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横浜の地サイダーって“横浜の水”を使ってるの?

ココがキニナル!

横浜オリジナルらしいサイダーを見かけたのですが、横浜の地サイダーって“横浜の水”を使っているのですか?(ACHAさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

横浜の水を使っているわけではありませんでした。そこで横浜の湧水を使った真の地サイダーを作ってみました。

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ライター:吉田 けんたろう

地サイダーの定義とは?


 
キンキンに冷えたサイダーをグビグビっと飲み干した今年の夏、日本を席巻した猛暑はまだ記憶に新しい。昔から老若男女問わず愛され続けるサイダーだが、ここ数年、全国各地でオリジナリティあふれる『地サイダー』がブームだという。そこで、「地ビールはよく耳にするけど、地サイダーってなに?」という方のために、まずは地サイダーの定義を確認してみた。
 

 
「特にかしこまった定義はありません。地ビールや地酒と同じように、地元の水や特産品などを使ったもの、あるいは地域の歴史や文化を反映したもので、サイダーの体を成していれば地サイダーとなります。最近は町おこしなどに利用される例も多いですね」と答えてくれたのは、全国清涼飲料工業会の久保田さん。

なるほど、ガチガチの定義はなく、地元に根ざしたサイダーであれば地サイダーと呼んでいるようだ。ちなみに、全国清涼飲料工業会が把握しているだけでも、2006年は62だった地サイダー銘柄が、2010年の5月には139銘柄になっていたそう。さらに久保田さんは、今年の猛暑によってさらに増えている可能性があるとも指摘していた。ということは今、日本は空前の地サイダーブームと言っても過言ではないのかも!?



横浜の地サイダーたち



地サイダーが全国的な現象であるなら、おらが町・横浜がこのブームに乗り遅れているはずがない! というわけで、横浜ゆかりのサイダーを探してみると、新旧入り交じっていろいろ発見! それもそのはず、“サイダー”という飲料水の名前は横浜が発祥なのだ。
 
1868年、外国人居留地では、英国人ノースレーによってレモネードやジンジャーエールなどが製造されていた。その後、横浜扇町の秋山巳之助が王冠(金属製栓)飲料水の工業化に成功。王冠付きの炭酸飲料を“サイダー”と呼び、「金線(シャンピン)サイダー」という名で発売する。これが日本ではじめてサイダーと呼ばれた飲料水であり、横浜から日本中にサイダーが広まっていったといわれている。
 
そんなサイダー発祥の地・横浜に、地サイダーがないわけがない。見つけたのは全部で4種類、発祥の地だけにさすがのラインナップだ。
 

<商品名> オリツルサイダー
<販売元> 坪井食品
      (http://www.orituru-cider.jp/
<値 段> 1本178円
<発売日> 2006年に復刻


赤い折鶴のデザインがトレードマーク。香料は昭和初期?昭和30年代まで発売していた頃のレシピを再現したミカンベースで、炭酸をやや強めに仕上げている。

<商品名> 黄金サイダー
<販売元> Kogane-X Lab 運営委員会
<値 段> 1本200円
<発売日> 2008年


シンプルなラベルデザインは黄金町を流れる大岡川と桜の木をイメージ。昔ながらの清涼感のある喉ごしが感じられるベーシックなサイダーに仕上げた。東京の飲料会社で製造。

<商品名> 横浜サイダー プレミアムクリア
<販売元> 川崎飲料
      (http://soda-pop.jp/
<値 段> オープン価格
<発売日> 2008年


17kcal/100mlという低カロリーながら甘みも感じられる清冽な味わいに仕上げている。帆船日本丸をモチーフにした横浜らしいラベルで、ワールドポーターズで購入できる。

<商品名> 横浜ポートサイダー
<販売元> エクスポート
      (http://www.madeinyokohama.jp/
<値 段> 1本210円
<発売日> 2010年4月


液糖は使用せず、時間をかけてゆっくり溶かした砂糖で味をつけているので、クセのないさわやかな口当たりが特徴。ブルーダルラベルとドットラベルの2パターンを用意する。

 
 
 

オリツルサイダーはどこで作っている?



4種類の中で、最も歴史がある「オリツルサイダー」は、昭和初期より昭和30年代半ばまで発売していた、キングオブ横浜サイダーといえる存在。歴史あるオリツルサイダーはどこで作っているのか。販売元である坪井食品の4代目社長・坪井裕平さんに話を聞いた。

「オリツルサイダーの発売は、昭和3年ごろ。元々うちは生麩製造が本業だったのですが、それがうまくいかなくなってしまい、それまでの機械を使いまわせるということでコンニャクの製造をはじめました。しかしながらコンニャクはおでんやすきやきの季節以外、つまり夏期はあまり売れないんですね。そこで、夏になにかできないかと考えた初代社長が、粉を混ぜる攪拌機(かくはんき)や冷蔵庫などコンニャクの機械を再利用できるということで始めたのが、ラムネとサイダーの製造だったんです」
 

