三浦市にある江戸時代から続く県内唯一の「大漁旗」の染物店とは?
ココがキニナル!
ミニ大漁旗の手染め体験もできるという、創業180年以上の歴史を持つ神奈川県唯一大漁旗を製作する染物店「三富染物店」ってどんなお店?(トラズキノコさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
今でも江戸時代と同じ方法で染められている三富(みとみ)染物店の大漁旗。受け継がれた技は、その世界を広げていた
ライター:やまだ ひさえ
はまれぽオリジナル大漁旗!
三富染物店では、江戸時代から続く技法そのままのミニ大漁旗の染付体験(1人3500円)を行っている。
江戸時代の技法体験ができる
サイズは、45cm×6cmで、図柄はタイ、日の出にマグロ、クジラ、カジキの4種類から選べる。最大で3文字まで自由な文字を選ぶ場合は5500円。
オリジナルのミニ大漁旗を作ることが可能だ
体験は要予約。
というのも、同店は江戸時代から続く伝統技法を継承している染物店。白生地に下絵を描き、防線の役目を果たす糊をおいたうえに染めていく。旗の大きさも異なるし、図柄と文字の配置、バランスなど細かい部分にまで配慮が必要なため、機械化することは困難。全てが手作業で、突然の準備が難しいというのが理由だ。
中でも出来を左右する「のりおき」は、熟練の技が必要になる。
のりおきは熟練した技が必要
のりをおいた部分は、最後に洗い流すことで白い線となって浮き上がる場所だ。途中で太さが違ったり、ジグザクだったり、角がしっかりしていないと、美しい旗にはならない。
染めでも重要な役目を持つだけに、同店では今も手作りしている。由貴さんも最初に教えてもらったのが、のり作りだったそうだ。
ぬかともち粉を混ぜて作った専用のり
季節や天候、自分の使いやすい堅さがあるため、のりは今でも炭で加熱しながら手作りをしている。
「筒」とよばれる道具でのりを置いていく
使う生地は、綿生地の一種のブロード。艶があるので仕上がりをきれいに見せることができる。
針子(しんし)と呼ばれる専用の竹の棒と、張手(はりて)で布を固定し、染めていく作業に編集部・松山が初挑戦。
染料だけだと太陽にあたっていると変色するため、顔料も一緒に使う
タイに「はまれぽ」といれたオリジナル大漁旗に挑戦
「大漁旗に正解はない」と由貴さんは言う。染めたい色に染めて、造りたいものに仕上げていくのが大事だ。
全体のバランスを相談しながら、「はまれぽ」は目立つ黄色に決定
針子でピンと張っているので、初めてでも染めやすい
次はベースとなる部分の染め。黄色の文字がよく目立つ紺色を選択。染める部分が大きいのでやりやすそうだが・・・
「ぽ」に紺の染料が浸食
由貴さんが微調整をしてくれて事なきをえた
いよいよメインのタイを染めていく。
タイを生き生きと見せるために部分的に「ぼかし」の技法を使う。ぼかしたい部分に水を置くことで、一色でもグラデーションを作れるのだ。
そのつど、由貴さんが伝統の技を伝授してくれる
黒い染料で目をいれて、鯛の完成
最後に波を染めていく。水色、紺、紫と濃淡のある染料を使い、動きのある波に仕上げていく。
色見本でイメージを示してくれる
まず、水色で波頭の部分を染め、そこに紺を重ねていく。波の部分に縦線をいれ、動きを出していく。
紺の縦線が、大きな効果を発揮する
最後に紫を重ねて、波の動きを強調
1時間ほどでミニ大漁旗が完成!
見本と比べると見劣り(?)感は否めないが・・・
大漁旗は、この後、染料を乾燥させ、のりを洗い流してから旗として仕上げていく。
裏から見ると完成した形が想像できますと、由貴さんが見せてくれた。
完成品はこうなりますよ、と由貴さん
完成が楽しみ。これが「はまれぽオリジナル大漁旗」
体験染めの大漁旗は、縫製まで行い、後日、郵送してもらえる。
今回、挑戦したオリジナル大漁旗は、「はまれぽ」と4文字だったため45×70㎝という特別仕様だったが、6000円で作ることができた。
世界でただ一つの思い出を、あなたも作ってみてはいかがだろうか。
取材を終えて
筆者は三浦市に住んでいるが、本物の大漁旗を見る機会は、決して多くない。
反面、祝い事があると大漁旗や飾り旗を贈ろうという習慣があるのも事実だ。
伝統工芸は後継者問題がよく取りざたされるが、三崎では、その技術や文化が次代に受け継がれていることに安心した。
―終わりー
三富染物店
住所:神奈川県三浦市三崎1-10-9
電話番号:046-881-2791
定休日:不定休
営業時間:8:00~20:00
ムバークさん
2016年03月07日 10時35分
大漁旗はもちろん、捺染のスカーフとか手ぬぐいとか、今は商品扱いなので図録集や民俗学・芸術学の研究も少ないですが、是非美術工芸品と扱っての図録集の出版をお願いします。