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鎌倉市関谷の県道312号にあるバス停「島の神」。名前の由来は何でしょうか。周辺を探しても神が祀られていそうな社もありませんし…「島の神」とはどのような神様なのでしょうか。(かまくライダーさん)

はまれぽ調査結果

縄文時代「島ノ神」周辺は海に近く、その海に浮かんでいた半島の上部にあたることから、「島の上(かみ)」と名付けられた可能性がある。

ライター:小方 サダオ (2017年07月20日)

鎌倉市の内陸部にある「島ノ神」地区

「島ノ神(しまのかみ)」という地名があるのは鎌倉市。

投稿にあるバス停の「島ノ神」は隣接する地区の地名から来ている。地区の面積は約32ヘクタール(横浜スタジアム約12個分)。鎌倉市の北西部に位置し、国道1号線や大船駅、藤沢駅に囲まれた場所にある。

まずはその現地を訪れてみた。

 

「島ノ神」という地区(Googlemapより)


「島ノ神」(青枠)(鎌倉市明細地図 昭和42年版)


県道312号線沿いの「島ノ神」の交差点


交差点から80メートルほど離れた「島の神」のバス停

 
「島ノ神」というものの、周辺を見渡してもこのすぐ近くには神社らしきものは見当たらず、また海から離れた内陸部に「島」という地名があるのも不思議だ。



周辺住民は「島ノ神」について何を知るのか

「島ノ神」の由来のヒントになる情報はないかと、バス停近くに古くから住むという畑仕事をしていた90歳前後の男性に声をかけてみたところ、「このあたりは島ノ神といいますがその由来は分からず、不思議に思っていました」とのこと。

なるほど。「島」というキーワードでなにか思い当たることは?

「子どものころ、天秤をかついで片瀬の江の島のあたりから魚を売りに来ている人がいましたし、私の父親も片瀬にあったヘルスセンターに自転車で通っていました。このバスが通る県道312号線は昔からあり海の方へと通じてはいましたが、しかしかなりの距離があります」

「神」については?

「神社でしたら、島ノ神の交差点から150メートルほど離れたところに、個人的に建てられた (居住する地域の氏子によるものではなく、個人の特別な信仰により崇敬される神社)住吉神社があり、また交差点の約700メートル先には、このあたりの鎮守として祀られている山王神社があります」という。
 


山の中腹にある山王神社


氏子によって管理されている

 
交差点近くから山の中腹をふと見ると鳥居を発見。「神」の由来のヒントを求めて、近くの民家を訪ねると、古くからこの地に住む初老の女性が出てきてくれた。話を聞くと、女性は個人で稲荷神社を祀っているほか、先ほどの男性が話してくれた住吉神社を設置した人物だという。
 


女性の家で管理する稲荷神社

 
女性によると「そこにあった畑では畑仕事の途中で事故が多く、この土地は良くないということでお祓いをしてもらい、神社を建てようとしました。そのころから畑仕事をすることが少なくなった上に、子どもが海を渡って上海で仕事をしていたため、船旅の安全を祈って海の神様の住吉神を祭ることにしたのです。毎年4月21日は、神主に祝詞を唱えてもらい、住吉神社のお祭りをしています。
 


小高い山の上に建つ住吉神社

 
境内にある『宝前』の石碑は、神社を建てる時に地中から出てきたため、隣に祀りました」とのこと。
 


住吉神社境内に祀られた「宝前」と記された石碑

 
先ほど発見した山腹の鳥居に関して伺うと、この女性の家が住吉神社とは別に管理する稲荷神社と関係があるよう。だが個人の所有であるため、近隣の神社が島ノ神の「神」と関わっているようには思えなかった。

次にバス停を北上したあたりにある、山のふもとの広い家に住む女性に「島ノ神」の由来について伺う。
「神」については特に情報は得られなかったが、「島」に関しては、「このあたりは縄文時代は海だったようで、50年以上前に交差点から1kmほど離れた山の岩肌から貝の化石が出たりしました。だから海を連想させる『島』がつく地名が残っているのかもしれません」と教えてくれた。
 


女性が子どものころ遊び場所にしていた山から貝の化石が出たという

 
「神」というキーワードに関してはヒントをつかめていないが、これまでの周辺住民への聞き込みで「島」については交差点付近が海の近くであった可能性が浮上した。地名の由来の真相に少し近づいた気がする。

ここが鎌倉市ということもあり、鎌倉市から近く弁財天が祀られていることで知られる「江島神社」を、「島ノ神」から連想した。ここは縄文時代から海の神様が祀られてきた場所なのだろうか?
 


