横浜で路上観察、ハマソン vol.2 「安善町、海に向かって時速40km」
ココがキニナル!
横浜を歩くとまだそこかしこにトマソンを見つけることができる。日本の街並みの新陳代謝はとても早いので、消えてしまう前に情報求む
はまれぽ調査結果!
今回は読者投稿2件をふくむ7件のハマソンを紹介。いつも歩いている横浜の街角にあるいろいろな風景に、ふとした瞬間ふいに面白いものが見えてくることを実感した春の散歩であった
ライター:永田 ミナミ
#4 中区「ピロティからガレージへ」
ところがこの日の豊作はとどまるところを知らなかった。図書館の手前でもうひとつ、ここも図書館に来るときはほぼ毎回通るところなのにいまごろになって気づくとは。
おや、この壁のブロックでふさがれた感じはトマソンの気配
写真の建物を右側に回った壁には入口が開いていて車庫か物置のようなスペースになっている。
以前はおそらく2方向に吹き抜けていてピロティ的空間だったのではないか
そして地面に残った跡から考えるとかつて建物前には塀があったのではないか
何らかの事情で塀を撤去することになり、そのとき塀の代わりに吹き抜けていた壁の一面を埋めてふさいだのかもしれない。
立て続けに面白いものを見つけて浮かれ、鼻歌交じりに図書館に到着するとこの日は休館日。鼻歌も思わずバラードに変わったが、今日はハマソンを探せということなのだろうと思い直して散歩を再開。
するとイセザキモールでちょっとしたトマソンを発見した。
#5 中区「無用ドア」
一見そのままドアじゃないかと思って通り過ぎかけたがストップ
壁と同じ色に塗られているのは「ここは壁である」ということなんじゃないかと思い、よく見てみるとあるべき場所に把手がなく鉄板のようなもので覆われている。やはりここはもうドアではなく壁なのだ。
#6 中区「眠りから覚めた壁」
そろそろ日も暮れてきたし今日はこのへんで終わりかな、と関内駅方面に歩いていくと、建物が取り壊されていた。ここも何度も歩いているが、ここにどんな建物があったか思い出せない。
こういうことがあるのでキニナった建物の写真はなるべく撮っておくのだが、そんなことより視線の先にそそる壁が見えた。ここにあった建物が取り壊されるまで隠れていた壁である。
あれは無用化した高所ドアかな、と観察しているとはっとした
高所ドアではなく「居酒屋 洗心洞」の看板跡だったが、それよりもその右側
塗装がほぼ剥がれた看板に確かに「トルコ」という文字が見える
これはもしや特殊浴場のかつての呼称ではないか。1966(昭和41)年に個室付浴場として許可され各地に普及したあと、1984(昭和59)年8月にトルコ人留学生が当時の厚生大臣に名称変更を訴え改名運動に発展し、同年12月19日に新名称「ソープランド」が発表されることとなったあの呼称が、30年以上の時を経て再び姿を現したのではないか。
ちなみに、横浜市は全国に先駆けて1984年10月に「トルコ風呂」の名称を用いないことを決定している。国際的視点においては開港都市として一日の長があったということができるかもしれない。
それなのに運命の悪戯か封印を解かれた壁。でもまた新しい建物が隠してくれるだろう
街を歩く人に宣伝するための看板の前にビルが建ち見えなくなったとすれば「無用看板」であり、人の目には触れないが一種のトマソンとも考えられる。高層ビルがみるみるうちに建つ今日このごろ、このアンコールワットハマソンを見ることができるのはいまのうちである。
「洗心洞」は系列店だったりしてと想像をめぐらせながら駅へと向かい、この日の散歩は終了。
#7 鶴見区安善町(あんぜんちょう)「時速40kmは安全ではない」
最後に、前回の記事で投稿があった雲葉 @since1992さんの「市バス27系統の終点、安善町の先のとっつきに、海を向いた速度制限の道路標識」を見に行ってきたので紹介。
歩けばまた面白いものが見つかるかもしれないと思い往路はJR鶴見駅から歩くことに。
鶴見線安善駅を過ぎたあたりで雨が降り始めたが雨宿りする場所はどこにもない
仕事を終え安善駅へと向かう人とすれ違いながら埠頭の果てを目指す
安善町停留所までやってくるとすれ違う人もいなくなった
「この先100m行き止まり」の標識が。いよいよである
お、行き止まりが見えてきた
なるほどこれは素晴らしい
時速40kmなら突っ込んでもいいぜ、と言わんばかりの速度制限標識
反対車線には反対向きの標識がある
こちらは時速40kmまでの速さで海から飛び出してこいと言わんばかり
海へといざなうようにのびる白線とその誘惑に待ったをかけるガードレール
投稿にあった「かつて荷揚げに使われていたであろう場所がフェンスやガードレールで塞がれたので無用の標識と化したのでしょうか」というのも納得の風景だと雨に濡れながら感慨にふけった。
さあ、帰るかな
心細いのであらかじめ時間を確認しておいたバスに乗り込んだ。さらば安善町
取材を終えて
いやあ、安善町ではいいものを見たなと思いながら帰宅したあと、ふと気になって補助標識を確認してみた。すると海へと向かう補助標識は「ここまで」、海からやってくるほうは「ここから」であった。
つまり、時速40kmで海へ飛び込んだり海から飛び出したりすることを許容しているわけではなかったのだが、それにしても標識のところまで時速40kmで走ってきたらやはりフェンスは突き破ってしまうだろう。まあ、ここまでやってくる人はだいたい分かっている人だろうから無用な心配というものか。
さて、今回も紹介しきれなかったものがいくつかあるので、それについてはまた次回。
みなさんも何かいいもの見つけたら教えてください。
―終わり―
参考文献
『男性の見た昭和性相史 vol.4』下川耿史/第三書館/1993
∵さん
2016年05月30日 00時36分
申し訳ないが、トマソンを謳うなら事前にもう少しリサーチされた方がよろしいのでは…と。路上観察モノは基本的に好きなんですけどね…ちょっとネタが弱すぎる。
ushinさん
2016年05月23日 00時51分
なかなかトマソンとしていいブツ揃いだと思いました。ただね、やっぱり「トマソン」は「トマソン」であって、よほど横浜ならではの特異性があるというのでない限り、勝手に「ハマソン」などと標榜してほしくない気がした。赤瀬川先生が御存命だったとしても「ケシカラン!」などとはおっしゃらないとは思うが、なんか過去のWEBの歴史も知らず、先人達の尽力も理解する素養のない者どもが、定義も明確でない「WEB Ver.2」とかいう言葉を、「時代を先取る俺」とばかりに手前勝手に、したり顔で語っていたのと似たような匂いがしてちょっとヤダ。ところで、先日古書店で「写真時代」が売られているのを見かけたが、誌面に自分の投降したトマソン画像を見て懐かしくもあったが、その他のページは少女ヌード(未成年)のページも数多く、当時以上にアブナイ雑誌に上り詰めているのが感動!
debbyさん
2016年05月13日 14時55分
長い間ビルの隙間に埋もれていた看板や埠頭ならではの風景にそそられました。下のコメントにある標識についての指摘は、記事の最後に書いてある補助標識のことですよね。