追跡取材! 進行中の「三浦メダカ」保全活動をレポート!
ココがキニナル!
自生地を失った三浦メダカ。保全のために用意された三浦市にあるビオトープで行われている、三浦メダカ保全活動の現状とは?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
成魚・稚魚どちらも確認され、今年も繁殖した模様。2017年に作られた新池でも! 夜のビオトープでは、闇夜を照らす可憐な光も!?
ライター:田中 大輔
これまで、過去2回に渡って追いかけてきた、三浦市での三浦メダカ保全活動のレポート。
開発の影響で自生地である北川湿地を失ってしまったミナミメダカの三浦個体群、つまり「三浦メダカ」たちの新たな住みかとして用意されたビオトープでの調査が、2018(平成30)年も6月中旬に行われた。
今回もはまれぽは調査に同行し、現地の様子をお伝えする。
稚魚を探して
今回も調査に参加したのは、神奈川県水産技術センター内水面試験場、三浦メダカの会、そして日ごろ現場の管理を任されている新日本開発工業株式会社のメンバーたち。全部で7名が集合し、全体でおよそ3.5ヘクタール(3万5000平方メートル)のビオトープ内にある湿地で作業に当たった。
緑あふれるビオトープ。天気が心配されたが、なんとか持ってくれた
調査は今年で6年目。
これまでの記事でもお伝えしてきた通り、ビオトープ内でメダカの繁殖も確認されていて、新しい自然環境の中で三浦メダカは少しずつ数を増やしてきている。
内水面試験場の勝呂尚之(すぐろ・なおゆき)専門研究員は、調査の目標について「メダカは成魚で50匹くらい取れればいいなと思います。でも、尾数よりも繁殖を確認することが大切」と話し、メダカの繁殖期にもかかっているこの時期での調査で、生まれたばかりの赤ちゃんメダカ発見に期待を寄せた。
「とにかく稚魚を」と水産学のエキスパートである勝呂さん
また、2017(平成29)年秋の調査では新たに「メダカだけが住む池」も作られた。
メダカが住む池を増やし、万が一の事態が起きたときの保険をかける狙いで用意された場所で、今回が放流後初めての調査となる。
「新池に少しでもメダカが残ってくれていればいいね」と話す勝呂さんは、「繁殖までしてくれていたら最高」と続けた。
昨年の秋、出来立ての新池にメダカを放流する様子
ビオトープ内には水場がいくつかあり、そのすべてで生物採集が行われていく。
そこで取られた生き物は、数やサイズを確認した後にまた元の場所に戻されていくことになる。まずは、ビオトープ内で最も大きい池、通称「大池」から調査がスタートした。
大人も子どももたくさん発見!
これまでの調査でも、見つかるメダカのほとんどはこの大池在住。
サイズが大きいことも相まって、調査中最も時間をかけて採集が行われる場所だ。
調査はまず、水質をチェックすることからスタートする
採集では、虫取り網と同じような形の、よく見かけるタモ網のほか、「さで網」と呼ばれるちょっと大きな網も活躍。半円型の網で、両手で持って使う。
勝呂さんが持っているのがさで網。タモ網より扱いが難しい印象
今回も大池での採集は盛況で、勝呂さんも同試験場の嶋津さんもジャンジャンとメダカをはじめ、池に暮らす生き物たちを発見していく。
この場所での調査に初参加だった嶋津さんは、「三浦にこんな場所があったとは知らなかった。すごくいい場所」と目を細める。
初めてのビオトープを満喫していた様子の嶋津さん
大池では大人のメダカだけでなく、生まれたばかりの小さなメダカたちも見つかり、今年も繁殖が行われていることが確認できた。
勝呂さんが途中で稚魚の採集をストップするほど多くの赤ちゃんが見つかり、参加者たちもホッと一安心。
今年もたくさんの三浦メダカが姿を見せてくれた!
実は「大人のメダカが暮らせる環境」と「繁殖が行われて、メダカが持続的に生きていける環境」は必ずしもイコールではない。そのため、代替わりが進まないと結局は全滅してしまうので、赤ちゃんの発見はとても大事な要素というわけだ。
結局、40匹ほどのメダカが捕獲され、今年も大池でのメダカの生活は順調だったようだ。
一方、昨年秋に20匹の若いメダカを放流した「新池」。
メダカが生き残っているか心配されていたが、幸いにも数匹のメダカが採集された。この新天地でも上手いこと冬を越してくれたようだ。
新池での採集の様子。こちらでもメダカを見つけることができた
さらには1匹の稚魚も発見され、新池でも繁殖がされていたことを確認。
これには勝呂さんも満足げで、「この池は地下からわき水が出ていて、水温が低い。だから、もう少し水温が上がればさらなる繁殖にも期待が持てる」と前向き。
これがメダカの稚魚。勝呂さんが肉眼で見つけてすくい上げた
「メダカについては、全体として上手く進んでる。ほぼバッチリ」とのこと、自生地の消失という災難に遭った三浦メダカたちも、新たな住みかにすっかりなじんで代替わりを続けているようだ。