横浜・保土ケ谷区にあるハマレンガでできた「峰の赤富士」の正体とは?
ココがキニナル!
滝ノ川あじさいロードにあるレンガ製の「峰の赤富士」は誰が何のために作ったの?また、道にも敷き詰められたレンガは「ハマレンガ」というエコ製品だそう。レンガの経緯や他の使用場所もキニナル!(ねこぼくさん)
はまれぽ調査結果!
「ハマレンガ」は「廃棄物リサイクル都市」を目指す行政の期待を背負った下水汚泥の再資源化製品だった。そして「峰の赤富士」には、事業を推進した元保土ケ谷区長の熱い思いが込められているようだ。
ライター:結城靖博
明治初期に元町でフランス人アルフレッド・ジェラールが始めた煉瓦工場や、横浜赤レンガ倉庫をはじめとする明治・大正期の歴史的建造物など、なにかとレンガにゆかりのある横浜だが、「ハマレンガ」とはコレいかに?
その正体を探るべく、まずは現地調査に向かった。
ミステリー感あふれる「峰の赤富士」とご対面
滝ノ川あじさいロードは、保土ケ谷区峰沢町(みねざわちょう)にある。三ツ沢公園の北側の第三京浜と横浜新道が入り組んで交錯する辺りだ。最寄り駅の横浜市営地下鉄ブルーライン・三ツ沢上町(みつざわかみちょう)駅から徒歩5分ほど。
赤いラインが滝ノ川あじさいロード。もちろん第三京浜や横浜新道の下を通っている(© OpenStreetMap contributors)
メインの入り口は、横浜新道(国道1号線)と新横浜通りが交差する三ツ沢公園入口交差点のすぐそばにある。
外から中を望むと、のどかな遊歩道の入り口のようにも見えるが
中から外を見ると交通量の多い道路がひしめいている
とはいえ少し中へ進めば、ポッカリと道沿いに畑が広がっていたりして
周囲を幹線道路や有料道路が走っているとは思えない、落ち着いた散策路が続く。
そして梅雨時ともなれば、たくさんのあじさいが沿道を彩る横浜市内のあじさい名所のひとつでもある。
ただし取材時は晩秋
時期が時期なら右側の道沿いにはあじさいが咲き誇っているはずだが、残念ながら今その彩りはない。
この道は、名前からも察しがつく通り、もとは川だった。上流にはかつて滝ノ川源流の水を貯水した灌漑(かんがい)用の溜め池・三ツ沢池(通称・大池)があり、そこから続く川筋は、一帯の水田を潤す大切な用水路だった。
だが宅地化の進展により、三ツ沢池は1967(昭和42)年から始まる第三京浜道路の工事残土で埋め立てられ(過去記事「保土ケ谷区に幻の巨大池があった? かつて湖ほどの大きさだったという「三ツ沢池」について教えて!」を参照)、滝ノ川は1993(平成5)年ごろから暗渠(あんきょ、地下に埋設してふたをした水路)化する。
そして2000(平成12)年、生活環境整備の施策の下、その暗渠の上に「滝ノ川あじさいロード」ができた。
三ツ沢池に関する記事はこちら
「今昔マップon the web」より作成
上の並列地図は、左が1906(明治39)年に作成されたもの、右が現在の同じ場所。左の地図で赤く囲んだところにはっきりと三ツ沢池が描かれている。また、同じ場所が現在すっかり住宅地になっているのが、右の地図でわかる。
ちなみにあじさいロードに沿うように走る北側の道は「大池道路」。名称に三ツ沢池の名残りをとどめている。
そんなあじさいロードをもう少し進んでいくと・・・
第三京浜沿いの遊歩道を少女たちが元気よく走っていく
この道なら、排気ガスと騒音に満ちた周辺の道路とは無縁。行き交う車の心配もなく、子どもたちは思い切りダッシュすることができる。
道の脇には側溝のようなものもある
これはビオトープ(人為的に動植物が住みやすい環境にした場所)だ。
近所の小学生たちが大事に育てているようだ
ビオトープの先にはこんな井戸もある
試しに手押しポンプを動かしてみると、勢いよく水が出てきた。
確かにこの散策路は敷石ばかりか、花壇やビオトープの縁石、井戸の土台など、さまざまなところにレンガが使われている。
これが「ハマレンガ」というものなのか?
「そうです」と足元のレンガが言っていた
しかも、「このレンガは下水汚泥を処理した灰で作られたものです」と、早々にみずから正体を明かされた。
さらに先へ進み、第三京浜の高架下が見えてくると・・・
高架の下、左手になにやら怪しげな突起物が地面から生えている
にじり寄ってみると・・・
う~ん、山っぽいと言えば山っぽい
いさぎよく正面から対峙する。
ほほぉ、確かにレンガでできた山ですね
犬の散歩者との比較で、だいたいの大きさが想像できるだろうか
仕切りのチェーンに付けられた赤い札に近づいてみると・・・
「登山禁止」と書かれていた
ということで、みずから「山」であることを主張していた。
そして、「山」の左手に掲げられた白くて丸いお皿のようなものをよく見ると・・・
「峰の赤富士 金子宣治」とある
このオブジェが「峰の赤富士」であることも確認できた。
だが、その横に記された「金子宣治」という名前はなんだろう。普通こういう場合作者の名前なわけだが、果たしてそうだろうか。さらに謎は深まるが、同時にその名前がミステリーを解く唯一の鍵のようでもある。
ともあれ、もう少しあじさいロードの先を偵察してみよう。まだなにかヒントが隠されているかもしれない。
「峰の赤富士」の道を隔てた向かいには、ベンチとテーブル席があった
「登山はやめて、ここでじっくり鑑賞してもらいたい」ということだろうか。
立ち去り際に振り返ると、こちら側から見てもなかなか壮観だ
高架下を抜けると、だんだん右手の大池道路の車道が接近してくる
とうとう車道とくっついてしまった
そして歩道は突如狭まり終着点へ
こちら側の出入り口は、看板もひしゃげて、ちょっと寂しい感じだ。
いずれにせよ、全長約700メートル、のんびり散策して10分ほどの行程はここで終了する。道すがら程よい間隔でベンチなども置かれ、あじさいの時節を問わず、近隣住民の犬の散歩やちょっとした日々の散策には、手頃な小道なのだろう。
疲れたらベンチでひと休み