【GW特別企画】GWに行きたいオススメのスポットはどこ?(鎌倉・横浜編)
ココがキニナル!
いい店はただでさえ人気があるけれど、GWは煩悩を爆発させて、気の向くままに鎌倉から横浜にかけていろいろ名所を歩いてみるべき
ライター:永田 ミナミ
太郎、次郎を訪ねる
閉館時間がせまっていることに気づき、競歩のような歩きかたで記念館を目指したが、谷戸坂をのぼりきって息を切らす大仏の前で、大佛次郎記念館は閉館していた。
しまった、間に合わなかったか
せめて挨拶だけでもと思って訪ねてみると「おや、太郎さんじゃないですか」と喜んでくれた。そしてせっかくだから次郎に会っていってください、ということで館内へ。
ちょっとロビーの階段の上にあがってみませんか、と館長の沼尾さんが言う
いやあ、わかっていらっしゃる。こういうことです、ありがとうございます
そして床を埋めるモザイク画も素晴らしい
大仏の後光となってくれたステンドグラスや屋根は青、館内の壁や床は白、そして外観を飾るレンガは赤。そう、大佛次郎記念館は、次郎と縁のあるフランスのトリコロールが配色されているのである。
そして、ロビーを照らす照明の上には次郎がこよなく愛した猫像たち
猫像たちは、美術評論家ジョン・ラスキンが提唱した「犠牲、真実、力、美、生命、記憶、服従」という建築の七燈を象徴していて、上の写真は手前から、服従、記憶、生命、美、である。
次郎にはこんな立派な家があるんだね。太郎はあいかわらず外ですわってるよ
館内の展示もいくつか見せていただき、ひさしぶりに次郎を近しく感じることができた太郎は、兄弟に再会の機会を与えてくれた沼尾さんに礼を言い、外に出た。
またくるよ次郎も今度遊びにおいで大仏ビールを一緒に飲もう 太郎
気がつくと街には夜の帳(とばり)が降りようとしていた
美しい夜景を前に、大仏は今日めぐり会ったさまざまな人や場所を思った
750年間、数えきれないほどたくさんの人たちが会いにきてくれたものだが、自分から街を歩き触れ合うと、そこにはまったくちがう世界が広がるものだ。人と人との繋がりは、そう、言ってみれば・・・。
やあどうもすみません、遅くなっちゃいました。今から向かいます、どこすか?
大仏「あ、ええと、港の見える丘公園にいるよ」
地蔵「ああ、いいっすね! じゃあそこから丘を降りて中華街まで来てください! 朝陽門ていう門があるんで、そこで会いましょう!!」
一方的に切れた電話を耳に当てたまま、大仏は、人と人との繋がりは言ってみれば何だと思ったのか、完全に忘れてしまっていることに気がついた。
大仏、地蔵と会う
朝陽門に着いて待つこと5分、陽気な地蔵がやってきた。
イエーイ、こんなとこで大仏様と会うの、何だか不思議っす
地蔵「今日まだお菓子しか食べてないんで、お腹すいてるんですよ。大仏様はどうすか?」
大仏「そうだね、お腹はすいているよ」
地蔵「そうこなっくちゃ。何か食べたいものあります?」
大仏「そうだなあ。ひさしぶりにお粥が食べたいなあ」
地蔵「お粥? お粥でいいんですか? フカヒレとか北京ダックとかじゃなくていんですか? せっかく中華街に来たんですよ」
大仏「いや、お粥がいい。美味しい中華粥を食べたい」
大仏にとってお粥は、悟りを開いた日に食べた思い出の一品であり、そして地蔵もそのことを知っていた。
「わかりましたよ。大丈夫です。美味しいお粥を出す店も知ってますから、まかせてください」地蔵はそう言うと、活気溢れる中華街を歩きだした。
そして「ここです、ここの中華粥は本物ですから」と言って地蔵は店のなかへ
「なるほど、そのようだね」と言って大仏も店のなかへ
「いやあ、もう腹ペコでだめです」「君は本当に食いしん坊だねえ」
「じゃあ、何にしようか」「ごもくおかゆと海鮮類おかゆで」
「あとシューマイと瓶ビールで」と立て続けに注文すると、地蔵はたちまち元気を取り戻した。
「大仏様の散歩に乾杯」「地蔵が背中を押してくれたおかげだよありがとう」
とそこへ艶やかな自家製手作りシューマイ(500円)がやってきた
大仏の背中を押しのけて2個いっぺんにつかむ地蔵の器用さと食い意地
とそこへお粥が運ばれてきた。ほとんど同時にどんぶりをつかむ地蔵の敏捷性
ではいただきましょう
地蔵が食べているのはツブ貝、エビ、イカが入った海鮮類おかゆ(800円)、大仏が食べているのは豚、モツ、レバーが入ったごもくおかゆ(750円)。安記のお粥はお粥自体のベースは同じで、なかにどの具を入れるかが違いだという。
洗って半日寝かせた米を、朝5時から5時間じっくり煮込んでつくる、やさしいけれど奥行きのある味わい深いお粥である。
手間を惜しまずつくられた、元祖粥店のこのお粥を前にすれば
地蔵のなかから抑えきれない衝動が顔をのぞかせるのも当然なら
あっという間に平らげた地蔵がお替わりを狙うのも当然であるが
大仏がさっきでラストオーダーだったことを思い出させてごちそうさま
1932(昭和7)年に開店した当時、メニューはお粥だけかった安記には戦前、横浜港に着いた中国人船員たちが毎朝たくさんやってきたという。お粥は午前中でなくなってしまうので、そのころは昼には閉店していたそうだ。
並んでくれている人に悪いのでお粥だけの予約は受け付けていない、とのことだが、コース料理の予約は可能である。GW中は行列必至だが、やさしいお粥は遊び疲れた体を癒してくれることも必至である。
地蔵、まだ食べる
さて、お腹もいっぱいになったしそろそろ、と大仏が言おうとしたとき、ぐいっと腕が引っぱられたので振り返ると、地蔵が何かを指さしている。
何なに、ショウロンポウ?
