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横浜生まれの大スター「美空ひばり」ってどんな人だった?

ココがキニナル!

今年は、美空ひばりさんの25回忌。横浜ブルグでも、8日から命日24日まで『ザ・スター美空ひばり~大人の音楽祭~』を行うようです。美空ひばりさんの足跡をレポートしてください(Ryo.ACさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

美空ひばりは横浜が生んだ史上最大のスター。52年の生涯で、多くの人を魅了した。

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ライター:松崎 辰彦

“私の料理番になって”



後に、鶴田さんは、ひばりの経営する店「美之寿司(みゆきずし)」で板前として働いた。同時に、ひばりとも友人としてつきあった。

 

ひばりの経営する寿司屋「美之寿司」(撮影・鶴田理一郎)
 

「二人で映画を観に行ったりしました。彼女はスクリーンを見てボロボロ泣いていました」
こうした“デート”のとき、鶴田さんはひばりを決して特別扱いせず、「おい、ゲラ、行くぞ!」といった態度で接したという。日ごろ周囲からお姫様扱いされていた彼女には、むしろそれが心地よかったのではと鶴田さんは回想する。
しかし、幼いころから学校を休みがちだった彼女は、思わぬ一般常識の欠如を見せることもあった。昭和30年代のある日、ひばりが鶴田さんに言葉をかけてきた。

「あのさコウちゃん(ひばりは鶴田さんを自分がファンだった鶴田浩二になぞらえてコウちゃんと呼んだ)、今のアメリカ大統領は誰だって聞かれたんだけどさ、リンカーンだよね?」
鶴田さんは言葉に詰まった。アイゼンハワーだよ、と教えるのも虚しい気がした。
「リンカーンねェ・・・ゲラちゃん、違うよ。テレビのクイズ番組には出ない方がいいね。話が来ても断りな」
「・・・わかった」
以来、ひばりはクイズ番組に出ることはなかったという。

 

クイズ番組には出なかったひばり(フリー画像より)
 

美之寿司で働く前、鶴田さんはひばりから
「私の料理番になって」と頼まれた。彼女の母親からも頼まれたという。
「公演から帰って来たときに、家でおいしいご飯が食べたいのよ。私のご飯を作って」
とのことだった。
「なぜ私が気に入られたのかというと、背の高さがちょうどよかったこと。彼女はあまり長身の男は苦手なんだそうです。それから手が白くてきれいだから、といわれました。指の太い男はいやだといっていました」

 

鶴田さんの手。たしかに白い
 

しかし鶴田さんはひばりのこの申し出を断った。するとひばりは
「アンタは私のいうことにハイって素直に頷いたことが一度もないわね。アネキのいうことは聞くものよ」と憤慨した。

また突然電話が来て、「私、小林旭さんと結婚しようと思うんだけどどう思う?」などと相談されたりもした。
「そんな話を聞かされた私は、結局、ひばりさんと小林さんの新婚旅行にもついていくことになりました(苦笑)」

ひばりがいかに鶴田さんを信頼していたかがわかる。



学校を出た人たちに負けないよう



こうしたつきあいの仲だったが、鶴田さんはあるときひばりの驚異的な能力を目の当たりにした。
「ひばりさんから新曲のレコーディングに招待されて、見学したんです。そこで彼女は新しい歌の歌詞を一回、紙に書き写すだけで覚えてしまいました。現場には作詞家がいて、彼がレコーディングの判断を下すのですが、もちろん彼は歌手には100点を要求するわけです。しかし、ひばりさんはそこで“200点”を出したんです──。

作詞家は“自分の歌詞をあんなに素晴しく歌ってくれるなんて!”と感激していました」

しかし、ひばりは意外にも自分の声が好きではなかったと鶴田さんは証言する。
「昔、小鳩(こばと)くるみや川田孝子、伴久美子といった童謡歌手が人気があり、みんなきれいな可愛い声で歌っていました。自分がそういう声でないことが、ひばりさんは不満だったようです。“私のドラ声”と自分ではいっていました。」

 

映画『憧れのハワイ航路』の美空ひばり。左は岡晴夫(フリー画像より)
 

「ひばり伝説」のひとつに“美空ひばりは楽譜が読めなかった”というものがあるが、鶴田さんは否定する。
「読めましたよ。紙に音符を書いて『コウちゃん、これわかる? これが“四つ”だよ。これが“速く”だよ』などと教えてくれましたから」
少なくとも基本的な知識はあったのだろう。

 