赤い折鶴のエキゾチックなマークのサイダーは米軍兵の評判となり、土産品として大量に買い込まれたそう
 


昭和20年代には横浜伊勢崎町野澤屋の屋上で販売も
 


第二次大戦で日本海軍の軍艦に積まれていたラムネ充填機
(瓶にラムネ飲料を入れビー玉でフタをする機械)。
現在も現役でイベントなどに登場することも
 

しかしながら、サイダー自体は昭和30年代になると次々と参入してくる外国資本(例:コカ・○ーラなど)の台頭により、製造継続を断念してしまう。ところがそれから数十年を経て、オリツルサイダーは見事復活。
 


坪井食品の4代目社長・坪井裕平さん
向かって右のペットボトルバージョンはY150の限定商品

 
「2006年に新横浜のラーメン博物館さんの露店でラムネとサイダーを販売し始めてから徐々に製造量も増え、現在は折からの地サイダーブームで年間約4万本の出荷があります。かつては中区の中心部にあった工場ですが今は繁華街になってしまっているので、サイダー製造は静岡県の飲料工場で行い、使用する水は静岡県の水ですね。横浜で製造しているわけではありませんが、サイダーの香料は当時のレシピを完全再現しています。ちなみに、吉田町界隈に広がるバーズストリートの店では、オリツルサイダーを使ったカクテルも登場予定ですので、お楽しみに!」
 
 
横浜の水を使用した真の横浜地サイダーはこれだ! ≫


真の横浜地サイダー



さて、これまで紹介した横浜の地サイダー、いずれもラベルや味に横浜の歴史や港町のイメージを反映しており、どれも魅力的なことは間違いない。ところが各販売元に問い合わせたところ、残念ながら地元・横浜の水を使用しているサイダーは存在しないのである…。記者は言いたい、地サイダーを地酒や地ビールと同列に考えれば、なぜ地元の水を使っていないのか!!!(恕)

とはいったものの、一般的に考えればそれが難しいのは十分承知している。まず衛生上の問題があるし、大量生産だし、きっと予算の問題もあるだろうし…。よし、こうなったら真の横浜地サイダーを自作するしかない!「作らぬなら 作ってみせよう 地(自)サイダー」
そんなわけで、尊敬する戦国武将を聞かれたら豊臣秀吉と即答する記者が、真の横浜地サイダー製作にチャレンジしてみることに。

調べてみると、サイダーはクエン酸、重曹、水があれば家庭で簡単に作ることができるようだ。そして問題となる水をどのように取り入れるか調査すること小一時間。なんと市内にはいくつも湧水スポットが点在していることがわかった。これを使わない手はないというわけで、市内中心部にある湧水スポットをいくつか探訪した。
 
 


日ノ出湧水
中区日ノ出町、大岡川に掛かる黄金橋付近。石のオブジェからこんこんと水が湧き出している

 

ワシン坂湧水
中区北方町、ワシン坂入口交差点付近。東屋のように屋根があり、ブロック塀に突き出たパイプから水が落ちる

 

打越の霊泉
中区打越、打越交差点付近。マンション横の石垣から湧き出しており、脇には立派な石碑が立っている

 
 

いずれの湧水も大正12年の関東大震災や昭和20年の横浜大空襲の際、生活用水として広く利用され、多くの市民を助けたという。現在も絶えることなく湧き出している水は、まさに横浜の水! ただし、これらの湧水、飲み水としては使えない。湧水地に立て掛けてある看板にしっかりとその旨が記してあるのだ。ところが、打越の霊泉を容器に入れている地元のおばさまに尋ねたところ、「沸かせば飲めるわよ」との心強いコメントを頂戴した。あくまで自己責任でこちらの湧水を使うことにする。


周辺の都市化が進んで清浄な水質が保てなくなったと書いてある


ペットボトルで水を持ち帰り、煮沸して使用
 

サイダー作りに用意する材料は、クエン酸、重曹(ベーキングパウダー)、ガムシロップ、氷、水、香料(フレイバー、エッセンスなど)。ここに計量カップと計量スプーンがあれば準備完了だ。クエン酸や重曹、香料などは製菓材料店や薬局で簡単に揃う。

・サイダーの作り方 


1、計量カップに水を加えて水の量を計る
※自宅にあった計量カップが160ml用だったため、水量はそれを目安にした・サイダーの作り方
 

2、1をコップに移したらクエン酸を入れてかき混ぜ、よく冷やす
 

3、十分冷えたら、重曹(小さじ1)を入れてかき混ぜると炭酸が発生する
※重曹は入れすぎると苦味が増すので注意
4、好みの香料とガムシロップ(適量)を加えてかき混ぜれば、自家製サイダーの出来上がり

 
ここで問題がひとつ。サイダーの味を左右する香料のセレクトだ。せっかく作る真の横浜地(自)サイダー、できるだけ横浜らしさも表現したい。横浜市の花・バラを取り入れた「バラの香り」、ペリー来航にあやかった「文明開化の香り」、はたまた我らが横浜銀蠅の名曲「潮のかほり」なんてのもありか!? ん?、想像できるのがバラの香りくらいしかない…。
そんなわけで、とり急ぎ用意したレモン、ペパーミント、オレンジのエッセンスで試してみることにした。

