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絶版の絵本に導かれ、横浜市電引退後の第二の人生に迫る!

ココがキニナル!

廃止された横浜市電の車両、市電保存館以外での行先や現状は?/緑区長津田みなみ台7丁目の公園にある「市電記念碑」はなぜあんなところに?いつから?車輪は本物?(よこはまいちばんさん/ozaさん)

はまれぽ調査結果!

市電は全部で37両と2車輪が民間供出され、図書館、自治会館などさまざまな第二の人生を歩んだ。緑区長津田の後谷公園の「市電記念碑」はその名残

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ライター:紀あさ

残るは公園の市電、1504号



絵本で描かれた市電の第二の人生、魚礁、公園設置、市電歯科、市電レストラン、市電理容室、わかめ文庫のうち、5つまで検証でき、残るは「公園設置」と「市電理容室」。

簡さんも聞いたことがないと言っていた「理容室」については、筆者も資料をあたっても探し出すことができなかったが、公園はいくつか事例が見つかった。

公園と名のつく市電車両の供出先は「万騎が原第五公園」「釜利谷第二公園」「瀬谷第二公園」「野島公園」「保土ヶ谷児童公園」などがあったが、1504号だとすると、緑区の後谷公園だ。
 


公園の市電(『はしれほくらのしでんたち』より)


また、元市電運転士の故・依田(よだ・こういち)さんの著書『チンチン電車始末記』の中には、こうある。

「市電が全廃になったとき、市内の各区に一両ずつの市電を保存することになった。四十七年八月から各区の公園にワンマン電車が配置された。十二両である。だがそのいずれもが荒れ果てた姿で放置され、寂しい第二の人生となったものが多い。こうした中で幸せな人生を送った電車もある。緑区十日市場後谷(こうや)第一公園に行った一五〇四号である」

どんな「幸せな人生」だったのかとJR十日市場駅に降り立った。駅からは徒歩15分。
 


後谷公園到着。きしゃポッポ公園と呼ばれる公園で、汽車の遊具がある


案内をしてくださったのは現在、後谷自治会で副会長を務める、松尾恵理(まつお・えり)さん。

 

公園のシンボル、汽車ぽっぽ。「1年ほど前まではコンクリート製でした」


後谷公園には、かつて市電1504号が、地域の「青年センター」として置かれていた。
そのころの様子は、後谷自治会の1951(昭和26)年の発行誌に詳しい。
 


『電車のある公園で-市電1504号をしのび-』


当時は新興住宅地だった後谷。1970(昭和45)年、後谷自治会(当時は東急分譲地長田自治会)は、自治会活動の拠点としての集会所が欲しいと考え始めた。

改造バスを利用している自治会がほかの町にあると聞き、1971(昭和46)年に市バスの払い下げの申請を決め、のちに市バスと市電のどちらにするか両者の利用価値などを検討した結果、市電利用に乗り換えることにした。

その後、1972(昭和47)年3月30日、車両代金、運搬費は市側の負担、備え付け工事費は自治会持ちの形で、車輪とレール、枕木を含む部品8点が搬入された。
 


後谷公園の市電1504号


発行誌の中で、当時のことを「一夜明け、突然の電車出現に住民は驚く。子どもたちは大喜びする。大人たちは、1504号に話し合いの場として乗車した。子どもたちはただ眺めるだけである。<なんとかしてみんなをのせてあげたいなぁ・・・・・・>」と綴ったのは髙﨑美智子(たかさき・みちこ)さんだ。
 


松尾さん(左)と、髙﨑美智子さん


子どもたちを乗せてあげたいと、同じ思いの数名のお母さんたちが一緒になって車内に本をおき図書館のように利用する「市電文庫」を考えた。公園に電車が来てから5年目、1957(昭和52)年の夏、自治会に市電利用の申請をし、市電文庫が誕生。

自治会の皆から届けられた本は約600冊。中には本棚を届けてくれた人もいてびっくり! の住民たちによる手作り図書館だった。


しでんぶんこの通信、1号と2号


なお、「豆の木文庫」や「わかめ文庫」も入っていた横浜市の文庫の連絡会「よこはま文庫の会」には加盟しておらず、後谷独自で、形にされていった。
 


子どもも乗車できるようになった1504号


その後1985(昭和60)年、後谷自治会は念願の自治会館の建設を迎え、翌年1986(昭和61)年の秋に、設置から14年6ヶ月たった1504号はその役目を終えた。

残したい気持ちがあったのではと尋ねると「だいぶ古くなってしまっていたから」と答えた髙﨑さん。

自治会誌には「老朽化が進み、子どもたちへの危険性、維持費を考えて撤去」とあるが、元運転士の依田さん著書には「市電がその割には痛んでいない」「もっとも十四年の歳月は、外板下部などの腐食が進んでいたが、長い間の補修のあとが表れていた」と記されている。

