創業80年以上の戸塚区で唯一の銭湯「矢部の湯」が閉店するって本当?
ココがキニナル!
矢部の湯が閉店するそうです。銭湯らしい銭湯がまた一つ消えてしまいます。(山下公園のカモメさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
9月30日に惜しまれながらも閉店。閉店理由は、客の減少に燃料不足、経営者の高齢化や時代の移り変わりによる苦情があった
ライター:はまれぽ編集部
横浜でまたひとつ、昭和の名残が消える。戸塚区矢部の銭湯「矢部の湯(やべのゆ)」が2017年9月30日に閉店するという。
戸塚区には銭湯が1軒しかないという過去の記事があった。その戸塚区唯一の銭湯が戸塚駅のほど近く、旧東海道沿いにある矢部の湯なのだ。
JR戸塚駅東口から徒歩4分ほど
看板から昭和の臭いを感じる
入口には閉店のお知らせと牛乳石鹸と書かれたのれん
お話を伺ったのは、江尻伸子(えじり・のぶこ)さん。夫婦で矢部の湯を営んでいる。
お忙しい中、ご対応ありがとうございます
まずは、伸子さんにお店の成り立ちを聞くと、「1936(昭和11)年から銭湯を始めました。また、1960(昭和35)年からは『有限会社矢部の湯』として営業しております」と話してくれた。
銭湯を始めたきっかけについては「主人のおじいさんが、元々八王子や川崎で銭湯をやっていました。昭和の初めごろ、おじいさんの兄弟が、土地・建物の売買や仕事などを紹介する周旋屋(しゅうせんや)をやっていて、その時にこの場所を紹介され、銭湯を始めたそうです」と当時を振り返る。
バスも通る旧東海道沿い
親戚も銭湯を営んでいたそうで、1973(昭和48)年ごろは、親戚だけで9軒の銭湯を経営していたそう。「今月でうちが閉店するので、残りは大倉山と生麦にある2軒になってしまいますね」と伸子さんは話してくれた。
伸子さんに閉店する理由についてお伺いすると、「客の減少」と「燃料不足」、伸子さんご夫婦が高齢化したことによる体力面の不安のほか、後継ぎがいないことも理由だという。
また、ここ2~3年ぐらいから、煙突から出る煙についての苦情も増え、閉店を決断したそう。
煙突からの煙が問題視されているという
矢部の湯は、薪を燃やしてお湯を沸かすことが特徴の銭湯である。そのため、薪を燃やした煙が近隣の方などにとって、不快だったようで、役所からも注意されることがあったそう。
伸子さんは、廃材を燃やしているので、煙が出るのは仕方ないという。「無垢材であれば、煙は出ないのですが、大工さんや工務店さんなどが持ってきてくれる木材は、ほとんどが合板です。ペンキなどを使用しているので、合板は燃やすと煙が出てしまうのです」と話してくれた。
お湯を沸かす燃料となる廃材
その奥では、薪が燃やされていた
煙突からモクモクと立ち上る煙こそが、昔ながらの銭湯の風情を醸し出しているのではと思うが、近年の駅周辺の開発によりマンションなどが増え、これまで問題視されなかった煙が、地域の問題になってしまったのかもしれない。
ただ、伸子さんは「薪で沸かしたお湯がよいと言ってくれるお客さんは多いです」と話す。
薪で沸かすと、お湯がまろやかになり、温かいとのこと。体の芯まで温まるので湯冷めしにくいと、人気があったそうだ。
お湯は48度と熱め
今後は、3階建てのアパートに建て替えるそうで、10月初旬に建物の取り壊しが開始される。
伸子さんは最後に「矢部の湯が閉店することで、戸塚区の銭湯がなくなってしまうのは残念」と寂しそうにつぶやいていた。