古代から続く道、「中原街道」の歴史とは?
ココがキニナル!
中原街道の「中原」は、起点側の川崎市中原区の「中原」か、終点側の平塚市中原の「中原」か、どっちが正解?東京都の五反田~丸子橋間も中原街道と呼んでいる様ですが、それは正しいの?(みどりのたぬきさん)
はまれぽ調査結果!
中原街道の名前の由来は平塚の中原御殿で、起点は江戸城虎御門(現在の東京都港区虎ノ門付近)。古代から存在する歴史ある街道だった
ライター:岡田 幸子
中原街道を、いざゆかん!
街道歩きの前に立ち寄ったのが、品川区立品川歴史館。こちらでは、2010(平成22)年に特別展「中原街道」を開催し、好評を博したという。
中原街道から5kmほど離れた池上通り沿いにある
学芸員の冨川武史(とみかわ・たけし)さんによると、「東海道と並んで古くから品川区内を走っている街道ということで企画したのですが、意外にも川崎市さん、平塚市さん、横浜市さんもまだ本格的に展示としては取りあげていなかったテーマでもあり、大きな反響をいただきました。図録も継続的にご要望をいただ き、2年ほどで在庫切れになってしまいました」とのことだ。図録には篠宮さんに伺ったのと同じような内容が、豊富な資料とともにまとめられている。
入手困難となった特別展図録『中原街道』だが、館内で閲覧可能だ
整備により現在の中原街道は江戸時代およびそれ以前のものと多少ルートが異なる。しかし、「今でも、中原街道を歩いてみたいという方から『江戸当時の街道 や古代の古道はどこですか?』といったお問い合わせをいただくことが多いんです」と、冨川さん。なるほど、街道歩きが人気という噂は本当らしい。
ここからは写真を中心に、街道の要所をご紹介しよう。
まずは虎ノ門を出発!
中原口から品川区、大田区を経て洗足池を通過
ほとりには1917〜23(大正6〜12)年の中原街道改修を記念した石碑が
妙福寺境内の馬頭観世音供養塔。下部の基礎石には・・・
「東江戸中延」「西丸子稲毛」などとあり、街道沿いの道標だったと分かる
丸子橋を渡り、中原街道は神奈川県川崎市へ
昭和初期にこの橋が完成するまで現役だった渡し船・丸子の渡しについては、後日別記事で紹介する予定だ。
綱島街道と県道45号線・中原街道に分岐
小杉陣屋町、小杉御殿町付近のクランクは、ここにあった御殿を守る工夫とか
路地を一歩入ると小杉御殿の御主殿跡に小さなお社が
西明寺参道の入口には、小杉御殿跡の石碑と3基の供養塔も
中原街道は横浜市へ。都筑区、緑区、旭区、瀬谷区と経由する
川崎市を離れると、電柱ごとにあった中原街道を示す表示の数がぐんと少なくなる。このあたりも、「中原街道は川崎の道」というイメージを作っているような気もする。
瀬谷区二ツ橋上交差点の南側にも供養塔群があった
ここで中原街道は厚木街道と交わる
大和市を抜け、綾瀬市に入ると右手に厚木海軍飛行場が広がる
写真は微妙だが正面に大山と富士山が並ぶ
開けた道が続くため絶景だが、午後の街道は西日が眩しい。
藤沢市、寒川町ときて、相模川を渡ればいよいよゴールは目前
ここには田村の渡しがあったことを示す記念碑を発見
西日を追いかけた午後のドライブは4時間半を経て終了!
中原街道の終着点、中原御殿があった場所は、平塚市立中原小学校になっている
取材を終えて
中原街道は思っていたよりも起伏の激しい道だった。そして、まっすぐ南西にのびているため、午後に下ると西日を常に正面にする形。避けようもなく日焼けしてしまった。
川崎市中原区に対して「東京のベッドタウン」という認識しか持っていなかったため、今回の調査では驚きの連続だった。日々使っている生活道路の脇に、こんな史跡が隠されていたなんて!
取材中に偶然お会いすることのできたNPO法人小杉駅周辺エリアマネジメントの安藤均(あんどう・ひとし)理事長は、「武蔵小杉駅周辺を中心とした再開発 が進む新しい街並みと同時に、街道沿いには歴史ある古いものが残っている。これが川崎市中原区の魅力だと思います」と語る。
なんと、安藤理事長は江戸時代に割元名主(周辺の名主を統括する役目)を務めた、安藤家の第20代目当主でいらっしゃる。
街をまかせて安心といったオーラを放つ、素敵なお方
中原街道沿いに残る「長屋門」は、2012(平成24)年に個人所有の建築物としては初めて、「安藤家長屋門」として市文化財に指定されているのだ。
江戸時代末期の木造平屋寄棟造の安藤家長屋門
取材中にひょっこり当主さまにお会いできたり、住宅街の角を曲がると思いがけない石碑と出会えたり・・・日常のそこここに隠れた歴史の片鱗を探す、いわば宝探し的な魅力が、中原街道散策にはあると思う。今回はたどることができなかったが、古地図を片手に旧道や古道を探すのも楽しそうだ。
川崎市教育委員会では、「江戸の中原街道 地名散歩」などと題した市民向けのイベントなども定期的に行っているという。ご興味のある方はぜひホームページで最新情報をチェックしてほしい。
―終わり―
取材協力
川崎市教育委員会地名資料室
http://www.city.kawasaki.jp/880/page/0000018421.html
住所/〒213-0001 川崎市高津区溝口1-6-10 生活文化会館(てくのかわさき)4階
電話/044-812-1102
開館時間/9:00〜16:30 月曜・祝日・年末年始休
品川区立品川歴史館
http://www.city.shinagawa.tokyo.jp/jigyo/06/historyhp/hsindex.html
住所/〒140-0014 東京都品川区大井6-11-1
電話/03-3777-4060
開館時間/9:00〜17:00(最終入館16:30) 月曜・祝日・年末年始休 (ほか館内整理日、展示替、館内くんじょう日など臨時休館あり)
平塚市博物館
http://www.hirahaku.jp/
住所/〒254-0041 神奈川県平塚市浅間町12-41
電話/0463-33-5111
開館時間/9:00〜17:00(最終入館16:30) 月曜・年末年始休(ほか館内整理日、館内くんじょう日など臨時休館あり)
おいさんさん
2016年09月29日 18時09分
横浜の港北ニュータウンを横切るあたり(道中坂下~佐江戸)は、丘陵を上り下りする趣きのある道でした。(30年くらい前)今はずいぶん変わってしまいましたねえ
kotakichiさん
2016年09月21日 15時09分
中原小学校は私の母校ですので、中原街道の由来は当然知っておりましたが、世間一般の認知は川崎が発祥と勘違いされているのですね。複雑な気持ちです。
にしくみんさん
2016年06月18日 22時56分
洗足池は日蓮上人ゆかりの地なので、中原街道は江戸時代よりもっと古いものだと思っていました。