ベイスターズを陰で支えるブルペン捕手とは? 深澤季生さんの仕事に迫る!
ココがキニナル!
横浜DeNAベイスターズにはどんなスタッフがいる?どのようにしてチームの力になっているの?裏方さんの仕事がキニナル(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
投手の球を受けるブルペン捕手の深澤季生(ふかざわ・としお)さん。用具担当補佐と兼務(今シーズンよりファーム用具担当兼ブルペン捕手)し、試合開始の7時間前から練習をサポートしフル回転でチームを支える
ライター:山口 愛愛
ミットを鳴らす一球入魂のキャッチ
業務をこなしていくだけで精一杯になりそうだが、深澤さんは1つひとつの仕事と丁寧に向き合っていた。
キャッチするときの快音について聞いてみると「僕が捕るとパーンって鳴っちゃう(笑)」と悪戯っぽく笑ったが、「ピッチャーいわく、やっぱり音がするとテンションが上がってくるんですよね。ミットもバットといっしょで芯があるので、捕る場所によって音が違うんです。芯で捕って、常に1球1球響かせるように意識しています。そこは絶対に手を抜かない」と誇らしげだ。
音に気を付けながらキャンプ中は続けて200球以上捕ることも
投手との接し方も相手の性格によって変えているという。話かけて気持ちをほぐすこともあるが、「特に先発ピッチャーは緊張感が違うので気を使い、必要最低限の会話にとどめて、集中している気持ちを崩さないようにしています」。元投手ならではの心配りがある。
ふだんから球を受けているので「その日の投手の調子はもちろんわかる」と深澤さん。
それでも「試合前はネガティブなことは絶対に言わない。悪いとは言わずに、違う言い方をしたり、いつもの状態と違っていても、ぜんぜん大丈夫だよ! と送り出している」そうだ。
ただ選手から「調子どうですか?」と聞かれた時は捕った感じをそのまま正直に話している。
「ボールの質がいつもとこう違うよ、などといえるように、ふだんから注意深く見ています。コーチがいるので僕からはアドバイスのようなことは言えませんが、投手に聞かれたことに対しこう答えました、とコーチに報告をしています」という。投手コーチから、ブルペンでの調子を問われることもあり、観察力やコーチ陣とのコミュニケーションも不可欠な仕事だ。
コーチ、裏方と情報共有しながら投手のレベルアップを図る
「いかに選手のためにやりやすい環境を作るかということを常に考えてやっています。選手ファーストで!」と選手への気配りを忘れない。チームサポーターとして、選手の手となり足となり接しているが、選手もスタッフに気遣いを見せてくれるという。
「筒香嘉智(つつごう・よしとも)選手が僕らに気を配ってくれるので、良い風習としてまわりも気を使ってくれるんです。筒香選手から裏方にグローブをプレゼントしていただいたときはビックリしました。本当に嬉しいというか恐縮です」とありがたみを噛みしめる。
活躍した選手がTシャツなどを裏方に配ってくれることがあり、昨年あたりからサポートリーダーの吉見さんを中心にチームサポーターからも選手にプレゼントを渡す風習が始まったそうだ。
「月間MVPを取った選手などにチームサポーターのみんなからお返しするようにしているんです」。
どんな物を渡しているんですか? と聞いてみたが、「それは秘密・・・。ふだん使うようなもので残るものをあげている」とのこと。
選手と裏方だけが密かに知っている絆があり、うらやましくなるような関係性を築いていた。
選手と話しやすい環境にあるという
そんな風習が自然に芽生える同志だからこそ、選手に活躍してもらいたい、勝ちたいという思いは人一倍だ。
「チームが強くなるために、裏方からまずまとまろうという思いがあり、もっと良い集団になっていこうと。リーダーもできて、そこから少しずつ意識が変わってきた」とチームサポーターの変化を実感している。裏方と選手が一丸となり手にした勝利は何にも代えがたいものだ。
「試合に勝ってみんなで握手するときが一番嬉しい。勝つとみんなハッピーで良い顔しているんで」と嬉しそうに語る。
練習後に吉見さんとがっちり握手。強いチームづくりは裏方の結束から
深澤さんが仕事をする上で意識しているのは、「裏方なので必要とされる人間でいること、人間力を上げること。社会に出ても通用する人間でいないといけない」と、裏方としても、いち社会人としても成長することを掲げて取り組んでいる。
では、今後の目標は? と伺うと「やっぱりみんなでビールかけをしたい。みんなの喜んでいる顔がみたい! 日本一に向けて選手を全力でサポートしていきます。それに尽きます」と、にっこり。優勝を分かち合うために今日も精一杯選手を支える。
「負けると沈むけど、勝つとみんなテンション高くて気持ち良い!」
何度も口にする「みんな」とは、もちろんコーチや裏方をふくめた「みんな」のことだ。選手の力だけでは優勝はできない。裏方の支えがあってこそ。
深澤さんのミットが鳴れば鳴るほど優勝に近付くことだろう。どっしりとした分厚い壁がとても頼もしく見えた。
取材を終えて
苦労を聞けば、「ないです。勝ってくれたらぜんぶ吹き飛びます」と返す。
チームに貢献していることを聞けば、「それは僕が決めることではなく、貢献できたとかは自分からいうものではないので」と即答し、精神から裏方に徹している姿勢が感じられた。
練習サポートの裏方は野球経験者ばかりだ。現役時代、「もっと裏方に感謝すべきだった。そしたら、もっとがんばれたんじゃないかな」との本音も深澤さんは覗かせた。
「みんな」の代表として今も表舞台に立っている選手は、裏方の思いと感謝の気持ちを力に変え、全力で戦ってほしいと改めて感じた。
-終わり-
chrisさん
2019年01月30日 12時32分
めちゃくちゃいい記事ですね!! こういう記事、続けてください。ただ1点だけ、「壁」という表現は蔑視も入っていると思うので(一応野球経験者)、止めたほうがいいかなと思います。仮に深澤さん本人もその言葉を使っていたとしても、それは謙遜ですよ。へりくだってるんです。