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昨年から復活した野毛の「柳通り流し芸」、今年の様子はどうだった?

ココがキニナル!

野毛の風情が楽しめる「柳通り流し芸」。昨年から復活したそうですが、今年はどんな感じなのでしょうか?(いねやきもさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

各出演者が独自の芸を披露し、野毛の夜の街を艶やかに彩りました。復活の裏側には複雑な事情があり、改めて定着を目指しているところです。

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ライター:河野 哲弥

バリエーション豊かな8組の出演者

(続き)

アップテンポな曲から民謡まで幅広くこなす遠峰あこさんは、崎陽軒の「シウマイ旅情」のサビの部分をお店の名物料理などにアレンジし、即興の妙を見せていた。
 


かわいらしいと人気の、アコーディオンと唄の遠峰あこさん


また、時間がそこだけゆっくり流れているような錯覚を覚えるのは、自ら野毛山節保存会の会長を務める三味線流し・野毛山節の片山浪さん。
 


お客さんとの会話を楽しむ、三味線流し・野毛山節の片山浪さん


他、津軽三味線の湯浅大吾さん、唄と踊り&和楽器の柿崎竹美さん、津軽三味線&ギターの岩間哲也さんなど、「越中おわら節」を含め合計8組の出演者が街角で芸を競った。

お客さんの反応も上々で、いろいろなバリエーションがあって楽しいと話す。「流し芸」が行われていることを知らずに訪れた方も多く、「もっと宣伝すればいいのに、もったいない」という意見が多かった。

では、その辺を主催者はどう考えているのだろう。



毎年開催できなかった理由が明らかに



対応頂いたのは、野毛柳通り会で興行部長を務める影山さん。
イベント中もご自身のお店を営業していたので、ご多忙ではあったが、何とか話を伺うことができた。
 


仕事の合間に説明してくださった、影山さん


影山さんによれば、野毛では「流し芸」はかなり昔からあったとのこと。ただし組織的には行われておらず、芸人が散発的に訪れていた時代があったらしい。しかし、野毛の街が廃れていくにつれ、その姿を次第に見なくなってしまったそうだ。

そんな中、ちょうど平成元年に「流し芸」を復刻させようとしたのが、前述の富士松延治太夫。
一軒ずつ飲み屋を説得し、また町内会に組織だった運営を提案したそうだ。

ところがその先から話がややこしくなる。

まず、運営母体をどこにするかの議論が行われ、一時は、昼に行われる大道芸の「夜の部」という位置づけがなされたこともあった。このときは野毛大道芸の実行委員会が運営した。しかし、利益を得るのが飲食店に限られるという反対意見があり、野毛飲食業協同組合が運営した時代もあったとのこと(現在は、野毛地区街づくり会後援)。

次に、資金をどうするのかも重要な問題であった。

そこで参画店舗から協賛金を集め、偏ることなく芸人が訪れるよう、しっかりスケジュールを組んだこともあったが、お客さんの反応がいい場合、芸人は引き際が難しい。その結果、最初の2・3店舗でスケジュールは崩壊。後の方に回された飲食店には芸人が訪れず、お客さんの手前、面目丸つぶれとなってしまったそうだ。

このときの遺恨がきっかけで、いまだ「流し芸」に反対するお店もあるとのこと。
 


複雑な経緯をたどった「柳通り流し芸」

 
昨年からは、野毛という冠をあえて外し、名称を「柳通り流し芸」という名称に改めた。
このため今では、「野毛通り会」が主催する、一本の通りだけで行われるお祭りとなっている。

予算も町内会費が主体なので、大々的な宣伝はできない。また、仮にポスターなどを見かけたとしても「野毛」の冠がないので、記憶に残りにくいところが否めない。そんな事情と毎年開催する行事として定着していないところが、お客さんに「宣伝が足りない」と感じさせる理由なのかもしれない。

なお、出演者が直接お店に流し芸の許可を交渉をすると、過去の話を持ち出すなどのトラブルもあるため、現在ではスタッフが間に入っている。このスタッフは、野毛柳通り会が手配した横浜商科大学の学生たちで、一人の芸人に3~4人が付き添う。当日は、お店への交渉の他、投げ銭などの回収や小道具などの搬入も手伝っていた。

この仕組み、確かに出演者の負担は減るだろう。

しかし、交渉は流し芸当日に行われるので、スタッフが開いている店舗を探している間や交渉がまとまらない場合は、時間のロスにつながる。このため、話がまとまるまでの間、路上でゲリラ的なライブを行っているような姿も散見された。
 


大道芸とあまり違わない雰囲気だ




取材を終えて



本来「流し芸」は、店内の客が楽しませてもらったお礼として対価を支払うものである。

しかしこれでは、単に路上のパフォーマンスである。
カメラを抱える人たちの中には飲食をしないケースも多く、まさに「柳の素通り」の姿も見かける。

イベント終了後、多くの出演者が、野毛について「人情のある街、暖かい街」だと語ってくれた。
確かに常連客はそうなのかもしれない。しかし大道芸の趣が増すと、単なる観光客との二分化が起こるのではないか。

野毛の風情といわれる「流し芸」は今後どうなっていくのだろう。
どうやらこれからが本当の正念場のようである。


―終わり―
 

※10月7日(金)のイベントの様子は以下のURLから見ることができます。
 

【イベントフォト】「柳通り流し芸 2011」に訪れた人達

 

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