“楽譜が読めない”といわれたが、真実は・・・
 

こうしたひばりの心の中には高学歴、さらにいえば音楽系の大学を出たクラシック歌手への対抗心があったと鶴田さんはいう。
「私に『学校を出た人たちに負けないようにしようよ』といっていました。少女時代に仕事のため学校を休んでばかりで十分に勉強できなかったことが、本人には心残りだったようです。それから歌舞伎のような古典芸能の世界に対抗する精神がありました。負けるもんか、という気概がありましたね」

またアメリカに対して、「忠臣蔵じゃないけど、いつか仇をとりたい」といっていたという。さらに「戦争はいやだ」とも口にしていた。



ご飯の上に“命”を乗せる



鶴田さんは、あるときひばりにいった。
「おれ、寿司職人として一流になりたいんだ。どうしたらいいんだろう」
「コウちゃん、ご飯の上に魚を乗せれば寿司だよね? ならばご飯の上に“命”を乗せなよ。そうすれば一流になれるよ」
この答えは若い鶴田さんを面食らわせた。しかし今になってひばりのすごさがわかるという。
「ひばりさんは『あせらず、怒らず、諦めず』という言葉を口にしていました。これは自分のお母さんから聞いたのではないかと思います。
それから『お天道様は見ているから、陰日向(ひなた)なくやったほうがいいよ』などともいっていました」

 

ひばりの後援会の会員証
 

ひばりの最後の公演を鶴田さんは見たが、そこにはひばりの壮絶な闘いがあった。
「当時はもう体力がなく、リハーサルで舞台の花道が歩けませんでした。わずかの階段が上れないんです。しかし本番になってライトが当たり音源が入ると、舞台で飛び跳ねている。さきほどまでの弱々しい様子は演技だったのか、と思うほどでした」

ひばりが意識不明になったのは1989(平成元)年6月13日。11日間の昏睡状態のすえ、6月24日に亡くなった。

「11日間何も食べなかったひばりさんは小さく、軽くなっていました」

大スター、美空ひばり。横浜の生んだ永遠の歌姫の面影は、今でも“ゲラちゃん”として鶴田さんの脳裏に焼きついている。



取材を終えて



「女王」「永遠の歌姫」「不死鳥」・・・美空ひばりへの賛辞は尽きない。おそらく日本の芸能史上、最高の評価を得た一人であることは間違いない。

しかし、鶴田さんの語る「ゲラちゃん」は実に気さくな、茶目っ気のあるごく普通の女性だった。鶴田さんも「スター気取りなんてまったくなかった」と証言する。

「ひばりさんはよく『港の見える丘』や『かえり船』、あるいは『勘太郎月夜唄』をアカペラで歌ってくれました。“歌には生き死にがある。死んだ歌は駄目だよ”などともいっていました」
彼女には「歌の生き死に」が見えていたのか。

鶴田さんはいま「美空ひばりさんを愛する横浜市民の会」を運営する一方で、ひばりの妹である歌手・佐藤勢津子(せつこ)さんの後援会もしている。

 

ひばりの妹・佐藤勢津子さんの後援もしている(画像提供:鶴田理一郎)
 

「ひばりさんと一緒に撮った写真ですか? ありますけどひばりさんから『誰にも見せないで』っていわれたんで・・・」
照れ臭そうに笑う鶴田さん。若き日の思い出が、そこにはあるのだろう。

時代は人を作るが、人は時代を作れない。日本が負けたからこそ、美空ひばりは生まれた──鶴田さんはいう。彼女が世を去って四半世紀。かつて横浜にいた“歌姫”の存在を、もう一度思い返すべきときかもしれない。

 

鶴田さんが撮影した素顔の美空ひばり
 


─終わり─


<取材協力>
美奈登鮨
住所/横浜市中区本牧三之谷18-8
電話/045-621-3710(代)
FAX/045-624-3914
 

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  •  私の秘かな自慢は、入学した小学校では美空ひばりの後輩にあたり、卒業した小学校では、「ゆず」の大先輩に当たることです。(同じ小学校なのですが当時分校だったのが、独立して別の小学校になったことから起きた事柄です)。 横浜が生んだ偉大な歌手が結構身近にいると言うことは嬉しいことです。 ひばり記念館ははじめ遺族の方が、当時いちばん横浜らしかった山下公園周辺に建設することを望んだが、諸般の事情で断念せざるを得なかったということを聞いた覚えがありますが、返す返すも残念で堪りません。

  • 「お天道様は見ているから、陰日向(ひなた)なくやったほうがいいよ」あたりまえかもしれないけど、本当に大事なことだね。

  • この人が横浜に貢献してるなら横浜に記念館を建てても良いのに京都に建ててるし全然横浜に貢献してないじゃん!

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