廃船の危機！？

「ミナト横浜」の象徴として、その美しい姿で訪れる人を魅了する2つの大きな船「日本郵船氷川丸（ひかわまる）」と「帆船日本丸（にっぽんまる）」が廃船の危機にある？
　

　

横浜のシンボルの一つが消える？
　

横浜市民であれば、だれもがキニナルであろうこの投稿。早速事実を確認しなければ！　まずは氷川丸について、日本郵船歴史博物館の担当者に話を聞いた。
　

名建築シリーズでも取り上げた日本郵船歴史博物館
　

担当者は「なぜそういうお話になっているのか分かりません」と困惑した様子。

山下公園から子どもと中華街に向い途中という30代の主婦は「インターネットのニュースで見ました。本当になくなってしまうんですか？」と驚いた表情。
同じく公園60代男性は「ここ（山下公園）から船がなくなると、横浜らしさがなくなっちゃうよね」と話してくれた。

1930（昭和5）年に竣工、1960（昭和35）年に引退した氷川丸。翌1961（昭和36）年にはユースホステルに改造されるなど、大幅な修繕を実施。直近では2000（平成12）年に大規模修繕を行った。

現在も年1回、係留船として国土交通省の定期検査を受けている。2014（平成26）年秋の検査でも国交省から修繕に関する指導などは一切なく、係留船舶として適当であるという証明がされている。

今後については、当面の間、大規模修繕の予定も、もちろん廃船もまったく視野にないという。
　

さまざまな技術で修繕されている氷川丸
　

また、文化財などへの指定については、まず重要物件の選定・調査は文部科学省が文化審議会に諮問（しもん）する。諮問を受けた審議会が「指定に適当」との回答をした後で、所有者が許諾した場合に指定されるものなので「氷川丸側から『重要文化財に指定してほしい』ということは制度上できません」とのことだった。

担当者は「すぐに修繕や廃船、文化財指定といったことはありませんが、新聞報道で氷川丸・日本丸に興味関心を持っていただけたのでは」と話していた。

では日本丸はどうだろう。

　

休館日にもかかわらず多くの人が写真を撮るなどしていた
　

埼玉県から観光で訪れたという20代の男性4人組は報道を全く知らないとのことで、廃船の可能性がある報道があった旨を伝えると「そうなんですか！？　こんなに海や景色とマッチしているのにもったいない」との意見が。

横浜市内在住という60代の女性2人組は報道を知っていたようで「ここにあって当たり前のものがなくなるとさみしい。（廃船するとしたら）横浜の損失」と話してくれた。

しかし、日本丸を運営する帆船日本丸記念財団・JTBコーポレートセールス共同事業体の担当者は「点検などは決められた制度に基づいて管理運営しておりますし、われわれも報道を見て驚いています」と、氷川丸と同様の反応だ。

さらに、横浜市の見解を横浜市港湾局みなと賑わい振興部みなと賑わい振興課に聞いた。
　

産業貿易センタービル内にある横浜市港湾局
　

日本丸竣工80年を迎えた2010（平成22）年に有識者からなる保存検討委員会を設立し、日本丸と氷川丸のあり方を検討し、建造100年を目指すという姿勢の横浜市も同様。

「廃船という話は聞いていない。現在の活用を継続しながら氷川丸・日本丸の建造100年を目指すという取り組みに変わりない」とし、補修についても「必要に応じて行っている」と話した。

取材を終えて

突然降ってわいたような「廃船」報道だが、現状では当面心配なさそうだ。だからと言って不測の事態で突然、維持管理や運営ができなくなるということは起こらないとも限らない。

日本郵船の担当者の言葉を借りるようだが、この記事を読んで両船に「興味関心を持った」という方がいらっしゃれば、見たことがある方もない方も一度足を運んでみるのもいいかもしれない。


―終わり―

日本郵船氷川丸
所在地／横浜市中区山下町山下公園地先

帆船日本丸
所在地／横浜市西区みなとみらい2-1-1