台風の塩害で「横浜三溪園」の紅葉がピンチ? 秋まで尾を引く災害の爪痕とは
ココがキニナル!
台風24号の「塩害」による植物への影響が全国で問題に。横浜の名所「三溪園」の紅葉は大丈夫?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
過去20年で例がないほどの被害を受けた横浜三溪園。塩害の影響は大きく、風で折れてしまった木も。被害の全容はこれから明らかになるが、持ちこたえている木々も多い
ライター:はまれぽ編集部
秋も深まり紅葉のシーズンがキニナり始めるこの頃だが、今年は全国的に紅葉が楽しめないかも? と囁かれている。
思い返せば、2018(平成30)年の夏の終わりは、強烈な台風が次々と襲来するという大混乱の日々だった。
特に勢力の大きな台風24号の襲来は、関東地方でもJR各線が計画運休を行うなど、過去にない規模の災害として記憶に新しい。この台風による「塩害」が横浜市内にも紅葉のピンチを招いているのだ。
すでに枯れている、桜木町駅前のイチョウ(紅葉シーズンは11月中旬以降)
塩害とは、吹き上げられた海からの塩水が建物や電気施設、植物に付着してさまざまな悪影響が生じること。金属が錆びたり電線がショートするなどの問題に加え、2018年の台風がもたらしたのが、植物の葉が枯れ落ちるという被害だ。
木々に塩が付着することで、紅葉しないまま広葉樹の葉が枯れ、茶色く変色してしまう。
塩害を受けた葉は早々に落ちてしまう(桜木町駅前)
特に関東地方の南部は影響が大きく、桜木町以外には日本大通や横浜公園でも木々に被害が見られている。はまれぽ調査エリア内では鎌倉の鶴岡八幡宮のイチョウが枯れているのも心配だ。
被害を受けた各地の中でも今回は、はまれぽの「横浜で紅葉を感じるならどこ?」という読者アンケートで一位に輝いた、中区本牧の名勝「横浜三溪園」の被害状況を調査してみた。
過去20年で最悪の被害
17万5000平方メートルを誇る日本庭園・三溪園。紅葉はまだ始まっていない
三溪園は、横浜の実業家・原三溪(はら・さんけい)が1906(明治39)年に作り上げた日本庭園。敷地内には全国から集められた貴重な歴史的建造物が立ち並び、2007(平成19)年に国の名勝に指定されている。イチョウやモミジなどが色づく紅葉シーズンには、春の桜と並び多くの人でにぎわっている。
中区本牧という海に近い立地上、今回の台風の被害も大きかった。園内には塩水を浴びた影響か、秋を前に葉が枯れたり茶色く変色してしまった木々が多く見られた。
塩害で変色したモミジの葉
色が抜けてしまった葉が目立つ
三溪園管理事務所によればこうした塩害による影響に加え、台風がもたらした直接的な被害も大きかったそうだ。担当者は、「大きな枝が折れたり、倒木などの被害があちこちで起きました。モミジなどが変色している場所も多く、紅葉シーズンに向けて今後の見通しを心配しています」と話す。
折れた枝の葉が赤く色づいている箇所も
過去20年で、台風によるここまで顕著な被害が出たのは初めてだという。
風で折れてしまった枝
園内には生々しい傷跡が目立つ木もあった
常緑樹のマツは潮風にも強いはずだが・・・
やはり風で折れてしまった枝があちこちにあった
今後の紅葉シーズンに影響はあるのだろうか。
「モミジは木々についた葉が色づくだけではなく、紅葉した葉が散って地面に敷き積もるのも見どころ。葉が今の時期に落ちてしまうと、影響があるかもしれません」と担当者。塩害などで葉の量が減ると、やはり見ごたえを損なうことになってしまいそうだ。
秋を待たずに散ってしまうモミジ
真っ赤なモミジが小川を流れる情景、今年は見られる?
とはいえ、大きな被害を受けたのは、園南側の木々や開けた場所の植物など、風の影響が強かった場所が中心。青々とした葉がたくさん残っているモミジもあったので、紅葉が全く楽しめないということはない。
重要文化財の聴秋閣(ちょうしゅうかく)では青々としたモミジが色づく季節を待つ
一方、モミジよりも少し早く、例年は11月中旬~下旬から見ごろを迎えて黄色くなり始めるイチョウの被害はどうだろうか。三溪園には大きなイチョウの木が2本あり、こちらも毎年秋の園内を鮮やかに彩っている。
こちらのイチョウに関しては「南側が変色するなど若干被害がありましたが、園内の他の場所にくらべると被害は大きくなく、青い葉も残っています」とのことで、どうやら比較的軽い影響で済みそう。
「旧天瑞寺寿塔覆堂(きゅうてんずいじじゅとうおおいどう)」(重要文化財)の裏手にある
ダメージを負っている箇所もあるが・・・
葉の大部分は青々としている!
主役が健在で、園としても一安心のようだ。
被害の全容はこれから
台風の残した直接の爪痕被害は大きく、園内にはあちこちにその痕跡が残されている。
被害は紅葉する木々だけではない
さらに、塩害を受けて変色しながらも持ちこたえている葉が、これから残ってくれるか、まだわからない面もある。
担当者は「いまはボリュームがあるように見えますが、ダメージは受けている。10月の間に茶色い葉がどれくらい散ってしまうか、様子を見ていきます」と話し、まだまだ油断できない状況。
塩害の全容はこれから明らかになっていく(旧燈明寺三重塔<きゅうとうみょうじさんじゅうとう>)
それでも、三溪園の紅葉が全滅ということはなさそう。被害の軽かった木々は、きっと今年も色づく姿を見せてくれるはず!
取材を終えて
三溪園では紅葉のシーズンに合わせて2018年11月17日から12月9日まで、国の重要文化財である楼閣建築「聴秋閣」、茶室「春草廬(しゅんそうろ)」の古建築を公開。聴秋閣奥の渓谷遊歩道から絶景を眺めることができるのは、この時期だけの楽しみだ。
塩害の影響は決して軽いものではなさそうだが、園内には被害を受けながらも辛抱強く秋を待つ木々が多く残っている。今年の紅葉は、それを確かめ応援するという意味でも一見の価値がありそうだ。
紅葉シーズンを迎える三溪園を応援したい!(重要文化財・臨春閣<りんしゅんかく>)
ー終わりー
- 前へ
- 1
- 次へ
ナチュラルマンさん
2018年10月19日 06時19分
塩害だけでなく、猛暑も拍車をかけて葉を枯らしました。そもそも三渓園のように海辺に近い場所にカエデやケヤキは自生しません。だからこそ、被害が甚大になったと考えられます。あ、もしかしたら三渓園、桜の花が咲いたかな?各地で秋なのに桜の花が咲いたというニュースが流れていますので…
ホトリコさん
2018年10月18日 12時25分
毎年アパートの回りに繁茂するヨウシュヤマゴボウやオシロイバナにも塩害を!大屋さんが呼んだと思われる業者さんがかなりご年配なのに、切っても刈ってもボーボー生えるから、特に真夏日は見てられません。
みぃ3さん
2018年10月18日 02時51分
ムバークさんのコメントを読み調べてみました。横浜市発行の「濱ともカード」提示で700円のところ無料だったのが有料になりましたが200円のようです。/広い敷地の貴重な木々や建築物の維持管理はとても大変なことで、ボランティアさんもガイドを含め200名以上?大勢の方達が活動されているのを知ってから思いが変わりました。