北鎌倉の「14年待ち」の天使のパンは本当に届くのか?
ココがキニナル!
今注文すると14年待ちという、北鎌倉の「天使のパン・ケーキ」のパン・ケーキの味と、どんな人が作っているかがキニナル(ウル虎の冬さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
落車事故で脳と左半身に障害を抱えた元競輪選手が1日に数個ずつ、注文者のために心を込めて作っているので、現在はおよそ14年待ちで届く
ライター:紀あさ
天使のパンとケーキの味
いよいよパンとケーキを食べてみよう。6年前に筆者が頼んでいたのはパンとチーズケーキだった。
食パン(1350円)と、米粉のチーズケーキ(2700円)
まずチーズケーキの箱をあけてみた。
こんがり焼けたチーズケーキ
一口食べると、ふわっとしたケーキが口の中でとても優しい音をたてて溶けていく。耳に聞こえるような音ではないのだけれど、天使のささやきってこんなふうにきっと聞こえるんだろうな・・・。
ふわふわのチーズケーキ
「常温で味わった後、冷やすとまたおいしいですよ。冷やせば2週間くらい持ちます」とのアドバイスだったのでその後冷やしてみた。冷やすと少しきゅっと締まるが、硬くなるわけではなく、優しく儚い感じは変わらない。
それから食パン。
とてもしっかりした存在の皮に、パン切りナイフをいれる
持ってみると、この触感の良さはなんだろう。常温のパンなのに、温かい何かが伝わるような感覚に包まれる。
普通のパンなのだけれど
しばらく手で触っていたいような感じがした。食べる前に触って味わうのもおススメしたい。少しトーストすると、外がカリっと、中がふわっとなる。食べてみたパンは、ケーキとは違って、ささやくのではなく包み込んでくれるような素朴な優しさ。なんだろう。ああ・・・これはきっと父の愛だ。
退院後レース復帰を目指し続けて、4年前のロンドンのパラリンピックでは代表候補にもなったという泉己さんが、障害者レースからも引退したのは、オリンピック開幕と同時に誕生した龍聖くんを腕に抱いたとき。
自然と涙があふれ「これからの人生はりゅうちゃんのために生きよう」そう決めてパン作りに専念するようになった。いろんなやさしさがパンとケーキから体の中に伝わって溶けていく。
ふたりのもとには泉己さんのパンを食べた人たちからの手紙が多く寄せられる。
返事が追いつかないほどだが、ふたりですべて読んでいる
サンタさんや天使に宛てるような心の内を綴る手紙や、「涙が自然と出ていた」、「前に進む勇気をもらった」、「心がすごく癒された」などのパンへの感想のほか、不思議と多いのが、「大切な日に届いた」、「パンが届いて喧嘩していた家族と一緒に食卓を囲むことができた」という手紙だという。届く日の指定ができず何年後に届くとも分からないパンなのに、だ。
「家族をつなぐパンになったらいいな。みんなに幸せになってもらいたい」
かつて泉己さんの夢はこうだった。「30才の誕生日までに煙突のある白い家をたてて、好きな人と結婚して、競輪選手として活躍し、50才くらいで引退したらお菓子を作りたい」
引退の時期は早かったが、結果的に夢は全部叶っていった。
最後に、今後の夢を聞くと・・・
「今まで通り変わらず、子どもと一緒にいろんなことができたらいいな」
取材を終えて
「今まで通り変わらず」といえるそんな時間を抱えていられることがどれほど大切だろう。
リビングのソファーで眠るネコの「にゃお」(龍聖くん命名)
いっぱいの子どものおもちゃ
家の窓から見える緑
家のすぐ裏の森の坂を上れば
海が見える
こんな時間に暮らす泉己さんの手が作るパン。
パンやケーキは14年待つが、コーヒーやジャムが届くのは早く、泉己さんが手網を使って1袋分(200グラム)だけを30分かけて焙煎するフェアトレードのコーヒーは、今のところすぐに発送できているそう。
泉己さんが焙煎したコーヒー
またパンを頼んで、コーヒーを飲みながら14年先を待ちたいな。
新緑や花を思わせるさわやかな透明感のある味だった
―終わり―
北鎌倉 天使のパン・ケーキGateau d'ange
住所/神奈川県鎌倉市高野38-11
電話/0467-43-4616
HP/http://gateaudange.com/
※情報は取材時のものです
sho-shoさん
2016年10月27日 12時11分
心がこもっておいしそうですね。
coeさん
2016年10月27日 00時05分
一日に数個しか作れないパンが原価込みでこの値段なら、ぼったくりどころか利益分は最低賃金法に定める給与にいくかもあやしいほどなのでは‥‥。 全身麻痺から、今まで通りでいたいと言えるまでに、どれほどの道のりがあったのだろうかと思いました。奥さんも。 パンとてもおいしそう!
meluさん
2016年10月26日 18時38分
以前、TVでご夫婦とお店のことを知りました。とても私は勇気をもらったのを覚えています。何故なら、私の息子も16歳の頃バイク事故で同じように「高次脳機能障害」と告げられ医師には普通に意思の粗通を取れて話せるようになれば良いですね!と言われました。お店をOpenする迄に沢山の方の協力や愛情があっての道程だったんですよね。同じ障がいを持つ方が家庭を持ち夢を持ち仕事が出来てる事・・・全てが私にも子供にも同じく障がい持つ方に勇気や希望を与えて下さってます!応援してます!商品が届くのも楽しみにして待っています。