生態学の世界的権威、横浜国大の宮脇先生が提言する津波対策とは?【後編】
ココがキニナル!
横浜国大の宮脇昭先生をインタビューしてください。特に神奈川県の沿岸部に植林して津波を防ぐ方法を提言して欲しいです。(にゃんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
あなたの愛する人を守るためにも木を植えよう。家の周囲など、まずできるところから始めることが大切。
ライター:松崎 辰彦
我慢・競争・共生──植樹は人間教育になる
「宮脇方式」と呼ばれる宮脇氏の植樹は、ポット苗を使うことでも知られている。
このポット苗を製作している組織の一つが平塚市の進和学園である。進和学園は知的障害者や身体障害者の方々が介護を受けたり、就労したりする社会福祉法人。現在約500人の利用者がいる。就労活動の一環として、樹木の苗作りも行っている。
ポット苗を作っている進和学園の施設
就労部門の営業担当会社「研進」の社長である出縄貴史氏は言う。
「苗を作るポイントは水やりです。多くても少なくてもいけません。土は、敢えて水はけのよいものを使っています。水がすぐに流れてしまうから、水を逃すまいと根がより吸収力を発揮するからです。
宮脇先生は『本物は厳しさに耐えて長持ちするものだ。厳しい環境に置かれないと本物はできない』と言われていて、これは人作りでも共通するものだと思います」
タブのポット苗を持つ出縄氏
貴史氏の叔父であり、進和学園の創設者である出縄明理事長が、あるときたまたま聞いたラジオでの宮脇氏の話に感銘を受け、新工場の植樹の指導をお願いしたことから両者のつながりは始まった。
そうしてできたのが進和学園「どんぐりグループ」。宮脇氏の提唱する「いのちの森づくり」を苗作りの面からサポートするグループである。
『瓦礫を活かす森の長城プロジェクト』のための苗木を育成中
「ここではどんな方でも、水やりとか肥料をまくとか、なにかしら自分の役割があります。時間がゆっくりと流れているんです。ここに車椅子の方などがこられると、みんなの作業を眺めるだけで不思議なことにニコニコとして、福祉施設の中で見せない表情を見せるんです」
この小さなドングリが多くの人命を救うのである
「宮脇先生は植樹に関して『仲のいいものだけを集めてもだめなんだよ。お互いに少しだけ我慢して、競争しながら、そして共生するのがいいんだよ』と言われますが、これは人間社会におきかえても同じだと思います」
人間教育にもなる宮脇氏の植樹。門下からは藤原一繪横浜国大名誉教授(植生学)など、多くの俊英が生まれている。84歳の宮脇氏が世界中から招待されている理由がわかる。
第5回ケニア植樹祭 (写真提供 宮脇昭)
取材を終えて
昔は科学も総合的に自然を見ていた。しかし18世紀に寒暖計ができて温度が計れるようになり、リトマス試験紙ができてphが計れるようになって、それからは計測できるもの、金に換算できるものだけを対象とするようになった。
けれども自然は目に見えない信号を発しています。わずかな信号や予兆から隠れた全体を読み取って、問題が起こる前にどう対応するかが人間の本当の科学なんですよ──
宮脇氏は教えてくれた。
宮脇氏の編著書『日本植生誌』(至文堂)
実際にお会いした宮脇氏は科学者であると同時に哲学者であった。「潜在自然植生」という目に見えない自然の言葉を読み取ることを説き、物事を全体的に見ることの大切さを強調した。
「私はニセモノは相手にしません。あなたが本物を求めるなら私はこれからも協力します。本物とは長持ちするもの、命が続くものです。頑張ってください」
微笑みながら手を差し述べてくれた。“4000万本の木を植えた男”の手は力強くはあったが武骨ではなく、鋭利で、芸術家の手のように繊細だった。
─終わり─
取材協力・図表提供
公益財団法人国際生態学センター
http://www.jise.jp/
曹洞宗金剛宝山輪王寺
http://www.rinno-ji.or.jp/
社会福祉法人進和学園
http://www.shinwa-gakuen.or.jp/
株式会社研進
http://www.kenshin-c.co.jp/
一般財団法人『瓦礫を活かす森の長城プロジェクト』
http://greatforestwall.com/
株式会社学研パブリッシング
http://gakken-publishing.co.jp/
「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」設立記者会見 2012(平成24)年5月25日
http://youtu.be/1xwb69eJf64 (音が出ますのでご注意ください)
※植樹を通じて災害を防ぐ方法については宮脇氏の近著『瓦礫を活かす「森の防波堤」が命を守る』(学研パブリッシング)等に詳しい。
ホトリコさん
2015年05月07日 13時20分
前編よりも面白かったorつまらなかった回答が総数で少ないから見なかった人が多かったのかも。良いアイディアだと思うのに、残念。しかも僕のキニナル投稿にも有効な対策でなく、投稿後に最新のデータが発表されていて、相変わらず、特に海上保安庁と災害の拠点がある筈の新港埠頭は災害に弱いままです。
ねこ2号さん
2012年11月25日 07時51分
山下公園は瓦礫を埋めたものだけれども、そこの沈床花壇は戦後になってから船だまりを埋めたものだから厳密には震災瓦礫とは違うかも?なんで沈床花壇の写真を使うのかな?