雲があると翌日は雨」「大山の東、日向・七沢に雲があると翌日は雨が上がる」といった言い伝えも。大山は雨が降るかどうかのバロメーターだったようだ。
・東に虹が出ると大雨になり大洪水が来る(平塚市)
平塚市には、「東に虹が出ると大雨」のほかに、「流れ星が見えると大水になる」「カエルが小便をすると水害になる」といった伝承もあるようだ。
こちらは地震に比べると、実際の災害とのつながりは分かりにくい。西日が強く差して東方向に虹が出るときや、カエルが現れるときに雨が増えることを水害の予兆として警戒してきたのかもしれない。
虹も気候を読む重要な指標だった(フリー素材より)
流れ星は昭和初期までは凶兆と見る地域が多く、これも実際の災害と結びつけて考えられてきたようだ。
・アシナガバチの巣が低い場所にあるときは台風が多い(綾瀬市)
全国的に分布するアシナガバチの仲間は、5月中旬から女王バチが巣を作り、6月から働きバチが盛んに活動を始める。ちょうど台風シーズンが来る前に、その年の災害を占う試金石になっていたようだ。
アシナガバチの巣(フリー素材より)
巣を作る場所は基本的に低く、かつ乾燥した物陰などを好む。実際にその夏の天候を把握して営巣しているのかは分からないが、地域の人々はその生態からヒントを得ようとしてきた。
火事にまつわる伝承
・大蓮寺の大日如来が大火を防ぐ(川崎市高津区)
多くが人災である火事に対しては、伝承自体が多くない。そんな中で、川崎市高津区・大蓮寺(だいれんじ)の大日如来(だいにちにょらい)には、江戸時代の大火事である「宝暦の大火」にまつわる伝承が残されている。
京急溝ノ口駅から徒歩8分ほどの大蓮寺
江戸の中橋桶町(なかはしおけまち、現在の東京都中央区)に住んでいた信徒が大火に見舞われたときに、大日如来の加護によって火から逃れることができたという。生き残ったのち、その恩に報いるため堂宇(どうう)を修繕し、洗漱(せんそう)の石水盤を寄付した。
現在の本堂は昭和に入って建てられたもの
この大蓮寺の大日如来像は、江戸期以前に暴風雨で土砂崩れが起きて堂宇が埋没したときに、ひとりでに移動して難を逃れたという逸話も持っている。災害除けの加護が期待されていたことの表れかもしれない。
取材を終えて
災害に関わる伝承は全国各地に残されている。その中にはもちろん、単なる迷信にすぎないものや、科学的には怪しいものもたくさんある。だが、多くの言い伝えは何かの教訓を含んでいるように思えてならない。なにより、いつ起こるとも知れない災害には常に備えが必要だ。
地震、水害に加えて、この夏の酷暑も自然災害の一つ。地域に残された知恵の数々をきっかけに、災害から身を守る一助にしていきたい。
ー終わりー
参考文献
『神奈川の伝説』(読売新聞社横浜支局/編・1969年)
『川崎物語集(1~6)』(川崎市市民ミュージアム、川崎の民話調査団/編・1994年)
光明山 大蓮寺HP
https://yuunin0831.wixsite.com/koumyousan-dairenji
全国災害伝承情報(総務省消防庁)
http://www.fdma.go.jp/html/life/saigai_densyo/
ホトリコさん
2018年07月26日 08時30分
投稿者です。夏にぴったりないろんな意味で怖い内容でした。神奈川県では元ネタになっていた言い伝えと、実際に不気味な前触れのような地震が多発していて、心配していたら、ノーマークの西日本で大水害が発生。地元の住民たちも魔坂の坂に落ちてしまい大惨事になってしまいました。こっちの番ではなかったんだと油断したいところですが、言い伝えには言い伝えられて来た根拠や理由や関連は不明だか実際に天災は起こってしまったから、耳にタコができるくらい聞いてきたからなんて言わずに備えはしておきます。暑い中お疲れ様です、ありがとうございました。