元町にいる黄色い「MOTOMACHI」と書かれたポロシャツを着たお兄さんたちの正体は?
ココがキニナル!
元町で黄色のポロシャツを着た若いお兄さんたちが荷物を一生懸命運んでいるのですが、元町は他の運送会社を使っていないの?黄色のMOTOMACHIと書いたトラックもキニナル(黒くてもシロッコさん)
はまれぽ調査結果!
黄色いシャツのお兄さんたちは、元町独自の「元町共同配送システム」のスタッフ。システム導入の背景には地球環境や元町への熱い思いがあった!
ライター:コハル
環境を守る「社会実験」から始まった取り組み
山田さんによると、この配送システムは、元々は国が実施する環境改善事業の「社会実験」として発案されたのだそうだ。
今私たちが暮らしている街には、さまざまな配送業者のスタッフや車が行き来している。このすべての配送業者の車が二酸化炭素を排出するとなると、地球環境へ確実にダメージを与えていることだろう。
車の排気ガスは大きな環境問題
また、配送業者が路上に車を駐車することも多いが、これによって
・街の景観が損なわれる
・通行の妨げになる
・車の影から急に人が飛び出すなどして、事故発生率が上がる
などのデメリットが生じるのだ。
街の配送業者を一つに集約して配送車の台数を減らすことができれば、二酸化炭素排出量を削減し、これらのデメリットも払拭できるのではないか。
この考えをベースにした共同配送システムの導入実験を、1999(平成11)年に国からの要請を受けて実施することになったのが横浜市。そして実験エリアとして抜擢されたのが元町であり、実験の運営を任されたのが元町SS会なのだ。
実験時の様子(右)と実験期間中の物流車両数削減実績(元町SS会ホームページより)
この実験の開始にあたって、元町SS会では黄色いシャツのユニフォームと、二酸化炭素排出量の少ない3台のエコトラックを用意。街を走るのはこの3台のトラックのみで、街の3箇所にトラック専用の駐車スペースを設置した。
専用の駐車スペースに置かれた
黄色いトラック
これによって「路上に配送業者のトラックがとまっていて邪魔!」という事態がほとんどなくなった。確かに今日も元町を歩いてきたが、配送業者の車は一台もなかった。あの元町の美しい街並みが維持できているのは、この共同配送システムのおかげかもしれない。
実験終了後も、システムの継続を決意
この社会実験は1999(平成11)年度から2001(平成13)年度までの3年度継続された。実験自体はそれなりの好感触を残しながら無事終了したが、「これをただの実験で終わらせるのではなく、このまま自分たちの手で継続させてみよう!」と、元町SS会がシステムの運営を自分たちの手で継続することにしたのだ。
しかし、ここからが元町SS会の試練の道のスタートだった。
まずは元町唯一の配送業者となる元町共同配送システムの元締めを、どの配送業者に任せるかを決めることに。国の実験時は好意的に協力してくれた各配送業者たちも、実験が終了してからは「競合が元締めをするならば、自分たちは協力ができない」と言い始めたのだ。
話し合いの末、昔ながらの地元の運送業者「藤木興業」(横浜市中区)が元締めとなることで、何とか話がまとまったという。そして、「黄色いポロシャツのお兄さん」は全員、同社の社員として、日々、元町の荷物を運んでいる。
だが、システムが稼動してからも数ヶ月はクレームが相次ぎ、山田さんや担当者はお客様のもとへ頭を下げに行く日々が続いたそうだ。
「半年間は頭を下げっぱなしだった」という(画像はイメージ。フリー素材より)
「新しくできたばかりの配送業者ですから、スタッフやドライバーも慣れていませんので、配達時間が遅れてしまうこともありました。配達時間を2時間単位で指定できるような大手宅配業者のサービスに慣れていた住民からは、当然ながら不満の声が続出しました」
それにもめげずに努力改善を続けた結果、クレームは徐々に沈下。今では理解を示してくれる元町住民も増えてきたという。
藤木興業の担当者も当時を振り返り、「あのころは本当に大変だった。しかし、今は軌道に乗っているし、ほかの業者の理解もいただいているのでスムーズに運用できています」と話していた。
しかし、こんな苦労をしてまで、なぜこのシステムを継続させたのうだろうか?
「元町の環境をもっと良くしたいということはもちろんですが、地球環境に貢献したいという想いもあります。次世代のためにも、もっと私たちは地球環境に目を向けるべきなんです。この共同配送システムが、地球環境のことを考えるきっかけになってくれればうれしいです」と山田さんは熱く語る。
きれいな元町の街並みからきれいな地球に
山田さんいわく、現在共同配送システムが順調に稼動している自治体は元町が唯一だという。
元町でこのシステムが継続できている大きな理由は、
・資金面も含めて、このシステムをバックアップしている元町SS会の存在
・元町商店街の資金力やパワー
・元町商店街にあるお店の業種
にあると山田さんはいう。
共同システムでは大型家具・生鮮食品・貴金属の取り扱いが難しく、現在も元町共同配送システムではこれらのジャンルは他業者に任せている。
ダニエルの家具は共同配送システムでは難しい
しかし元町商店街は衣類や雑貨を扱う店舗が多いため、共同配送システムが比較的スムーズに導入できたのだ。
「元町共同配送システム」は、元町だからこそ実現した貴重なシステムなのだ。
取材を終えて
普段何気なく歩いている元町の美しい景観を保つために、こんな陰の努力があるとは知らなかった。そしてこのシステムは運営する元町SS会だけの努力ではなく、元町住民全員による努力と協力によって成り立っているのである。
地球環境改善のために、こんな風に地域一体となって頑張っている街が横浜にあるということを知れただけでもうれしいものです。
―終わり―
おじゃまねこさん
2014年11月22日 00時48分
共同配送とは違いますが環境問題対策としてパリではボロレグループのトップのボロレ氏が私財を投じ電気自動車のシェアプロジェクト「Autolib」というのを去年からやっていて市民にそれなりに好評のようです。所謂パリの貸し自転車と同じで登録して基本的には30分単位で使用するもの。返却は最寄りのステーションに駐車するだけで良いというお手軽さ。日本の旅行者も国際免許証を取得していたなら登録可能です。
トンカツ丸さん
2014年11月19日 14時12分
一例として「ABC宅急便」と書かれてますが、「宅急便」って言葉自体がヤマト運輸の登録商標だったような……宅配便だったらOKなのかな。ま、いっか(いいのか?)
タイチョープさん
2014年11月19日 13時49分
時々目にするあのトラックは、おそらく共同集配をしているのだろうと想像していましたが、背景や、現状が分かって良い記事と思います。ただ、商店の方々を、「住民」と呼ぶのはおかしいと思います。