京浜東北線でよく見る石油タンクはどこからどこへ行くの?
ココがキニナル!
京浜東北線で石油のタンクが通るのをよく見ます。どこから来てどこに行くのですか?(しゃびっちさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
根岸駅から群馬や長野、栃木等の間を往復している。さらに昨年3月から震災後の石油不足を補うため、盛岡・郡山間往復6本を増やして走行している。
ライター:吉川 ゆこ
今回の調査対象は石油のタンク、つまりタンク車だ。
タンク車
はまれぽ編集部でも「よく見るよ!」という声が挙がっていたが、駅のホームを走り抜けるタンク車がどこに行くのか、その先については何も知らない。言われてみればどこに行くのだろう?
どこに行くのか聞いてみた
タンク車の車体をよく見ると、日本石油輸送株式会社(http://www.jot.co.jp/)という社名を確認することができる。ここがタンク車を管理している会社なのか?早速取材を依頼した。
東京都品川区に本社を構える日本石油輸送株式会社
日本石油輸送株式会社はタンク車を使った鉄道輸送と、タンクローリーを使った自動車輸送を主に行っている会社だ。
同社はタンク車を所有し、石油元売会社から石油の輸送を依頼されると、JR貨物にタンク車の運転をしてもらうという手順で各地に石油を届けている。
「京浜東北線で見かけるタンク車は根岸駅から、群馬(倉賀野駅)、長野(坂城駅)、山梨県(竜王駅)、栃木(宇都宮貨物ターミナル駅)、東京(八王子駅)の間を走っています。短い距離の場合はタンクローリーで運んだほうが早いのですが、長距離となると鉄道輸送のほうが効率的です。特に長野、群馬では鉄道で運ばれた石油が県内の石油の流通の大半を担っています」と営業担当の渡辺さん。
総務部の太田さん(左)と、営業担当の渡辺さんが快く迎えてくださった
さらに詳しく話を聞くと、昨年起きた東日本大震災以降、タンク車の本数が増えているそうだ。
「いつも鉄道輸送をお使いいただいている石油元売会社様の仙台製油所が被災し、石油の出荷ができない状態になりました。仙台製油所は盛岡貨物ターミナル駅(岩手)や郡山駅(福島)に石油製品を運ぶ拠点となる製油所だったんです。そこで根岸駅から足りない分を送ろうということになりました」(渡辺さん)
震災後わずか1週間で準備が進み、3月18日には比較的被害の少なかった日本海側を迂回させるルートでタンク車を走らせることができた。
昨年4月中旬まで磐越西線を走ったタンク車(現在は東北線経由)
「タンク車は私達が普段利用している電車の運行の合間をぬって走らせるものなので、調整も難しいです。本数が増えるということは実は大変なことなんですよ。私達の力だけではなく、JR貨物様、石油元売会社様をはじめ、関係する多くの会社との協力と連携があってこそ実現したんです。被災地の方々のお役に立つには、やはり私達の本業である鉄道輸送でと思いまして、それが社会貢献なんだという思いが強かったものですから、早く対応できて良かったなと思いました」と太田さんはおっしゃる。
「たちあがろう東北」のヘッドマークをつけて
根岸駅から最大で片道17本、往復で34本のタンク車を走らせることができるそうだが、震災後に盛岡貨物ターミナル駅行の2本と郡山駅行の1本、往復で最大1日6本ほど従来よりも本数が増えている。
タンク車は、根岸線では日中に走ることが多いそうだ。早朝から深夜まで走っているが、例えば朝7時台や夕方といった通勤・通学の利用者が多い時間帯は基本的に走らないため、会社員の方々は見る機会は少ないかもしれない。
仙台からの鉄道輸送が復旧すれば、震災対応の盛岡駅・郡山駅の便は役目を終え、また通常の走行スケジュールに戻る。その日もそう遠くはないだろう。
根岸駅に大集合
ちなみにタンク車は横浜駅では見ることができない。根岸駅から桜木町駅まで根岸線を走ると、そこから貨物専用の支線である通称「高島線」に折れ、鶴見駅へと進む。
タンク車の勇姿を横浜市で見るならば根岸線沿いがおすすめだ。中でも、タンク車が大集結している駅がある。そう、タンク車の発着駅となっている根岸駅だ。およそ500台のタンク車が配置されているそうなので見に行ってみた。
いた!タンク車がいっぱい。お行儀良く整列している
ここで見られるタンク車の大半が「タキ1000形式」で荷重は45t。ガソリンだと車両1両で60~61klを運ぶことができる。一般的な乗用車のガソリンタンクが50ℓとした場合、1両で1200台分くらいのガソリンを運ぶことができる。またガソリン以外にも灯油や軽油、A重油も運ぶことができる。それが最大で20両連結するというのだから、けっこうな量を一度に運ぶことができる。鉄道輸送の利点だ。
行ってらっしゃい!