お別れ会には住民のほか、依田さんも招かれて参加した。
 


市電への感謝と惜別の祝詞が読まれた


長い間、ありがとう



市電1504号から自治会館へ



当時の1504号の役割を担う後谷自治会館にも行ってみた。
 


後谷自治会館


近寄って思わず声が出た。
 


「しでんぶんこ」の名が残されている


集会室には本がいっぱい


スタンプカード


電車がなくなっても、文庫は同じ名前で、続いていた。
 


1504号とお別れをした時、後谷公園のかどに、車輪を残した

そしてこの車輪こそが、ozaさんのキニナルの「緑区長津田みなみ台7丁目の公園の『市電記念碑』」で、車輪はもちろん本物である。

生活上の実用的な看板の支えになっているのは見逃してほしいが、毎週ここに来るなかで、これなんだろう、と思う人がいつかまた誰かいたら、それが語り部の役割になるかもしれない。

その時はどうか、この記事を見つけてくださいね。
 


検証、すべて完了!



取材を終えて



第二の人生。どれだけ大切に思われていても、車庫に戻り整備を受けることのない歳月は、車両にとっては大変なことなのだな、という点も見えた3件の事例だった。

早いものは3年で消えたと言われる供出車両たちの中では長寿だったが、それぞれ十数年、ちょうど人間にとっての余生と同じ年数くらいを過ごして、姿を消した。これより先も形を残すには、思いだけでなく、保存技術も必要になってくると考えた方がいいということだろう。また後日、最終編として、今なお車両が存在し、当時の姿でよみがえった事例も紹介します。
 


保存館以外にも、現存車両がある


そして、絵本をもとに街を歩くという試み。こんなにさまざまな事例に辿りつくことができるとは思いませんでした。こんな街の語り継ぎ方もあるんだなぁ。
 


読み解くとキニナルがひとつ解明する宝物の地図みたいな絵本でした


ところで、この絵本の主人公は、市電の運転手さんで、彼が第二の人生を送る市電たちの元を訪ねていく話なのです。
 


『はしれぼくらのしでんたち』より


「うんてんしてるのはでんきちおじさん。
でんきち というのは でんしゃきちがい といういみの あだなさ
『でんしゃの ことなら なんでも きいてくれ』
と、おじさんは よく じまんする」(原文ママ)

こう称されるとしたら、市電の神様・長谷川さんかなぁと思って比べてみると・・・
 


長谷川さんとでんきちおじさん。メガネの感じなど、ちょっと似てる?


あ! でも運転手という設定もまた現実的なものだとしたら、元運転士・依田さんなのでは!? と依田さん著書の奥付をめくる。


依田さんとでんきちおじさん


きっと、依田さんかもしれないな。市電をこよなく愛した運転士さんだもの。

もう3人とも空の上の人なので、そうかどうかは聞けないけれど、物語が隠し持つナゾや、込められた歴史の多さに、読めば読むほど、街を歩けば歩くほど、楽しくなってくる本なのでした。
 


中央図書館で閲覧可能な依田さんの手書き記録。市電への愛情ひしひし!

書を持って、街へ出よう。
 
―終わり―
 
 
取材協力
鶴見ふれあい館 神奈川県横浜市鶴見区豊岡町14−27
浜名歯科医院 神奈川県藤沢市長後740
後谷自治会館 神奈川県横浜市緑区長津田みなみ台7丁目30−15

主な参考文献
はしれぼくらのしでんたち 長崎源之助・文 村上勉・絵 偕成社
チンチン電車始末記 依田幸一著 かなしん出版
横浜市電が走った街今昔 長谷川弘和著 JTBキャンブックス
ちんちん電車 ハマッ子の足70年 横浜市交通局
私のよこはま物語 長崎源之助著 偕成社
ひばりのいた町 長崎源之助著 偕成社
読売新聞 1972/9/2 1973/10/10
鉄道ファン 1972年7月号~1973年1月号
CIVITAS 活動記録(1975・11~2001・3)キビタスの会
20周年記念 あゆみ キビタスの会
電車のある公園で 市電1504をしのび 後谷自治会
後谷自治会 創立四十周年記念誌 後谷自治会記念誌編集委員会

謝辞
長崎和枝様、朝倉富久代様、神奈川近代文学館・渡辺恵理様、くらき永田保育園・鈴木八朗園長に長崎源之助さんに関する貴重な資料やお話を頂きました。ありがとうございました。

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  • 野毛山動物園にありませんでしたっけ?

  • 前回に続き感動です。
    あの読み応えのある大作、また読みたいなぁと思っていました。
    こんなにも早く、しかも続編が更にあるとは…
    これからも期待しています!

  • 市電保存館で新たにコンテンツとして展示できそうな?読み応えのある記事でした。市電は実に多くの人に愛されていたんですね。足を使っての調査、大変お疲れ様でした。

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