「江の島」を連想させる「島ノ神」の地名

 


鎌倉の地名研究家のアドバイスから「島ノ神」の謎に迫る

鎌倉市の歴史に詳しく、「飛び地」の記事でもお世話になった玉縄歴史の会・関根はじめさんに助けを求めることにした。関根さんはなんと当日、玉縄歴史の会で作成した鎌倉市玉縄地区の古地名地図を用意してくれていた。

鎌倉市の地名の由来を研究されている関根さん。事前に電話で「島ノ神」という地名の由来をご存じか伺うと「分かりません」とのこと。しかし、ご自宅にお邪魔して2人でこの謎に挑戦してみることとなった。
 


古地名地図をもとに解説してくれた関根さん

 
まず、一般的に地名はどのように名づけられるのか。

「古い地名は、『大字(おおあざ)』『小字(こあざ)』『小名(こな)』に分けられます。大字は広い区画を表し、複数の小字を含みます。小名は小字をさらに細分化した地名です。小字は比較的広い地区を示すため、そこに住む多くの人たちに知られた地名になりますが、小名は個人やその周辺住民など一部の人しか理解できない呼び名であるのが一般的です。『島ノ神』の場合、大字が『関谷』・小字が『島ノ神』になります」
 


鎌倉市玉縄地区の古地名地図

 
「地名の由来に関しては、分かりやすいものと不明なものがあります。

古地名地図内の地名で例を挙げると、例えば『堂ノ前(どうのまえ)』、『堂ノ下(どうのした)』は、両者の真ん中にある『関谷地蔵堂』がその名の由来になっています」

 

「関谷地蔵堂(赤丸)」の近くにある「堂ノ前」「堂ノ下」という小名


交差点から約800メートル離れた関谷地蔵堂

 
「また『災難畑(さいなんばたけ)』という地名は住吉神社を建てたことから来ています」
 


「災難畑」という小名。前出の女性の話にも通ずる

 
「以上のように由来のはっきりしているものもあるのですが、『島ノ神』という小字に関しては分かりません」と関根さん。

由来を知る者がいないほど時代が古い地名だからなのだろうか。
 


大字「関谷」の中の小字「島ノ神」

 
次に、「島」「神」などこれまで地名の由来を追うヒントとしてきた漢字について説明してくれた。漢字ではなく音をヒントにしたほうが良いという。

「地名の漢字は当て字の場合もあり、だんだん変化して伝わっていることもあります。例えば”洗馬”谷戸(せんばやと)の例は有名で、古くは”戦場”、そして ”千葉”、 ”先馬”、などと変化していき、現在の”洗馬”になっています」

「地名は本来、口伝で伝わっていったので、漢字の表記よりも音が重要でした。漢字は付随するものだったため、昔のように読み書きが得意ではない人が多い場合は、簡単な漢字が当てられ、漢字表記は変わっていく可能性が高いです」
 


人によって変えられて伝わってきた「洗馬」の当て字

 
「そのため『島ノ神』はもともと神様の“神”ではなく、島の上(かみ)=島の上部だったのかもしれませんし、島(しま)から下(しも)へと字だけでなく音も変わり、下(しも)の上(かみ)=どこかの下の部分の上部にあたる、という意味とも考えられます」とのことだった。

「島ノ神」の名前の由来は依然不明なものの、時代の流れによって「島」「神」という漢字と音が変化する可能性も考慮し、柔軟に考える必要があることが分かった。
 
 

縄文時代の地形から「島ノ神」の謎に迫る!・・・キニナル続きは次のページ≫ 
 

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