1回目。
重曹を入れた時のシュワシュワっという音感に期待が高まる。香料はオーソドックスなレモンだ。だが、試飲してみると、見事に酸っぱい。クエン酸にレモンの組み合わせは酸味が二乗になるのか…。

2回目。
ガムシロップを多めに入れ、香料はペパーミント。試飲すると、スッとし過ぎてどうもクスリっぽい。ただ甘さは1回目よりもいい感じだ。

3回目。
ガムシロ多めで、オレンジエッセンスを投入し、試飲。なんとこれが一番まともな味だった。ガムシロップの甘さとオレンジの相性が良い気がする。

───こうしてクエン酸や重曹の量も変えながら、何回か試みる。が、ここで忘れないでほしいのは「自家製サイダーの味は市販のものに遠く及ばない」ということである。正直、横浜らしさどころではなかった…。試すうちにだんだんお腹はタプタプになるし、気分も悪くなってくる。気付け変わりにと思い、サワーよろしく焼酎のサイダー割を作ってみるものの、自宅にあったのは芋焼酎だけという始末。とりあえずひと口飲んでみたが、さらに気分が悪くなってこの日はあえなくギブアップした。
 

 
気を取り直して翌日。結局、香料はオレンジエッセンスを選び、ガムシロップを多めにして味を調整する。
肝心の横浜らしさは、編集部の紅一点、美大卒のTさんに頼み、ラベルで表現することにした。

完成品がこちら。その名も「はまれぽサイダー」
 

なんとTさん、2種類もラベルを作ってくれた。個人的にはシンプルな文字のみのデザインが好み
※160mlの水に対して、クエン酸と重曹は約5g。ガムシロップは水に対して1割強の濃度が一番おいしかった

 
 

横浜地サイダー飲みくらべ


 
手元にあるのは、4つの地サイダーと記者が作った自サイダー。

どれが真の横浜サイダーにふさわしいか、ハマっ子に飲みくらべてもらうことに。
協力してもらった方には、好みの味、甘みの強さ、好みのラベルデザインの3票を各サイダーに投票してもらうようにした。
 

HANAEさん
「味も炭酸もスッキリして飲みやすい!」
MORIさん
「甘めの味付けがクセになる。僕はコレ!」

 

NORIKOさん(左)
「ロゴマークがかわいい!」 
MACHIKOさん(右)
「一番しっとりして甘さも自然です」
REIさん
「よく行く黄金町に地サイダーがあったのが驚き!」



記者を含めて7人の投票結果(ひとりは写真NG…)

甘みの強さ
ラベル
 オリツルサイダー 1 3 3
 黄金サイダー 2 1
 横浜サイダー
 プレミアムクリア
1 4
 横浜ポートサイダー 3 2
 はまれぽサイダー 1



味の好みは、甘さの少ない黄金サイダー、ポートサイダーが人気。逆に甘みの強さはオリツルサイダーと横浜サイダー プレミアムクリアが際立っている。ラベルデザインはイラストを取り入れたデザインに票が集まり、やはりロゴに情緒があるオリツルサイダーが人気だった。記者の健闘むなしく、はまれぽサイダーは残念な結果に。Tさんへの感謝を込めて記者はラベルに1票投じた。
 


最後に…



身もふたもない話だが、サイダーは市販のものを買ったほうが安いし、うまい、さらに手間もかからない。
これは身を持って感じた紛れもない感想だ。

今回作った「はまれぽサイダー」、到底売り物にならないし、見た目や味は市販品に適わないが、地元の水を使うという“真の”横浜地サイダーという意味では、記者の自サイダーに軍配が上がると考えたいし、せめてその心意気だけは認めてほしい…。

とはいえ、地サイダーに難しい定義はないのだから、地域の活性化や町おこしの一環で登場する地サイダーは今後もどんどん増えるはずだ。横浜のものだけではなく、旅行先や出張先で地サイダーを見かけたら、みなさんもぜひ味わってみてほしい。

後日、麦焼酎に余ったクエン酸を少し入れてみたらレモンハイのようでなかなかおいしかった。
次は、はまれぽハイボールでも作ってみようか…。
 
 
―終わり―
 

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  • サイダーの元祖は秋山巳之助ではありません。秋元巳之助です。

  • 折り鶴サイダーって、坪井食品でなくて西方食品が製造販売していたはずで、うちの婆ちゃんに見せたらラベルも西方だったはずと言ってました。どこかでパテント仕入れたのかもしれませんが、話の辻褄が合いませんね。

  • どの横浜サイダーも飲みましたが、「はまれぽサイダー」ラベルの残念感が好きです。他にも僕みたいな物好きが約一名いたみたいで、ほんの少しだけ嬉しい。

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