「ホタルの里」から廃墟群となった横須賀市田浦町の今は?
ココがキニナル!
横須賀市田浦町は、10年ほど前に「ホタルの里」として町おこしをしていたと記憶しています。今はホタルはいるのでしょうか。どうなったのか現状を教えてください。(619のキニナル)
はまれぽ調査結果!
横須賀市田浦町のホタルの里は一部現在も行われているが、高齢化のため継続が難しい地域もある。谷戸の廃墟は過疎化や開発の立ち退きによってできた
ライター:小方 サダオ
田浦泉町に向かう
次に来た道を引き返し、田浦泉町へと向かった。
田浦泉町のホタルの里が残っているあたり(青矢印)(Googlemapより)
山のふもとに向かって住宅地内の細い道を進むと、ふもとに到着。するとそこには同じような形をした建物の住宅群が並んでいた。
通行人に話を伺うと「温泉谷戸住宅」という市営住宅だという。
市営住宅の温泉谷戸住宅
しかし人が住んでいる気配はあまりない。
そして近くにホタルの里の看板を発見。整備路と思われるものもあったが、雑草で覆われていた。
ホタルの里の看板
ふもとに住む初老の元気な男性に伺うと「市営住宅は2017年度に取り壊されるようです」と話してくれた。
戦地からの帰還者のための住宅だったという
ホタルの里に関して伺うと「里の手入れをする人がいないからか、ホタルは全然出ませんよ」という。
ふもとを流れる川
この場所に住むことについて伺うと「こんな谷戸に住んでいると大変です。私は車を使っているから外へと出やすいですが、運転ができなくなったらどうなるか、考えると不安です。また、ほとんどの住人がお年寄りです。若者には向かない場所なのです」と答えてくれた。
若い人が街を出て、自動車の所有者の少ないお年寄りが残りがちな場所のため、住みづらい場所となってしまっているようだ。
長くて幅の狭い階段
市営住宅の脇にかなり長い階段を発見した。上ってみると、山の上の住宅地に出た。
山の上は住宅地になっていた
山頂には多くの住宅が建っていた。
遠くにはランドマークタワーが見える
横須賀港に停泊する艦
山を下りる形でふもとの国道方面へと進むと、また市営住宅があった。
市営月見台住宅
自転車で戻ってきた中年男性に伺うと「ここに住んでいるのはお年寄りばかりで、取り壊される予定です」と答えてくれた。
引っ越し中の住人
長浦町に話を伺う
そして山を反対側に下りると、長浦町であった。
長浦町のホタルの里が残っているあたり(青矢印)(Googlemapより)
ここでも車の入れないような山道沿いでは、廃墟を見かける。
山道沿いの廃墟
ふもとまで下りると、またも市営住宅を発見した。
市営長浦住宅
18棟が建っている
近くにホタルの里の看板もあった。
ホタルの里の看板
このあたりの市営住宅は、ホタルが出るような谷戸に建てられていることが印象に残った。
あまり人が住んでいないようだ。やはりここも同じく取り壊される予定なのだろうか。
この長浦町には、京浜急行線の安針塚駅がある。そのため駅前には広い道路が通り、マンションも建っていて、これまでの街とは風景が違っていた。
京浜急行線安針塚駅前の道路
自治会長のKさんに、ホタルの里と谷戸の廃墟に関して伺うと「ホタルの里は、今は整備していません。また廃屋は細い道の先に多いですよ」と答えてくれた。
そこで教えてもらった道の奥へと進むと、山の上へ続く階段がいくつもあり、その上には数軒の廃屋と思われるものがあった。
廃屋と思われる家
階段の上に建つ家
山の上にあった廃屋を確認し、長浦町を後にした。
後日谷戸にあった市営住宅について、横須賀市都市部市営住宅課の担当者に話を伺うと「第二次世界大戦前は、海軍の航空省の工員の寄宿舎でした。戦後、市に渡され、戦争の引揚者や戦災者の住居になりました。谷戸に宿舎を構えた理由に関しては、確かなことは分かりませんが、敵から攻撃されにくいからという話があります」と話してくれた。
ホタルの里の川と市営住宅
さらに田浦町の一部の開発にあたる、株式会社愛鷹三光(あしたかさんこう)商事の酒見(さけみ)さんに伺うと「田浦町3丁目付近から西側一帯では、15年ほど前から住宅開発の予定でしたが『(仮称)湘南田浦メガソーラー事業』に計画を変更いたしました。メガソーラーパネルによる12MW(メガワット)の出力を想定しており、2018年の稼働を目指しています」とのことだった。
開発が予定される場所の廃屋
ホタルの里が開発で廃止される可能性に関して伺うと「開発にあたりましてはホタルの里がなくなることのないように考えております」と答えてくれた。
取材を終えて
取材した4つの地域では、ホタルが生息するような自然豊かな谷戸に住人が多くいたと感じた。
今までに開発の話があったものの、地元住民の反対のために、不便ながら開発はされず静かな場所となって、今も残っている。静かな谷戸の環境を残したいという住民の思いが強かったからかもしれず、それが「ホタルの里を保存したい」という住民の願いに受け継がれているのかもしれない。
しかし高齢者だけで維持するのは困難なようで、谷戸の環境を守る熱意を持つ若い世代の力が必要といえる。
廃墟を背景に舞うホタルの姿が見られる場所
―終わりー
なおちゅんさん
2018年04月12日 03時04分
自分が住んでいた訳ではないのですが、とても懐かしい場所なので…何というか複雑な心境で記事を読みました。掲載されてから数年たった今はどうなっているのでしょうか…。小さい頃遊んだ長い階段をのぼってたどり着いた山の上の公園ももうなくなってしまってるんだろうな…と、個人的な想いばかり綴ってしまい失礼いたしました。住み良い町になりますように。
∵さん
2016年07月12日 04時53分
横須賀市は人口流出が加速していると聞きますが、街の中心部を見ているとそんな気はしないものの、こういった入り組んだ谷戸の奥や斜面は本当に、無人化・廃墟化が進む一方ですねえ…。車で乗り付けられるところはまだ、新規の入居者や購入者も現れるけど、階段で何十メートルも上った先となると、さすがにねえ。無為に維持するよりは、きちんと畳んだ方が良いですね…。
Utyさん
2016年06月24日 21時42分
「ホタル」の文字につられて来たのにホタルの写真が一つも無い! 是非もう一度夜に取材してホタルが生息しているところを写真に納めて欲しい。記事全体は興味深いのでまあ良いのですが・・・。