廃止された横浜南部市場で工事が開始! 「食のマーケット」の現状は?
ココがキニナル!
金沢区鳥浜の「横浜南部市場」で、新施設の工事が開始。現在の様子は?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
建設が始まった施設は「(仮称)BRANCH 横浜南部市場」。未来の市場の在り方を示す全国に先駆けた施設が2019年9月に登場する!
ライター:はまれぽ編集部
我々が日々いただいている食事の原点であり、多くの人々の胃袋を左右する「市場」。
何かと東京都中央区の築地市場移転問題が世間を賑わせているが、横浜でも再生の時を待ち続けている注目の市場がある。
それが、1973(昭和48)年開設の「南部市場」だ
金沢区鳥浜にある南部市場は、2015(平成27)年3月に中央卸売市場としての役割を廃止。横浜の中央卸売市場機能は、神奈川区にある「本場(ほんじょう)市場」に集約・再編された。
ところがどっこい営業中!
だが、横浜シーサイドラインの南部市場駅の目の前に、「南部市場」はしっかりと残っている。加えて横浜市が選定した運営事業者によって、ここに「食のライブマーケット」が作られる予定なのだ。
以前は「道の駅」が作られる可能性も噂されていた南部市場だが、市場が持つ「食」の魅力をより前面に打ち出した商業施設へと変貌を遂げようとしている。
2012(平成24)年時点の南部市場。入り口近く(左側)の様子が大きく変わることになる
南部市場はいったいどのように生まれ変わろうとしているのか。現地の様子を確認してきた。
どんな新施設が登場する?
開発エリアは、市場の駐車場だった部分が中心(横浜市HPより、赤枠は編集部)
南部市場駅から入ってすぐの駐車場だったエリアでは、すでに新施設の建設に向けた作業が始まっている。
この日は埋設物除去などの準備工事中(青果棟裏手)
新施設「(仮称)BRANCH 横浜南部市場」の設置・運営を行うのは、2018年10月1日から市と20年間の定期借地契約を結んだ「大和リース」。2019年9月の開業を目指し、急ピッチで作業を進めている。
総床面積は3万4719.81平方メートル、施設屋上や現在の管理棟跡地などに774台の駐車場を整備する予定で、市場に付随するだけの施設とは一線を画する規模になりそうだ。
新施設のイメージ図(大和リース資料より)
これまでの南部市場では、消費者が直接利用することもできる施設は専門店や飲食店の入る「関連棟(食品関連卸売センター)」など一部のみ。市場が消費者でにぎわう機会は、土曜市などに限られていた。
「(仮称)BRANCH 横浜南部市場」に整備される施設は、「食のアウトレットゾーン」や「各種専門店」に「マルシェ用スペース」、「オープンカフェ」に「野外シネマ」など多岐に渡る。
新鮮な魚や野菜を堪能できるだけではなく、どれも集客に特化したにぎわい施設にふさわしい内容だ。
こだわりの店舗で購入した季節の食材は、「バーベキュー」や「のっけ丼」として施設内で食べられるなど、「市場らしさ」を生かした食の楽しみを提供する店舗も登場するそうだ。
現在の青果棟・水産棟につながる通路部分も新施設となり、関係車両は迂回する構造に
ここにはマルシェや交流用のスペースなどができる予定(大和リース資料より)
オープンカフェや野外シネマといった、これまでの市場のイメージとはかけ離れたサービスも用意される新施設だが、「関連棟(食品関連卸売センター)」など現在の施設を改修して活用する部分もある。
こちらが既存の「関連棟」
店舗は営業中だっが、看板には「準備中」の張り紙が
この「関連棟」は、横浜市が主体となって改修工事を実施中。
これまでは市場の関連施設として運営していたが、今後は商業施設となる。そのため、建築基準法や消防法に合致させるため、スプリンクラーやエレベーターの設置工事が必要になるという。
これまでは「市場飯」を楽しめる場所だったが、「(仮称)BRANCH」と一体的な雰囲気を持つ施設に生まれ変わる。
関連棟の先に、バーベキュー場やかき小屋などの施設ができる予定(写真は過去記事より)
また、南部市場駅から関連棟まで、駅からの利用者の動線となる歩道橋の設置工事も進行中。駅からの利用者にとっては、この関連棟が新たな市場の入り口になるようだ。
現在の駅入り口
まだまだ工事が始まったばかりなので、新施設の具体的な姿が見えてくるのはもう少し先になりそう。今から楽しみにしておきたい。
市場奥の物流エリアはどうなる?
ところで、「廃止」されたはずの南部市場では現在も運送トラックが行き交い、しっかり市場として機能している。思いのほか元気そうだ。
工事現場の隣で営業を継続している
そもそも、「中央卸売市場」とは、一定の条件を満たした卸売市場のうちから、中核的拠点となる施設を自治体などが開設するもの。いわば「卸売市場」の中でも公的で特別な市場なのだ。
南部市場は中央卸売市場ではなくなったが、民営化されて流通拠点としての機能は維持している。「賑わいエリア」の整備が進んでも、青果や水産物が行きかう「市場」であることは変わらないのだ。
中央卸売市場としての機能は神奈川区の本場市場に移っているが、南部市場ではそれを補完するための加工・配送の業務や、流通の場所としての活用が行われている。
新施設の建設現場奥にある水産棟では、業者向けの食堂なども営業中
カラスに向けた注意書きがちょっとお茶目
水産物を取り扱う水産棟だけではなく、野菜や果物を扱う青果棟も、同様に業務が続けられている。花の卸売を行う「花き地方卸売市場横浜南部」も、物流エリア内の民営市場として営業を継続していく。
今も横浜や周辺地域の食卓を支えている青果棟
新たな保冷庫の設置工事なども進められている
近年、卸売市場を取り巻く状況は大きく変化している。産地直送の商品の増加や、インターネットでの取引が容易になり、消費者と生産者の距離が近づいているのだ。その仲介役を担ってきた昔ながらの「卸売市場」は転換を迫られているとも言える。
そんな中で、消費者の開かれた商業施設へと転換する横浜南部市場の挑戦は、全国に先駆けたモデルケースの一つにもなりそうだ。
物流と賑わいが両立する市場へ(横浜市HPより)
横浜市経済局中央卸売市場本場の南部市場活用課担当者は「横浜南部市場の新たな商業施設が成功すれば、全国の関係者が見に来ることになると思います。また、物流エリアの事業者の方々も、新施設のイベントなどで消費者と交流の場を持ちたいと望んでいます。施設の開業に向けて、ぜひ連携していきたいと思います」と話す。
生まれ変わった南部市場では、消費者の生活スタイルが変化する時代の流れの中で、新しい「市場」の役割が示されることになるかもしれない。
取材を終えて
市場入り口近くの管理棟など、取り壊される施設もある
中央卸売市場としての役割を終えた横浜南部市場。これまで我々の食卓を支えてきた市場が「廃止」されたことは、一抹の寂しさを覚える出来事だった。
一方で、新たに作られる施設は、今も残る南部市場の機能を生かし、食の楽しみを存分に味わえる施設になりそう。新たな施設の姿を心待ちにしていきたい。
ー終わりー
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ホトリコさん
2018年10月05日 12時38分
魚どころか、白いご飯を味がないなどと言い訳して食べない子供を量産する時代に、魚の美味しさを伝える場所が増えるのは嬉しい。