横須賀で関東大震災の際に起きたトンネル事故とは?
ココがキニナル!
京急安針塚を降り、JR横須賀線の田ノ浦踏切の傍らにある「轢死者供養の塔」という古びた墓石の供養塔。ときどき花が時折活けられてはいますが、由来が知りたい(三浦虎次郎さん)
はまれぽ調査結果!
田浦駅を中心に東京寄りの踏切に関東大震災の際、トンネルの崩落事故で無くなった方を祀る供養塔があったが、安針塚の塔の詳細は不明
ライター:やまだ ひさえ
田浦に関東大震災の犠牲者の追弔塔が造られたわけ
1923(大正12)年9月1日、前夜からの激しい雨も夜明けとともに上がり、折からの西南の風で雲も切れて日も差し、蒸し暑さがぶり返してきたころであった。
午前11時58分、ゴ―ッという地鳴りとともにマグニチュード7.9の地震が襲った。上下の揺れは激しく、人々は歩くこともできず、家の中、路上、勤め先で恐怖におびえた。(『走水(はしりみず)古老のはなし』より)
神奈川県内にも未曾有(みぞう)の被害をもたらした関東大震災。横須賀市も死者742人、負傷者1221人という被害を受けた。
震災後の横須賀市の中心部 (『ふるさと横須賀』より)
そして、市内で浦賀に次いで被害が大きかったのが田浦地区だ。火災による焼失こそ免れたが、全半壊家屋は、1783戸にのぼった。
地区内の半数近い家屋が被害にあった(同)
横須賀線も大きな被害を受けた(同)
横須賀線の被害状況を記した調査書(『横須賀線を旅する』より)
関東大震災の震源地である相模湾に近い横須賀線は数ヶ所にわたり大きな被害を受けている。その一つが静円寺踏切から600メートルほど離れた沼間(ぬまま)トンネル。
トンネル入り口部分で崩落事故が起こっている。
入口が土砂で埋まっている(同)
地震発生の3分前、午前11時55分田浦駅発東京行きの上り列車。沼間トンネルに入ったところで地震が発生。出口が崩壊したため、回避するためにバッグをしたが、入口付近の線路も崖崩れの土砂で埋まっていた。
この土砂に乗り上げ列車は脱線。最後部車両の乗客3名が犠牲になり、6人が負傷した。
現在の沼間トンネル。震災後、復興された姿を留めている
事故を知らせる非常汽笛を聞きつけ、救出に向かったのが長浦湾に面した場所にあった海軍水雷学校の教職員たちだった。
海軍水雷学校(『ふるさと横須賀』より)
学校があった場所は、現在、海上自衛隊の駐屯地になっている。
海上自衛隊の基地内に学校があった
長浦湾に面している
ここに水雷学校があった
水雷学校があったことを伝える記念碑
震災時、海軍水雷学校は、家屋を失った田浦の町やほかの地域の被災者を受け入れ、避難所としても活躍した。
現場まで約700メートルを急行した
現在は、駐屯地の横を横須賀街道、国道6号線が走っているため交通量も多く、700メートル以上離れた沼間トンネルからの非常汽笛は聞こえない可能性は高い。しかし、今より建物も交通量も少なかった震災時では、確かなSOSとして聞こえたのだろう。
横須賀は明治時代初期から発展を遂げてきた軍都だ。海軍だけでなく陸軍の施設も多い。横須賀鎮守府は、海軍水雷学校だけでなく配属されている部隊に命じ、救護活動や治安維持のための活動に全力をあげている。
埋没者の救助にもあたっている(『ふるさと横須賀』より)
「海軍さんの救援活動はめざましいものであった。数人の者が班長らしい人の指揮のもとに整然と動き、トビ口、鉄棒、大きなノコギリ、シャベルなどをもって人名救助に活躍していた。瓦を破って下の人を引き出し、手足を挟む材木切って焼け死ぬのを防ぐのだ」(『古老が語るふるさとの歴史』より)
有事の際に任務につく帝国在郷軍人会の人たち。失われた命を悲しみ、惜しみ、尊い犠牲があったことを忘れないために、静円寺踏切のように、田の浦踏切も轢死者の塔を建立したのかもしれない。
取材を終えて
実は、帝国在郷軍人会の田浦町分会田浦班は、静円寺踏切の供養塔を建立した同じ1924(大正13)年9月1日に、もう1つ供養塔を建立している。
「殃死者群靈寶塔(おうししゃぐんれいほうとう)」。関東大震災で非業の死をとげた方を祀る供養塔だ。
海上自衛隊の近く、新船越隧道下り線の出口横にある
祀る人もなく、草に埋もれていた
災害を忘れてはいけない。
そして、地震に見舞われた際、どうしたらいいのか。改めて考えさせられた取材だった。
―終わりー
maine4989さん
2017年03月27日 16時44分
三浦半島の、横須賀のいいところといえば「水」を自慢してもいいとおもう。次は季候温暖で自然災害の非常に少ない地の利ですが、横須賀市の泣き所は「トンネル」でしょうR16と横横道各一本破壊されたらどうします他府県の応援もゴミ処理もお手上げです。そんな地形に私たちは住んでいるんです。
みなと広告さん
2016年09月15日 20時02分
横須賀周辺は現在も地盤がもろく、ちょっとした台風等で崩落が起きやすい、横浜にもこういう場所は多く、事実を知りながら、経済的理由や地域の不動産価値を考えて黙る方が多い。京急沿線などは特に…。そのことを知りながら誰も発言しないのはやはり問題が多すぎる。
モンスケさん
2016年09月04日 14時29分
「駐屯地」は、陸上自衛隊にしか使わないはずだけど…