鉄道延伸、バス減便・・・横浜市交通計画でキニナルあの計画はどうなる?
ココがキニナル!
横浜市都市整備局が「交通計画」の改定に向けた素案を公開して、市民の意見を募集中。どんな計画が掲げられている?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
臨海部での回遊性向上や、タクシーの利便性向上などが新たに記載。地域のバス減便などへの対策も!
ライター:はまれぽ編集部
電車、バス、タクシー、自転車・・・誰もが日々利用している、横浜市の交通機関。身近なものであるだけに、「もっとこうすれば良くなるのに」「ここだけはなんとかしてほしい!」と不満もたまりやすい存在だ。
一朝一夕に変えられないことは多いが・・・(写真は過去記事より)
横浜市の交通事情はこれからどう変わっていくのか。
その方向性をまとめた「横浜市都市交通計画」の改定素案が示され、意見募集を開始した。集まった市民からの声を踏まえ、横浜市としての未来の交通の姿が決められることになる。
公開されている素案は100ページにのぼる厚み。その中から、新情報を中心にトピックスをかいつまんでお伝えしよう。
横浜市の交通の課題
横浜市は2008(平成20)年に交通計画を策定し、計画に基づいて道路や鉄道などの交通施策を進めてきた。
今回の改正は、国の法令改正や計画の刷新などに足並みをそろえるとともに、社会情勢の変化に合わせ、新たに福祉・観光・防災など他分野との連携を重視。
横浜市の中期計画をはじめとした街づくり計画も踏まえて、2030年の未来の横浜の姿を見据えた。
中期計画資料より。次の世代への横浜をつなぐことがカギになっている
横浜市では高齢化や人口構成の変化に伴ってバスの本数が減ったり、老朽化した橋や道路などのインフラが危険さを増すなど、課題はたっぷりある。さらには横浜は坂道や階段が多いという地理的な問題もあり、交通体系を練り直すのは必須なのだ。
ロープウェイはどうなる? 観光客にも便利な多様な交通って何?
はまれぽでも概要をお伝えした臨海部のロープウェイ。もちろんまだまだ検討段階ではあり、交通計画にも具体的な内容が盛り込まれてはいない。実際に実現するかは不透明な部分もあるが、市として臨海部で「まちを楽しむ多彩な交通」を導入しようとしているのは確かだ。
まだまだ構想段階
みなとみらい周辺をはじめとする臨海部・都心エリアでは、来街者が多く訪れる施設やスポットも多い。交通計画では、駅からそれらの主要施設とを結ぶアクセス性を良くし、観光地間の移動をスムーズにする回遊性の向上を目指す方針が掲げられている。
現状では、バスのほかに徒歩や自転車が主な移動手段。専用道路の整備などによって、移動しやすい環境を充実させるほか、街を眺めながら移動できる水上交通など、移動自体を楽しく感じられるネットワークづくりを進めていく方針だ。
水上交通は普段とは違う視点を楽しめる(2015年、大岡川にて)
計画の中では連節バスを利用した「高度化バスシステム」のほか、「民間事業者の創意工夫による交通サービスの導入」によってエリアの回遊性を高めたいと記載。
これは今回の改定で新たに加えられた視点であり、臨海部のにぎわい促進のために、交通が担う役割が大きいことを示している。
その「新たな交通」にロープウェイなどの新たな乗り物が参入することになるのか、あるいはLRT(次世代型車両)などが採用されることになるのか。今後の検討からも目を離せない。
写真は富山県で導入されているLRT(写真はフリー素材より)
郊外部でバスやタクシーが充実する?
一方、そんな都心部と対極にあるのが、郊外部でのバスの減便など、生活に不便が生じることへの懸念だ。
横浜市は高度経済成長期以降、計画的な都市基盤の整備が追い付かない中で無秩序に都市が拡大してきた経緯があり、丘陵地や高台など交通が不便なエリアへの住宅立地が進んだ。そのため、階段や坂の多い高低差のある街が形成されている。
坂道の多さはこれまでも取り上げてきた
駅や買い物に出かけるときの足となるバスをはじめとした交通機関はまさに郊外部の生命線だが、将来的には減便や路線廃止が相次ぐことになりかねない。
少子高齢化や人口減少が郊外部から起こり始めていることとも関係している。通勤・通学で駅までバスに乗る人が減少すれば、収益を考えた時に路線の維持が困難になる。やがて公共交通サービスの水準が下がっていく恐れがあるのだ。
市バスには減便されながらも存続する「レア路線」も多い
一方で高齢者にとって、バスで移動できなくなるのは死活問題。自動車の運転は高齢になるほど難しくなり、また事故の危険も大きくなる。高齢者が外出をすることは寝たきりの予防、健康寿命の延伸につながるため、地域での移動手段の確保は福祉の面でも重要だ。
横浜市ではバス事業者が運行を続けるための協力を行っていく方針で、その一つが連接バスの導入。一度に運べる乗客の多いバスを都心部などで導入すれば、余剰のバスを地域での運行に回すことなどができるという。
郊外部にとっても助けになる?
生活に関わるバス路線などを維持するためにサポートを行う一方で、ビッグデータやICT技術を活用して、需要に応じた効率的な運行も促進したい考えだ。
さらには、既存のバス事業者が参入しにくいエリアでは、有志によるボランティアバスやNPO法人などの福祉有償運送など、現在の事業者以外の支え合いによる担い手の確保を進めるため、支援を行っていく。
大船駅の乗り合いバスなどの例もある
一方で、バスとともに有力な輸送手段になっているのが、家の前から駅や病院などの施設まで、ドア・ツー・ドアでの移動が可能なタクシーの利用。
バス停まで出歩くのが難しい人にとっても便利な交通手段だが、降車時まで運賃が分からないことや、配車の手間などで気軽に使えない面もある。
その解消に向けて、不特定多数を同時に運送する乗合タクシーの導入、渋滞や回り道の有無に関わらず目的地だけで運賃を決定する事前確定運賃などの議論が進められている。こうしたシステムを実現することで、より気軽にタクシーが使える環境を整えていく方針だ。
また、みなとみらいで実証実験が行われた無人運転車両を使ったタクシーなど、AIやIoT(モノのインターネット)を活用した新技術も、地域の生活を変えることにつながるかもしれない。
自動運転車両は、都心部での導入を経て郊外部での活躍も想定されている