横浜のアキバ? 石川町の「エジソンプラザ」ってどんなところ?
ココがキニナル!
石川町駅のエジソンプラザという秋葉原のような電気部品を扱っている店が気になります/千石電商や共立電子などの有名店は撤退したようですが営業を続けている店はあるの?(イルカさん、えるさん)
はまれぽ調査結果!
最大で約10店舗が軒を連ねる一大電気街だったが、千石電商や共立電子などは90年代に撤退。現在営業しているのは3店舗。
ライター:永田 ミナミ
年末年始以外は毎日開いている、電機街のお母さん的存在「シンコー電機」
相模電子で思わず、筆者が前から欲しかったサブウーファーを購入した後、最後となるシンコー電機に向かった。
年末年始をのぞいて年中無休。年に360日営業しているというシンコー電機の店主・渡辺さん
シンコー電機は、南区に電機店を開業していたが、エジソンプラザができるということで移転してきた。検察庁で働いていたご主人の機械好きが高じ、仕事を辞めて電機店を始めたというから、相当の機械好きだったことは想像に難くない。
6年前にご主人が他界されてからは1人でお店を続けている渡辺さん。「毎日お店に出るのが楽しくて、用事があっても午後には戻ってきて店を開けちゃう」というからいつ来ても安心だ。
常連客とは型番だけで「ああ、それならこっち」とやりとりする。
すべてを把握しているプロフェッショナルでありながら「部品はわかるけど、何に使うのかはあんまり知らないの」と微笑むチャーミングな一面も。電機街のお母さんといった安心感もある。
ちなみに、来店していた常連の方で、第二次世界大戦前の真空管などのパーツを集め、自ら設計してアンプやスピーカーを作っているという最上級のマニアの方は「インターネットでここを知ったのは数ヶ月前だが、ここに来れば何でもそろし、掘り出し物も多い」という話だった。
「このへんはマニアにはたまらない真空管だよ」とのこと
そして、最新作の真空管アンプの写真を見せてもらっていると、「こんなのがあるわよ」と渡辺さんが探し出してきてくださったのは、何と「エジソンプラザ・ジャーナル」というエジソンプラザ発行の新聞だった。
1980年3月20日発行の第2号。「100年前のオーディオ」というエジソンの紹介記事も
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「エジ・プラを『エジ・ぶら』しよう」など小気味好い見出しが並ぶ
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「ビデオコーナーを新設」などの記事から、電子部品だけではなく、オーディオを中心とした家電、マイコン(マイクロ・コンピュータ)などの家電量販店、無線機の専門店もあったことがわかる。ビデオは15万円からというのもしびれる価格だが、ステレオラジカセが2万5000円より。
「エジソンプラザ見てある記」にはアップル社の伝説のマイコン「Apple II」 も映っていた
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大盛況のエジソンプラザ館内
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最終面には3階の出店募集とJR石川町駅前再開発の記事もあった
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渡辺さん、貴重な資料をありがとうございました
「お客さんは、やっぱり時間が自由に使えるようになった、年輩の方が多いわね。古いトランジスタを探して、千葉や埼玉からみえるお客さんもいるわよ」と話しているところに若い方が現れたので、声をかけてみた。
音楽関係の仕事をしているという福島さん
「日本のパーツであれば秋葉原に行かなくてもここに来れば古いものでもだいたいそろうし、あとはお母さんが元気でやってるか、それを見にね」という福島さんは月に1~2度、楽器や機材を修理するための部品を買いにくるそう。訪れたら、たいてい3店とも覗いていくのだという。
渡辺さんによると、タック電子販売は比較的新しい部品、シンコー電機は古い部品、相模電子はその両方とオーディオ関係、という特色がそれぞれあり、「この電機街に来れば、だいたいのものは手に入るんじゃないかしら」とのことだった。
渡辺さんはコードの束を次々に差し替え、巧みに電飾を操っていた
取材を終えて
エジソンプラザ・ジャーナルを拡大してみた方はお気づきかもしれないが、このジャーナルが発行された当時、時代は完全にアマチュア無線ブーム、さらに1976(昭和51)年に発売されたNECのTK-80に代表されるマイコンブームだった。
記事のそこかしこに踊る、「ハム(アマチュア無線家のこと)」の文字に無線機やアマチュア無線技師養成課程講習会の広告などなど。1階に店舗を構えていた「トヨムラ」がハム専門店で、エジソンプラザ以外に名古屋から宇都宮まで約10店舗を経営していたほど、アマチュア無線は人気だったのである。
「オー(オーディオ)マイ(マイコン)ハム(アマチュア無線)」は時代そのものだったのだ
だからこそ、ジャーナルにあるように電機街に は「キミたち”エレキっ子”は「エジ・プラ」をぶらぶらしようじゃないか。ナニカを、きっとつかんでくるぜ! 浜のアキバ「エジ・プラ」を”エジぶら”しよう」と呼びかけるほどの勢いと魅力があった。
しかし、時代は移り変わった。
戦後間もなく電機街が形成された秋葉原は、ラジオ会館に電気部品とカードやフィギュアの店が混在し、秋葉原ラジオストアーが2013(平成25)年11月末で閉館することが発表されたことに象徴されるように、今はすっかり姿を変え、そして「世界のアキバ」となった。
しかし、「浜のアキバ」に残ったこの3店舗は、現代の石川町に残ったからこそ需要と価値が高まったともいえるだろう。その証拠に、専門業者やマニア垂涎のスポットとして、足繁く通う人は絶えることがない。
懐かしい昔のオーディオで懐かしいあの曲を聴くことが、ここに来ればできるかもしれない。
「物より情報の時代」というトヨムラ社長の時代を先取りした言葉も興味深い
―終わり―
エジソンプラザ
住所/横浜市中区松影町1-3-7
タック電子販売
電話/045-651-0201
相模電子
電話/045-662-4767
※現在は休業中
シンコー電機
電話/045-662-4791
参考文献
平澤正夫『消えゆく野生と自然:動物たちに何が起きているか』(三一書房)1985
神奈川新聞1979年7月15日朝刊
JS1FMVさん
2020年11月22日 23時50分
林さん懐かしい。この人のお仲間が秋葉原のジャンクを供給していた。もとは千石にあった新東電気に集った人たち。
tiida0227さん
2020年11月21日 00時11分
蒲田にもエレクトロプラザっていうのがあって、小学生の頃毎週末通ってたなぁ。ラジオ音響技能検定試験を申し込んだのに移動教室が重なって受けられなくなったりして、、とにかく部品を見てるだけでワクワクしてた。オシロスコープのジャンクや、MZ2000でスターウォーズ戦闘機をエミュレートしてみたり、8インチフロッピーとか、とにかく夢いっぱいだったわぁ。
HAL90000さん
2015年10月18日 22時04分
先日どうしてもボリュームが必要になって買いにいったら、残り2店舗だけになってました・・・