若き養蜂家の試み（つづき）
　

犬小屋くらいの大きさの養蜂設備が並んでいるベランダ
　

防護服に身を包む中野さん

天気が良い日は、冬でもミツバチは活動する。
　

巣を日光にさらされて、ややどよめくミツバチ
　

ずっしりとした巣は重さ約3㎏

中野養蜂園が辻堂の住宅街で養蜂を始めたのは今から2年前のこと。
「都市養蜂」の存在を知った中野さんは、「銀座やニューヨークでもハチミツができるなら、うちでもきっとできるはずだ」と、思い立ったのだという。

中野さんが丹精込めて育てたミツバチから採れた「湘南はちみつ」は、近年、地産地消の普及・啓発を推し進めている藤沢市から「湘南ふじさわ産」食材の認定を受けた。
29歳の若き養蜂家の試みは、湘南に新しい名物を生んだのである。



「湘南はちみつ」が結ぶ地元ネットワーク

「湘南はちみつ」は、一般客はもちろん、地元の店舗経営者の間でも話題となり、あらゆるシーンで活用されている。

「ハチミツは保湿効果とともに殺菌効果もあるので、ひげ剃りなどで荒れた肌の修復を早めます」
ハチミツの効用を語ってくれたのは、中野養蜂園から徒歩5分程の場所にあるヘアサロン「cool off」の店長・宮袋さん。
　

自身も日焼けした肌にハチミツを塗っているという宮袋店長（左）

「当店人気のメニュー、『辻堂エステ』です！」と、宮袋さん。
「湘南はちみつ」に、保湿効果の高い日本酒を配合したスキンケアパックを開発し、サービスに加えている。日本酒には、熊澤酒造の「湘南ほまれ」を使用しているそうだ。
　

辻堂エステ（1000円）

ちなみに、熊澤酒造に関する過去の記事は、こちらを参照して欲しい。

また、「湘南はちみつ」を使った新たな湘南名物も誕生しているという。
例えば、地元辻堂のパン屋「muginami BAKERY」では湘南名物「湘南はちみつマドレーヌ」が販売されている。
　

「muginami BAKERY」店長の青木さん
　

「湘南はちみつマドレーヌ」。種類はプレーン（110円）、アールグレイ・抹茶・レモネード・ココア（120円）

「レモネードの酸味とハチミツの香りがすごくマッチするんです」と、店長の青木さん。
　

レモネード味がオススメだそうだ

ハチミツ特有のフルーツ香と粘りが、定番メニューの味と食感に変化をもたらすのだとか。

その他、MINAMI CURRY&SOUP（カレー屋）のデザート、「イルカ屋」（パン屋）のパン、「丸寿」（和菓子屋）のカステラ、プレンティーズクレープ（クレープ屋）テラスモール店のクレープ、27Coffee Roasters（コーヒー専門店）のエスプレッソ、Louche（イタリアンレストラン）のホットワインなど、「湘南はちみつ」は地元のさまざまな店舗のメニューに使用されている。



取材を終えて

中野さんは、次のシーズンに採れるハチミツの味を占うかのように、度々、近所の草花に目を向ける。
　

左が夏の「湘南はちみつ」、右が春の「湘南はちみつ」。季節の花によって味も色も全く異なる

「秋口にはレンゲの花の種をご近所に配るんです。ご近所の方が『うちの庭にもハチさんが来てたよ』なんて言ってくれて・・・。この近辺のミツバチは、だいたいうちの子ですから」と、嬉しそうに語る。
「人類の発達よりもずっとずっと前からミツバチは存在していました。ミツバチたちの社会秩序が維持されているのにも納得できますよね」

若き養蜂家のミツバチへの敬意と愛情の深さは計り知れない。
　

風呂にもハチミツを入れるという中野さんからは常に甘い匂いが（イラスト：ナリタノゾミ）

－終わり－


中野養蜂園
所在地／藤沢市辻堂東海岸1-16-8
営業時間／9:00～19:00
定休日／日曜日

cool off
所在地／藤沢市辻堂西海岸1-9-1
営業時間／10:00～20:00
定休日／月曜日、第２火曜日（月曜が休日の場合・・・火曜、水曜）

muginami BAKERY
所在地／藤沢市辻堂東海岸1-10-18
営業時間／9:00～19:00
定休日／月曜日