「食べましょう、小籠包」「いま、お粥を食べたところじゃないか」「食べましょうよう」「食べ過ぎはよくないよ」「過ぎてませんよ」と押し問答になり、地蔵はすっかりしょげてしまった。
しょうがないな、今日は散歩に免じて食べてなさい
わあい嬉しいなあ、小籠包、小籠包(4個入り500円)
と小躍りしながらかぶりつくと因果応報、熱いスープを浴びることになる
いやあ、石でできててよかった。坊主だから拭きやすいし
まったくしょうがないねえ、と呆れる大仏が飲むのはタピオカミルクティー(350円)
笑ってくれる人がいるならよかったが、大仏は半眼なので見えていなかった
大仏、鎌倉に帰る
さて、今度こそお腹いっぱいになった地蔵に誘われ、少し中華街を散歩することにしたが、大仏はそろそろ散歩が終わりに近づいていることにも気づいていた。
こんなふうに2人で歩くのは何年ぶりだろうねえ
何言ってんすか、初めてですよ。大仏様はずっとすわってたんだから
「ああ、そうか。そうだったね」「あ、僕、ちょっと占いやりたいです」
「え、占い?」「僕まだ菩薩で悟り開いてないから、結構悩みがあるんです」
そうか、じゃあ占ってもらいなさい。如来の私はもう悟ってるから待ってるよ
占いって
結構たっぷりやるものなんだな
いろいろいいことを言われたらしく、上機嫌で立ち上がった地蔵は「よし、じゃあ走りますか」と言って走り出した。
待ってくれよう、と大仏も走り出し
やがて2人は海を見ていた。そして黙って水面に映る夜景を眺めたあと
ますます黙って瞑想した。本当にいい休日だった
散歩を終えて
「海を見てはしゃいで、ビールを飲んで最高のハンバーガーを食べて、美味しいお菓子を食べて、次郎と会って、本場のお粥を食べて、いろいろな人と出会い、 ふだんできないことをたくさんできて、本当に今日は楽しかったよ。散歩というのは本当にいいものだね」と大仏が言った。
「悟っていないころを思い出しましたか。悟りを開けた大仏様はもちろん素晴らしいけど、悟っていない人たちは、もしかしたら、悟っていないからこそ、喜びも悲しみも大きいのかもしれないですね」
「そのとおりかもしれないね、だから今、私は少し悲しいのだろう」と大仏は言った。「でも、この喜びと悲しみのおかげで、悟っていることの意味もわかった気がするんだ。だから明日から私はまた、静かに坐ろうと思う」
GWで大仏を訪れるなら、よく顔を見てほしい。もしかしたら前よりも少しだけ楽しそうな表情を浮かべているかもしれない。
なお、この大仏はフィクションです。実在の大仏とは関係ありません。
―終わり―
千代仁
住所/鎌倉市長谷3-1-3
電話/0467-22-8199
営業時間/11:00~17:00
定休日/水曜
吉野屋酒店
住所/鎌倉市長谷1丁目16-23
電話/0467-22-1395
駄菓子や鎌倉長谷店
住所/鎌倉市長谷2-14-20
電話/0467-22-6499
営業時間/平日:15:00~18:00、土日祝:10:00~18:00
定休日/不定休
Good Mellows
住所/鎌倉市坂の下27-39
電話/0467-24-9655
営業時間/9:00~20:30
定休日/無休
鎌倉紅谷
住所/鎌倉市雪ノ下1-12-4
電話/0467-22-3492
営業時間/平日:8:30~17:30、土日祝:8:30~18:00
定休日/無休
安記
住所/横浜市中区山下町147
電話/045-641-3150
営業時間/平日:9:30~14:00、17:00~20:00 、土日祝:9:30~15:00
定休日/水曜
うなぎさん
2014年05月03日 08時15分
悪のりレポかと思って読んでたら超大長編だし!!面白過ぎですシリーズ化して欲しい笑地蔵が電話口で食べてるお菓子がちゃんと変わってるのに吹き出してしまった笑
ほっけさん
2014年05月02日 20時01分
なんだこのレポ
qbbさん
2014年05月02日 15時51分
次は大船の観音様の街歩きですか?