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外人墓地の近くに、「庭に滝がある呉服屋さん」がある!?

ココがキニナル!

外人墓地の近くに、「庭に滝がある呉服屋さん」があるという噂を聞きました。本当にあるんですか?(秀ちゃんさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

庭に滝があるのは、『丁子屋』という呉服屋さん。外人墓地のある山手本通りから、本牧方面に少し降りたところにあります。

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ライター:吉澤 由美子

山手には本当に滝があった! しかも手作り?!



お店の中に入って声をかけると、奥からふんわりやさしい雰囲気の奥様が現れた。
さっそくお店の話から聞いてみる。

丁子屋は、創業が明治22年か24年。「どちらだったのかよくわからなくなってしまったんですよ」と奥様の立松静江さんが笑う。明治24年だったとしても、今年で創業120年の老舗だ。元は山手の上の方にあったが、関東大震災で店が全壊して、本牧の方に少し下がったこの場所に移転してきた。場所柄もあって、外国人のお得意さまも多かったそう。
 


雪見障子があることで、またいっそう静謐で優しく、凛とした風景に


庭にお邪魔させていただくと、奥が崖になっている。現在は『ぼく石』という庭石が配されているので自然の崖のように見えるが、その後ろには関東大震災でもビクともしなかった大きな石垣が組まれているらしい。

「滝を作ったのは主人なんですよ」と奥様がおっしゃって、3代目ご主人の立松繁さんを呼んでくださった。

滝を自分で作った?!
すごい。滝を自作するなんてスケールの大きさに茫然とする。
 


丁子屋3代目ご主人の立松繁さんと奥様の静江さん。上品で仲のよいご夫婦だ


繁さんはもともと庭に興味があり、お得意様の家を訪問するたびに庭を見せていただいたり、庭師の仕事を観察したり、京都の庭めぐりをされていた。結婚した時に、「家庭」の文字に「庭」が入っていることに気づいて、ならばとご自宅の庭造りを本格的にはじめられたそう。
 


ゆるやかに幾度も曲がりながら落ちる滝。新緑の季節は草やコケの色が一段と鮮やかだ


石垣の間からの湧水が豊富だったため、石を組んで滝を作ることを思いつき、ジグザグな流れが美しい日光の竜頭の滝にならって、繁さんが自分で石を積み上げた。実際に水を流してみないと流れかたがわからないため、石を組んでは水を流し、組み直してまた水を流しといった苦労の末に美しい流れの滝が完成。池にかかる石橋の大きな一枚石は奥さまも運ぶお手伝いをされた。「そりゃぁ重かったですよ。若かったからできたんでしょうね」と奥様は懐かしそうに笑う。

昔は崖にいくつも水が湧く場所があり、昭和30年代までは水量も豊富だったが、その後、丘の上に横浜雙葉学園ができて地面がコンクリートなどで固められてしまったせいか、水量が徐々に減っていった。それでも、地面に近い場所からは今もこんこんと水が湧き、現在はその水をポンプであげて滝を流している。ただ、こういうご時世なので節電のために止めていることもあるそうだ。
 


石橋の向こうにある丸みを帯びた石は、震災の時に落ちてしまった灯篭




メダカやカエルがいる、自然の風情を生かした庭



ジグザグに流れる滝は優雅で美しく、何重にもなって響く音も素晴らしい。

滝が流れ落ちた先の池には鯉が泳ぎ、中には50歳を越えた鯉もいるという。
他に、黒メダカやツチガエルがいる。さらに、夏になるとサワガニも姿を見せるらしい。
 


ひかえめに咲くミヤコワスレ


植えてある木々や草花は日本古来から愛されてきた茶花が多く、侘寂(わびさび)を感じる。庭全体に高低差があるせいで深山幽谷(しんざんゆうこく)に紛れ込んだ気持ちになる。そう繁さんに告げると、「どんな小さな場所でも、高低などを工夫して趣のある庭を作れますよ。それが伝統的な日本の美なんですね。緑もよくみればそれぞれ特有の濃淡や色合いの差があるので、それをどうやって組み合わせるか、庭造りは面白いですよ」と教えてくれた。なるほど、滝は無理でもそれならマンションのベランダで雰囲気のあるスペースが作れそうだ。

丁子屋さんは、お店にお客様がいらしたりなど忙しい時は別として、滝を見学したい方に庭を見せていただける。元町方面からは、代官坂下のトンネルを通って行くと道なりなのでわかりやすい。
 


「染物」「呉服」といった大きな暖簾の文字は、ご主人の繁さんが書いて染め抜いてもらったもの




まとめ



外人墓地や西洋館の立ち並ぶ山手通りを少し降りた先に、古き良き和を体現した佇まいの呉服屋さんがあって、その庭に滝が流れているなんて、なんだか不思議な夢でもみていたような気がする。しかもそれが手作りの滝だったとは!

「雑草取りが大変でねぇ。人に任せると大事な草までうっかり抜かれてしまいますし。滝の近くは特に足が滑りやすいから、上から命綱を張って草取りをします」

ご主人の繁さんのこんな言葉を思い出した。
美しい滝や庭は、心のこもった繊細な手入れに支えられているのだ。
 


ご主人が自分で積んだとは信じられないほどしっかりした石組みだ



(有)丁子屋
〒231-0842
神奈川県横浜市中区上野町3丁目120
045-621-9404
09:00~19:00休業日 日曜日


― 終わり―
 

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  • 滝もみたいけど、なによりこのご夫婦に会ってみたい。なんか、写真だけでも人の良さが伝わるし。

  • へぇ~!呉服屋に滝があるだけでもビックリなのに、ご主人が自分で作ったとは!横浜にもこんなところがあるんですね~。

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