生粋のハマっ子、桂歌丸師匠が生き抜いた真金町と横浜橋通商店街の足跡を辿る
ココがキニナル!
落語家の桂歌丸さんがお亡くなりました。生前の功績、足跡を調査してください/桂歌丸師匠の訃報を知り涙が溢れました。所縁の地でエピソードなどを取材してください(こむちゃんさん、ナチュラルマンさん)
はまれぽ調査結果!
盆踊りなど地域の催しには積極的に参加し、商店街に足を運んでは「調子どう?」と声をかける気さくな人柄。真金町出身であることに誇りを持っていた
ライター:はまれぽ編集部
「僕、車買いました。ベンツです」
横浜橋通商店街をあとにして、歌丸師匠が独演会を行っていた「三吉演芸場」のある、三吉橋通り商店街へ。
わずか30メートルの通りに、個性豊かで昭和の良さが残る商店街
三吉演芸場の向かいに、「余川履物店(よかわはきものてん)」がある。
下駄や草履を扱う、創業60年以上の老舗履物店
こちらでは、歌丸師匠の同級生、余川美智子(よかわ・みちこ)さんにお話をうかがった。
「同じ南吉田小学校出身で、親しくなったのは大人になってからです。よく、上物の雪駄(せった)を購入してくださいました。『いくら?』と値段を聞かれたことはなく、言い値で。本当に良くしてくださいました。お外で会ったら“師匠”、お店へ来てくれる時は“歌さん”って呼ばせてもらっていましたよ」と余川さん。
余川さんの後ろのショーケースには何枚もの色紙が飾られていた
「1974(昭和49)年から、1年に5回、独演会を行っていたんですが、私はどうしても抜けられない用事で2回欠席した以外、40年間ずっと見に行っていました。独演会がある時はいつもお店に寄ってくれて、一時期、ポーラ化粧品のセールスマンをされていた時も化粧品の営業に来ましたよ」と笑う。
お店には歌丸師匠の独演会のチラシがいくつも貼ってある
余川さんは、「最初はタクシーで浅草やら池袋まで通っていたけど、ある日、『余川さん、僕、車買いました。ベンツを買いました』ってやってきてね。『国産飛び越えて外車を買ったの?』って、もう笑っちゃいましたよ」という。
また歌丸師匠は当時、「缶ピース」と呼ばれる高級なタバコを買っていたそうで、その上質な香りを余川さんも楽しんでいたそうだ。
横浜橋通商店街にも「ピース(50)・(1050円/税込み)」は売っていた
余川さんの亡くなったご主人は髪の毛の量が多い方だったそうで、よく毛に関する冗談も言い合ったという。
「いつだったか歌さんが、『僕は歯は全部自前だし、目も耳も良くて、全部いいんだ』と言ったことがあったんだけど、『歌さんにないのは毛だけね』と返したことがあって(笑)。あとは、『夏に毛が多いと暑くて大変だけど歌さんは涼しいんじゃない?』って聞けば、『日光が直接当たるから暑いんだよ』とか、『お金はいらないから毛がほしい』とか。本当に、ざっくばらんにお話できる方だったわ」と、歌丸師匠との会話を振り返る。
独演会の皆勤賞でもらった色紙なのだとか
余川さんは、「歌丸師匠はお酒を飲まないから良いお茶を飲んでいるでしょう? うちでお茶を出す時は、『これは薄めたお茶じゃなくて、最初から薄いお茶ですよ』なんて言えば、『お茶はお茶です!』と返してくれたり。でも、ひとたび高座に上がればピシッと姿勢が整う方。表裏なく、素朴で、あんなに素晴らしい人は、ほかにいないです」と話してくれた。
横浜における落語、大衆芸能の振興
そして忘れてはならないのが、歌丸師匠が尽力した大衆芸能の振興だ。40年間、自身の独演会を行った「三吉演芸場」や、館長を務めた「横浜にぎわい座」にもお話をうかがった。
