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『今夜、ハマのバーにて。 vol.6』~「ウイスキートディ」と常連さん~

ココがキニナル!

ホテルニューグランドのバー「シーガーディアンⅡ(ツウ)」。チーフバーテンダーの太田圭介さんと、バー初心者の筆者が1杯のカクテルをとおして、「バー」という場所のたしなみ方を考えます

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ライター:はまれぽ編集部

 

今夜のカクテル:ウイスキートディ
 

「トディ」とは、「フィズ」や「サワー」と同じく、カクテルの作り方のひとつ。お酒に甘みを加え、水やお湯で割るというスタイルだ。
ウイスキートディは、ウイスキーにシロップを入れて、水で割ったカクテルというわけ。

 
今夜のカクテル、ウイスキートディをご存じの方は少ないかもしれない。「シーガーディアンⅡ」のチーフバーテンダー太田圭介(おおた・けいすけ)さんはこう言う。
「昔は、トディってカクテルの中で結構飲まれていたんですよ。時代の流れによって、炭酸とかもっと複雑でおいしいものが出てくる中で、忘れ去られていったんですね」
 
 
 
 

常連さんとの信頼関係


 
「常連さん」になりたい。バー初心者の筆者が、今回で6回目を迎えるこの連載で、最終的な目標に設定しているのはどこぞのバーの常連さんになることだ。
 
店に入れば店員さんに訳知り顔で出迎えられ、先客の視線を受けながら「いつものね」なんて注文する・・・。バーでは特に、そんな光景を目にすることが多いような気がする。
 
ねえ、太田さん。バーの常連さんってどうすればなれるんですかね?
 


今夜もよろしくお願いします

 
太田さんによると、ただ何度も通い詰めているだけでは、常連さんにはなれないようだ。バーと常連さんを結び付けるキーワードは「信頼関係」だという。
 
「バーにもいろんな顔があるでしょ? たとえば、お店がすごく忙しいとき、『忙しいんだったらぼくのは後でいいから』って言ってくれたり、『今日はもうたくさん飲んだから帰るよ』って席を譲ってくれたりね」
 


「ここは俺様専用の席だぜ」なんて独占ももちろんしない

 
「そういうお客さんには、少し融通を利かせてでも、できることはなんでもしてあげたくなるんですよ。暇なときに、たばこが切れてたら買ってきてあげたり」
 
歴史のある「シーガーディアンⅡ」は、親子代々で来ている常連さんも多いのだとか。バーテンダーの結婚や昇進を祝ってくれたりなど、その繋がりはかなり深い。
 
お店に愛される本物の常連さんとは、バーテンダーと同じ目線で、バーの雰囲気や空間を守ってくれる存在なのだろう。そして、それができるのはバーテンダーと同じくらい、その店を大切に思っているからなのかもしれない。
 


愛し、愛される・・・ということか

 
 
 

とある常連さんと太田さん


 
太田さんと「シーガーディアンⅡ」のある常連さんとのエピソードを紹介したい。
その方は、太田さんの高校時代の先生だった。「シーガーディアンⅡ」である夜、たまたま再会したのだ。
 
高校時代、本で見たカクテルの美しさに魅了され、バーテンダーになることを決意した太田さん。その決意を先生に伝えるとこんな言葉が返ってきた。
「『お前はまだ高校生で、お酒も飲んだことないくせに。お前みたいなもんにそんな夜の仕事なんて勤まるわけないだろう、すごく大変な仕事だよ。絶対無理だね』って言われました(笑)」
 


結構な言われようですよね

 
もともとバーやお酒が好きだったというその先生。だからこそ、夢見がちな少年に、あえてシビアなことを言ったのかもしれない。
 
「シーガーディアンⅡ」に憧れを持っていた先生は、自身の50歳の誕生日の記念に初めて「シーガーディアンⅡ」の扉を開いた。そして、カウンターに立つ太田さんと、約12年振りに再会する。
 
「そりゃもう、びっくりしました。『あーっ、先生!』って言っちゃいましたもん(笑) 『お前何やってるんだ、なんでお前がここにいるんだ』って、先生もかなり驚いていらっしゃいましたね」
 


まさかこの扉の先に、かつての教え子がいるとは思うまい

 
「先生は、『望んだことを職業にして、しかも、ぼくが憧れてるバーのカウンターの中にいるなんて感動した』って言ってくれましたよ」  
 
 
 
バーでウイスキーを飲むのは
 
それ以来、先生はしょっちゅう「シーガーディアンⅡ」を訪れる常連さんに。いつも一杯目に頼むマティーニは、必ず太田さんが作ると決まっている。
 


太田さん「ぼくは先生の“マティーニ番”なんです」

 
二杯目からは、ボトルキープしているウイスキーを飲むのだそう。ウイスキーを使った今夜のカクテル、ウイスキートディにも興味を持たれていたという。
 


甘い香りが漂います

 
ウイスキートディは、日本人が初めて飲んだカクテルと言われている。1854(嘉永7)年、ペリーが横浜に上陸した際、日本の役人を船の中へ招き、このウイスキートディでもてなした。甘いものが多くはなかった江戸時代、日本の役人はそのおいしさに驚き、翌日も飲みにやってきた・・・という逸話が文献に残っている。
 
横浜開港158周年を記念し、「シーガーディアンⅡ」が現在によみがえらせた、まさに“開港カクテル”だ。
ふわりと優しい甘さがウイスキーの香りとともに広がり、やわらかい飲み口。甘みと酸味がバランスよく合わさりとっても飲みやすかった。
 


ウイスキーって、常連さんが飲んでそうなお酒ナンバーワンですよね(偏見)

 
次回は~「ミモザ」とさまざまなバー~をお届けします。
 
 
―終わり―
 

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