ホテルニューグランドの社名に「、」が入る理由とは?
ココがキニナル!
横浜で一番伝統と格式の高いホテルニューグランドの社名は「ホテル、ニューグランド」。「、」が邪魔に感じるのですが真相を確認願いたい。また、正式社名から「、」を取る可能性は?(よこはまいちばんさん)
はまれぽ調査結果!
社名に「、」がついている謎は深まるばかり。だが「、」の使い分けはされている。また、社名から「、」を外す予定はない。いっぽう、編集部は執念の捜索の末、数少ない「、」つきの場所を発見!
ライター:結城靖博
「、」についてホテル広報に聞き込み調査
さて、そんな横浜が誇る「ホテルニューグランド」だが、今回の取材のテーマはあくまで「、」だ。
確かに同ホテルの公式ホームページの「企業概要」のページを見ても、商号欄に「株式会社ホテル、ニューグランド」とある。
たしかに「、」がある(ホテルニューグランドのホームページより)
ホテルにこの件について直接問い合わせてみたところ、広報担当の女性、横山ひとみさんから丁寧な回答をいただいた。
それによると、そもそもの「、」の起こりは、1927(昭和2)年の開業時の登記登録に遡る。ただ、そのときなぜ「、」をつけたのかは、今となっては不明だという。
とはいえ、「、」の使い分けは現在、社内的に明確に整理されているそうだ。そのルールは、「『株式会社』をつけるときは『、』を入れ、そうでない場合は入れない」。
なお、「よこはまいちばん」さんがキニナル「商号から『、』を取る可能性」については、そのように登記登録されている以上、いまさら「、」を外す予定はないとのこと。
ところで、一般の人が目に触れることのできる場所で「、」がついているところはないだろうかと尋ねてみた。すると、本館正面玄関横のプレートにその可能性があるのではないかとのことだったので、さっそく後日、そこにある「、」を激写すべく、ホテルニューグランドを訪ねることにした。
「、」を求めて思いがけない大捜索
横山さんによれば、そのプレートは正面玄関の向かって右側にあるとのこと。
どこだどこだ?
むむっ、近づいてみると確かに四角いプレートが
だがしかし! そこには「、」がなかった
それは、「横浜市認定歴史的建造物」を示すプレートだった。そしてこれ以外には、正面玄関周辺をいくら探しても、それらしき表示板は見当たらない。
このまま終わっては、さすがに残念だ。そこで、突然のことで恐縮ではあったが、ホテルの玄関前から広報担当の横山さんに電話をしてみた。すると幸いにも在室中で、事情を話すと、わざわざ仕事の手を止めて玄関まで来てくれた。
横山さんを待つ間、本館エントランスからエレベーター前の豪華な装飾を仰ぎ見る。
さすがホテルニューグランド、壮観である
やがて現れた横山さんに、まずは「『、』の一つでお手を煩わせて恐縮です」と平伏低頭。すると「いえいえ、その点に着目していただくなんて、よく見てくださっているんだなと感心しました」と、さすがおもてなしのプロ、そつのない言葉が返ってきた。
「確かに私が言っていたのはこのプレートのことですが、そうですね、『、』はなかったですね」そう言って恐縮がる横山さんは、その後ホテルの内外、考えられる限りの場所を巡って「、」探しに筆者を導いてくれた。
だが、「、」はなかなか見つからない。
館内に掲げられた「地域活性化に役立つ近代化産業遺産認定証」にも
館内受付カウンターに置かれたプレートにも
本館玄関前の通り沿いに立つ案内板にも
新館玄関前のホテル名標記板にも「、」はない
ホテルの裏手に回り、こんなプレートも見てみたが・・・
「おや、ここには『株式会社』がついているのに『、』がないぞ。かわりに『ホテル』と『ニューグランド』の間が少しだけあいている」などと思いつつ、ホテル裏手の水町(みずまち)通りをもう少し進んでいく。すると・・・
ジャーン、ついに発見!
それは、ホテルから1ブロック離れた場所に建つビルの袖看板だった。
このビルはホテルニューグランドが経営する賃貸ビル「グランドアネックス水町」。その3・4階に同ホテルの事務所が入っていた。
赤丸がグランドアネックスの場所(© OpenStreetMap contributors)
さらにこのビルの駐車場に近づいてみると・・・
おおっ、ここにもまた「、」があった!
そして駐車場の中を覗くと・・・
もはや堂々と「、」が主張している
ここは、ホテルニューグランドの第3駐車場だった。
「いや~、『、』がみつかってほんっとに良かったですね!」
執念の捜索の末、一つの「おもてなしミッション」を成し遂げた横山さんも、一安心のご様子。
えも言われぬ達成感を胸に横山さんと笑顔で別れた筆者だったが、「良かった良かった」とつぶやきながらの帰り道、ふと思った。
「え~と、『、』があると何が良かったんだっけ???」
取材を終えて
ここから先はまったくの筆者の憶測だが、もしかしたら固有名詞の前に「ホテル」をつけるのは、戦後開業した「ホテルオークラ」や「ホテルニューオータニ」のように今でこそ特殊なことではないが、昭和初頭の当時としては、かなり大胆な試みだったのかもしれない。その感覚は、「大学」のあとに「東京」をつけて「首都大学東京」と名乗ったかのごとく(ちなみに「首都大学東京」は、来年度から「東京都立大学」に改称される)。
だがいっぽうで、一般にまだそれほど英語になじみがなかった当時のこと、それでは読みづらいのではという懸念もあり、そこで間に「、」をつけたのではないか?
このたった一つの「、」を中心に、震災からの復興を願うハマっ子ならではの「進取の気性」と、日本人、そしてホテルマンらしい「気配り」の精神、その両面が垣間見えるような気がする・・・なんて、少々うがった見方に過ぎるだろうか。
―終わり―
取材協力
ホテルニューグランド
住所/横浜市中区山下町10
電話/045-681-1841
https://www.hotel-newgrand.co.jp/
横浜市中央図書館
住所/横浜市西区老松町1
電話/045-262-0050
開館時間/火~金9:30~20:30、その他9:30~17:00
参考資料
『横浜150年の歴史と現在』横浜開港資料館・読売新聞東京本社横浜支局編、明石書店発行(2010年5月刊)
ホテルニューグランド公式ウエブサイト「ヒストリー」ページ
https://www.hotel-newgrand.co.jp/history/
やむさん
2019年11月14日 09時48分
平成14年に商号規則が改正されるまで、法人登記の際にはアルファベットや「・」が使えなかったと聞いたことがあります。区切りを明確にしたかったが登記に使える門司の都合上「、」で代用したことはありそうですね。
ペコロさん
2019年11月08日 13時58分
今は普通になった「・」(ナカグロ)がこの時代には使われてなくて、「、」だったのかな、と。
ホトリコさん
2019年11月08日 12時23分
多分これからもドラマでしか中を見れないだろうけど、確かに何度見ても惚れ惚れします。