三吉演芸場の本田博(ほんだ・ひろし)社長は、「歌丸師匠は当初、新作落語をやっていらしたんですが、やはり一人前と認めてもらうには古典落語でなければいけないと、180度方向転換をされました。年に5回と自分に制約をつけて、ネタおろしの『勉強会』として独演会を始めたのです」という。
1930(昭和5)年に「貸席三吉」として開館
「やり慣れた得意なネタではなく、全くの新しいネタを約2ヶ月間で仕上げてお客様の前で披露されていたんです。それを40年間続けていたというのは、誰にでもできることではないと思います。歌丸師匠は自分に厳しい方でしたが、そういった挑戦をし続けたことが“平成の名人”と呼ばれる一つの所以なのではないでしょうか」と、その偉大さを改めて語ってくれた。
野毛の「横浜にぎわい座」では、2代目館長を務めた歌丸師匠。
横浜にぎわい座2階では、2018年7月11日まで記帳台を設けているという
担当者は、「横浜にぎわい座は、横浜でも幅広く芸人さんが勉強できる場として、そして市民の皆さんに大衆芸能を楽しんでいただける場として開館しました。歌丸館長のおかげで、落語界の流派の壁を越えてご出演いただき、また大ベテランから若手まで活躍できる良い状態が続いております。歌丸館長の御尽力で実現したこの形を、今後も続けていけるよう尽力して参ります」と話してくれた。
各社報道によると、歌丸師匠は入院してからも病室で発声練習に励んでいたという。芸能に関しては完璧を追求し、ひとたび地元へ戻れば、“下町の優しいおじさん”だったのだろう。
最期まで横浜を愛し、走り続けたハマっ子の誇り、桂歌丸師匠。心より、ご冥福をお祈りいたします。
取材を終えて
取材を通して一番印象に残ったのは、歌丸師匠の話をする皆さんの笑顔だ。どこで話を聞いても、「こんな面白い話があってね・・・」と、その場に笑いが起きるのだ。
そこに師匠の生き様を見たような気がした(画像提供:中村さん)
そして皆さんが「歌さん」と呼ぶ度に、ただの愛称ではなく敬愛の意を感じた。その想いは、歌丸師匠がこれまで地元の方々に表わしてきた愛情そのものかもしれない。
テレビでしか見たことのない歌丸師匠の偉大さと優しさに触れられたことが素直に嬉しい。
ご協力いただいた皆様に、心より感謝申し上げます。
ー終わりー
取材協力
そば処 安楽
住所/横浜市南区真金町2-18
電話/045-231-2140
営業時間/午前11時~午後7時30分
定休日/水曜日
タカナシ菓子店
住所/横浜市南区高根町1-4
電話/045-253-2695
営業時間/午前9時30分~午後8時
定休日/不定休
余川履物店
住所/横浜市南区浦舟町1-19
電話/045-231-2072
営業時間/午前10時~午後6時
定休日/日曜日
三吉演芸場
住所/神奈川県横浜市南区万世町2-37
電話/045-231-7633
http://miyoshiengeijo.web.fc2.com/
横浜にぎわい座
住所/横浜市中区野毛町3-110-1
電話/045-231-2525
http://nigiwaiza.yafjp.org/
dojaneさん
2018年07月10日 10時02分
紹介してた蕎麦屋の脇にガースーのポスターがあるだけでヤダ。
しらいしさん
2018年07月09日 11時31分
師匠、誰からも愛されていたんですね。家にも去年亡くなった父が貰った、歌丸さんの色紙があります。とある講演会で知り合ったと喜んでましたね。訃報を聞いた時は、向こうで挨拶くらいは交わしてるといいなって思いました。それと煙草は缶ピースだったんですね!自分もピース党なのでたまに吸いますが、とても良い香りです。でも吸い過ぎ注意です(^_^;)
マッサンさん
2018年07月09日 11時23分
桂歌丸さんは永遠に不滅です。。。