本牧のソウルフード! 四角いピザを食べられる店が増えているって本当?
ココがキニナル!
本牧の名物とも言える四角いピザ。この四角いピザを出している店が、最近、増えているというウワサを耳にしました。何か理由があるのでしょうか?おすすめのピザの紹介もお願いします(ykmrcさん)
はまれぽ調査結果!
本牧IG発信の「四角いピザをメニューに」という趣旨に賛同した飲食店が、各店舗オリジナルのピザを提供。2017年6月末時点で23店舗が参加
ライター:大和田 敏子
ピザといえば丸いのが一般的だが、本牧のピザは四角いのが定番だ。
四角いピザは、1952(昭和27)年に本牧にオープンしたバー「イタリアンガーデン」が発祥と言われる。
その後、「リキシャルーム」や「VENICE」など、本牧を代表する店で四角いピザが提供され、「本牧のピザ=四角いピザ」として定着しつつあった。
1980(昭和55)年の「イタリアンガーデン」。両隣は「V.F.W」「VENICE」
本牧の歴史を少し振り返ってみる。
敗戦により米軍占領下に置かれた横浜の中でも、最大の接収地だった本牧には、GI(米軍兵士)と市民との接触の中でアメリカ文化が徐々に浸透し、新たな文化が生みだされる。
GIらが集まる店も相次いで出店されたことから1960年代~70年代に本牧は全盛を極めた。
しかし、1982(昭和57)年、米軍の接収解除後、街の様相はしだいに変わり、バブル期以降はさらに飲食店も減少。四角いピザを提供する店も少なくなった・・・。
ところが、最近、にわかに四角いピザを出す店が増えてきたという。
四角いピザが? 本牧が? 盛り上がってきた!?
四角いピザのことならルーツである旧イタリアンガーデンを引き継ぐ現在の「イタリアンガーデン(以下、IG)」に手掛かりがあるだろう。
同店の店主・八木弘之(やぎ・ひろゆき)さんに話を伺うため本牧へ向かった。
四角いピザの店、増加計画!?
本牧通り沿いで存在感を放つ「IG」
八木さん(左)と、ともに店を営む長男の庄之介(しょうのすけ)さん
本牧に四角いピザを出す店が増えていることについて伺ってみると、その理由は八木さんが考えた「本牧って、どのお店に入ってもメニューに四角いピザがあるんだよね! 計画」によるものだと分かった。
ちょっと長い名前だが、内容はそのまま。本牧の飲食店ならどこでも四角いピザ「本牧ピッツァ」を食べられるようにしようという計画。四角いピザを定着させ、名物と認知されることで人が集まり、街のにぎわいを取り戻すことが狙いだ。
旧イタリアンガーデンから店を引き継ぎ28年、現在62歳の八木さん。今まで、ほかの飲食店からIGで出している四角いピザを自分の店でも出したいと声がかかることが度々あった。八木さんも四角いピザの存在をもっと広めたいという思いはあったが、50代まではIGの経営に集中する必要があり、四角いピザの普及拡大に踏み切れなかったという。
旧イタリアンガーデンから引き継がれてきたピザのファンは多い
四角いピザで本牧の街ににぎわいを取り戻すことを1つのプロジェクトとして具体的に考えるようになったのは60歳の時。本牧という街を巻き込んだ取り組みだけに、自分ひとりでやっても上手くいかない、街をあげて協力し合わないと成功しないと考え、徐々に準備を進めた。
店に来る同業者に企画を話して、賛同者を増やしていった
まずは、知り合いの飲食店に声をかけていき「自分の店で四角いピザを出したい」と言ってくれる店が40軒になったところで、計画を本格的に始動。
飲食店に企画の趣旨を理解してもらうためのパンフレットも作成
参加の条件は、四角(長方形)で薄いクリスピータイプの生地を使用したピザをお客さんにアツアツで提供すること。トッピングやソースは何でもOKだ。
飲食店のジャンルは問わず、和食店、寿司店、中華店などピザとは無縁と思われる店も参加しているのも面白いところ。
パンフレットには、八木さんと親交が深い横山剣さんも登場
四角いピザの生地の製造は、発酵して膨らむ生地を薄くするだけでも難しいのに、さらにピザソースや具材などの水分で美味しさを損なうことのないピザ生地を作るのは至難の業。機械だけでは難しく、最終的には手作業で作っているそうだ。IGで製造するだけでなく、本牧間門にあるパン屋さん「本牧館」にも協力をお願いした。
こちらがIGのピザ生地。2ミリほどの薄さだ
店独自で生地を開発し提供することもOKで、「店の特徴を出してオリジナルのピザを作ってほしい」とピザメニュー開発の相談にも乗っているそうだ。
しかし、これだけこった生地を作るとなると店側の負担も大きいだろうと、2017(平成29)年3月1日からIGの生地のほか、必要に応じてIGで使用しているソースやチーズなども提供している。
2017年6月末時点で23店が参加。すでに本牧だけでなく、横浜駅付近までこの動きは広まっている。
本牧を中心に山下町、関内、横浜駅近辺まで四角いピザが広がりつつある
「本牧にとらわれず広く横浜全体に展開していく」そうで、現在も参加店舗は増加しており、専用サイト「本牧ピザ.com」で随時情報を更新している。
現在の参加店舗はコチラ!
参加店の店頭には「本牧ピッツァ」ステッカーが貼られている
八木さんが描いたピザのイラストに横山剣さんのイメージシルエットを重ねたデザインだ。
「ブームで終わらせず、文化にする! 自分が死んだ後も、四角いピザという文化が根付いていくように、計画を進めていきたい」と八木さん。
まずは2020年ごろまでに参加店を100店まで増やすのが目標。「メディアにも多く取り上げられて、本牧の名を全国区にし、20代以下の若い世代にも本牧を知ってもらいたい」と話す。
クレイジーケンバンド20周年のイベントにも本牧ピザが8店ほど出店予定
現在は、ほぼ八木さんひとりで進めているプロジェクトだが、今後は飲食店組合や商店会などと協力体制を作りながら、四角いピザのイベントなども企画したいという。
話を伺った後、あらためて四角いピザを焼いていただいた。
元祖、本牧ピザ! アツアツでいただきます
IGの四角いピザは初めての編集部・広瀬「薄い生地で食べやすく、おつまみにピッタリ!」
度々、このピザを食べている筆者も、チーズたっぷりでパリッと焼き上がったピザの変わらぬ味に満足。一方で、ほかの店はどんなピザを出しているのだろうと、キニナってきた。
ピザに縁がなさそうな、和食やお寿司屋さんでは、どんなふうに店の個性を出すのだろう。フレンチの店では高級食材を使った格式高いピザを出したりするのかな・・・。
これは、ぜひ食べに行って確認してみよう!