三浦市にある江戸時代から続く県内唯一の「大漁旗」の染物店とは?
ココがキニナル!
ミニ大漁旗の手染め体験もできるという、創業180年以上の歴史を持つ神奈川県唯一大漁旗を製作する染物店「三富染物店」ってどんなお店?(トラズキノコさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
今でも江戸時代と同じ方法で染められている三富(みとみ)染物店の大漁旗。受け継がれた技は、その世界を広げていた
ライター:やまだ ひさえ
大漁旗の基礎とコレクション
今も大漁旗を注文する人は多いが、「大漁旗がどういう目的のものか勘違いしている人がいる」と、由貴さんは言う。
まず、図柄。大漁旗は、広い海の上で掲げることを目的にした旗なので、遠くからでも目立つデザインが求められる。
空間を生かし、旗の中央に大柄が図案を配することで、遠目でもどこの船か分かるように配慮されている。
中央に目立つ図柄が基本だ
細かな図柄を指定する人や、あれも入れたい、これも入れたいと多くの図柄を入れたがる人がいるが、それは本末転倒。生地本来が持つ白い線を生かし、強調した迫力ある図柄こそ大漁旗の本領を発揮する。
文字を描く位置にも決まりがある。
左に一番重要な文字を入れる
大漁旗は、左側の上下に紐をつけ、船の柱に掲げる。そのため縦書きの場合、一番左側にもっとも重要な言葉を描く。
通常の縦書きとは反対だが、海上で風になびいてもきちんと見えるようにというこだわりだ。
100年近くも大漁旗を染めてきた三富染物店だが、納品してしまうため、過去の大漁旗は店に残っていない。記録されているものを見せてもらった。
池田満寿夫デザインの大漁旗 (提供:三富染物店)
「相模湾アーバンリゾート・フェスティバル1990(通称サーフ90)」の際に版画家の池田満寿夫(いけだ・ますお)氏がデザインした大漁旗。注文も可能だ。
有名人からの依頼も多い
未来の漁師たちへの希望を託した大漁旗
大漁旗の技法を生かした飾り旗の注文も多い。
制作中の端午の節句用の飾り旗
男の子らしい図柄が好まれる
女の子のための桃の節句バージョンもある
開店祝いも人気が高い
ユニークな使い方をする人もいる
目的は異なっても、贈る人の思いは同じだ。
大漁、航海安全、健やかな成長、商売繁盛、幸福。その思いを形にしたのが三富染物店の大漁旗であり、飾り旗だ。