根岸駅から出発していくタンク車。そして根岸駅に帰ってきたタンク車を見ることができた。話を聞いた後だったので、タンク車がとても勇ましく見えた。しかし、これだけタンク車が停まっているならば、根岸駅を利用している人にとってタンク車は特別な存在ではなかったなと思った。
取材を終えて
寄付や被災地訪問といったニュースは取り上げやすいが、各企業の地味な努力は目立たず、取り上げられにくい。
タンク車がどこからどこへ行くのか、そうした素朴なキニナルから取材はスタートしたわけだけど取材に行ったおかげで、被災地支援に励む企業の活動を知り、とても爽やかな気持ちになれた。
根岸駅で夢中になってタンク車の写真を撮っていると、私と同じ方向に熱い視線を注ぐ男性がいた。目が合った瞬間、「お前も撮り鉄、仲間だろ?」という合図を送られたような気がした。仕事で来たんだけど…まぁいいか。
― 終わり ―
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必塗マンさん
2015年05月10日 01時33分
根岸駅をよく利用します。タンク車は見慣れた光景で、石油会社が有るから当たり前と思って居ましたが、大震災の後は違いました。この列車がとても心強く、頼もしく思えたので、ブログに記事を書きました。 (http://blog.goo.ne.jp/scott_one/e/ed3449a9f0db84d12f9e42c4bc4354d3) リンクを張るのは、だめですか?不適切と御判断された場合は、この投稿を削除して下さい。
OKKUNPAPAさん
2015年05月09日 13時32分
高島線を通過する理由は現在は、単純にそのルートが効率的だからです。横浜駅から先で転線すると横浜線位しか入れませんが、高島線経由で武蔵野貨物線や東海道貨物線を利用し、八王子・山梨方面、大宮・宇都宮方面と多方面に行けます。これは記事でも触れられてましたが、在来線のダイヤの隙間を走らせる為、貨物駅等で時間調整が必要なのです。また貨物線を利用すれば在来線を待つ必要もなくスムーズに運行することもできます。以前は山手貨物線(埼京線)を経由もありましたが、湘南新宿ラインの増発等で過密になった為現在はあまり走りません。余談ですが、金沢八景の車両メーカーからの新造車の回送(甲種輸送)は京急の神武寺から横須賀線に入り東海道貨物線で羽沢経由や根岸線経由で高島線経由で各地に(各私鉄にも)送られて行きます。鉄ちゃんネタですみません(笑)
ynekoさん
2015年05月09日 11時40分
根岸発着の石油輸送は、同石油会社の水島の次に多いと聞きます。引く機関車はJRのダイヤ改正とともに変化していますが、かつては、東海道本線のブルートレインを引いた機関車も転用されて引いた時期もありました。現在でも国鉄時代のレアな機関車が引く時間は、根岸・高島町の水辺公園に撮り鉄が集まっていますよ。