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「とっつかまえる」の語源は「戸塚まえる」って本当?

ココがキニナル!

「とっつかまえる」は戸塚宿で宿泊させるために呼び込んで、客をつかまえることが語源と聞きました。本当でしょうか?(katsuya30jpさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

「とっつかまえる」の語源というわけではないが、「東海道中膝栗毛」の程谷(保土ケ谷)宿の場面で「戸塚前」と「とっつかまえる」を掛けた狂歌が出てくる。

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ライター:永田 ミナミ

保土ケ谷宿
 


歌川広重「東海道五十三次」保土ケ谷宿
 

現在の帷子橋。1964(昭和39)年の改修工事で帷子川の流路は駅の反対側に移っている


さて、保土ケ谷宿といっても、正式には旧八王子道(江戸時代初期までの古東海道と重複)との分岐点である芝生(しばう)の追分(保土ケ谷区宮田町1-14付近)から境木立場/境木地蔵尊あたりまでと、宿場の管轄区間はおよそ5.4kmと広範囲におよぶ。
 


青い線が旧東海道。Aが芝生の追分、Bが境木地蔵尊(Googleマップより)
<クリックして拡大>


これは当初、元町(地図上ピンク色部分周辺)と帷子町(地図上黄色部分周辺)が約2kmも離れていたことによるかもしれない。のちに保土ケ谷宿は、1648(正保5)年の東海道進路建設(紫色のルートがそれ以前の古東海道)を機に新町(地図上赤色部分)が整備され、1660(万治3)年の東海道の進路完成にともない新町に移転、統合される。

「東海道中膝栗毛」では、保土ケ谷に着いて狂歌を詠んだら品濃坂に着いてしまうので、この5kmあまりの道程は実にさらっとしか描かれない。
 


環状1号と国道1号が合流するところに門だけ残る本陣跡


一九は「東海道中膝栗毛 初編(江戸~箱根)」冒頭の凡例でいくつか執筆の方針を述べているが、そのなかに「駅々風土の佳勝(かしやう)、山川の秀異なるは、諸家の道中記に精(くは)しければ此に除く」という部分があるほか、「館伴女(とめおんな)傀儡(おじやれ=飯盛女)の風流泊々(とまりどまり)の遊戯、その可笑みを純(もっぱら)にす」 「巻中に着(あらは)す夷曲歌(たはれうた)は、排設(こぢつけ)地口を専らにす」とも述べている。

「街並みや風景の素晴らしさは、今までに出版された道中記に詳しく書いてあるから書かない」「留女と客とのやりとりは、面白おかしくどんどん書く」「物語に出てくる狂歌は、無理やりこじつけて言葉遊びをどんどん入れていく」というのである。

つまり、そういう制作意図だったからこその「戸塚前て/とっつかまえて」だったのだ。



取材を終えて

今回、弥次喜多の気分にいくらかでも近づこうと、江戸見附(見附は宿場中心部の江戸側、上方側出入口にそれぞれつくられた土塁状の構造物)から権太坂あたりまで、4kmほど旧東海道を歩いてみた。旧東海道の施設跡には案内板が立ち、旅籠や外川神社なども残っていて、江戸時代に思いを馳せることは今日でも可能だ。

そして、権太坂の上で夕暮れの風に吹かれながら思ったのは、アスファルトと土という路面の違いがあるとはいえ、ニューバランス(スニーカー)のない時代に一般人が草鞋(ぞうり)で1日に40km以上歩いていたとは、つくづく人間は動物として退化したものだ、ということだった。
 


助郷会所跡にはこんな自動販売機もある



―終わり―

 

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  • 体力に自信のない昔の旅人が「最初は無理せず保土ヶ谷宿で泊まろう」と思いつつ、途中で寄ったハマっ子なだんご屋のおやじに「今日はどこ泊まるの?戸塚でしょ!」と言われ、つい意地を張って戸塚まで歩いてしまい疲労困憊。宿の玄関で「保土ヶ谷で泊まるはずが戸塚まで来てしまった…いや~参った!」と叫んだところ、宿の主人が「旦那、それゃ戸塚に捕まったんですよ。"とっつかまいる"、と言いまして(笑)」「ワハハ!それゃ一本取られたな!」なんて冗談を飛ばして…あああ、妄想が過剰ですみません(笑)

  • とはいえ、険しいと言われた品濃坂のもっとも険しい、往年をほうふつとさせる箇所が環状2号に食われてしまったのは実に残念でした。(あの辺の風情が好きだったんです)

  • 図書館での調査がスゴイですね。東海道では、一日目の宿泊が早い人で「戸塚宿」あたりといいますが、大山街道(矢倉沢往還)では、荏田宿(現在の青葉区)と言われています。こちらの取材も面白いです。

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