磯子駅近辺に本屋が一軒もない理由は!? 横浜の書店事情に迫る!
ココがキニナル!
磯子駅近辺に本屋さんがないのですが、何故こんなことになったのか、またご近所の人はどこで本を買っているのか調べて下さい。(2tomさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
不況や電子書籍の台頭、書店の大型化などさまざまな要因によって書店が姿を消したと思われる。地元民の書店利用で最も多かったのは横浜駅周辺だった。
ライター:細野 誠治
連合会としての見解
神奈川県内を統括する書店商業組合からコメントがいただけないのならば、日本全国の書店を束ねるところは、どうだろう?
東京都千代田区神田にある「日本書店商業組合連合会」に聞いてみよう。
横浜を離れて東京へ向かう。
最寄りのJR御茶ノ水駅。本と古書の町・神保町も近い
連合会の入る書店会館ビル
こちらの2階に日本書店商業組合連合会がある
アポイントを取ると対面ではなく、お電話での回答を・・・という形になった。
まずは(全国の)書店の減少について。
連合会によると書店の数は1987(昭和62)年のピーク時の3万6000軒から半数以下の現在、約1万6000軒にまで減少をしたそうだ(組合に加盟している書店の数は同じくピークだった1987年の1万3000軒から現在は約4000軒まで減少)。
27年間で2万軒も減った。今、猛烈な勢いで日本から書店が消えているのだ。
連合会いわく、消費税の増税などにより書店の売り上げが減少しており、今年度の閉店(廃業)件数は記録的な数になると思われるという。
増税により、現状はさらに厳しい・・・
では横浜はどうだろう?
横浜市統計ポータルサイトを見ると・・・
最も新しい2012(平成24)年度分の統計によると、横浜市の「書籍・文房具小売業」(事業者数)は782ヶ所。対して約10年前の2001(平成13)年の事業者数は1223ヶ所と、この10年で441軒の店が姿を消した(約36%減!)。
データには文房具店も含まれているのだが、この減少数はただ事ではない(文具店の減少には、少子高齢化も関係がありそうだ)。
元々、人口の多い神奈川県は、人口あたりの書店数が日本で最も少ないと言われている。ワースト1位から、さらに数字を落としているということだ。
では減少の原因は何か?
「さまざまな理由が重なっての減少だと思われます。小さな書店などでは売り上げの半数がいわゆる“雑誌”です。でも今はコンビニで買えてしまうんです」
小さな書店の生命線は「雑誌」
「さらに図書館が、雑誌・書籍の貸し出しに力を入れるようになりました。自治体などが図書館の利用者数を上げるべく、資料としてのものから、手に取りやすい娯楽的な本を取り扱うようになったんです」
図書館でも雑誌などが読めるようになってきた
コンビニ、そして図書館の動向。冒頭に行ったインタビューだけでは出なかった見解だろう。
また、大きな原因に「問屋」の問題が上げられた。
まず、問屋から書店に本が届けられると、書店は最初に代金を支払う。売れ残ったものは返品(返本)をするのだが、お金が戻ってくるのは返品から2ヶ月後。その間を書店の蓄えで、しのがなければならないそうだ。当然、体力のない書店は潰れてしまう。
資金力が優劣を
もう一つ。
問屋は“売れる本は、売れる店にしか配らない”のだ。
売れなかった本は返品をする。すると次回から届く本の数が減る。品ぞろえが落ちると客足が遠のく。負のスパイラルの完成だ。
売れた(売れる)実績のある書店には、話題作や新刊本が次々と配本される。これは問屋が導入している配本のプログラムによるという。実績のある書店に優先的に本を届けるよう効率化されたもので現在、小さな書店などでは問屋に話題本の入荷リクエストをしても届くことが望めないそうだ。
これでは増々、小さな書店が追い込まれてしまう
本を売るための効率化が、格差を作り出してしまっているとは言えないだろうか?
「我々組合としては現在の配本のシステムを何とかしてほしいとは訴えているのですが・・・」と回答をいただいた担当者の方の声が印象に残った。
町の書店で本を買わないことが結果、読者に返ってきている
匿名の、ある書店員の証言
ここでもう一度、磯子に降り立ってみた。どうしても現場の声を聞いてみたい。
行動範囲を広げてみる。キニナルの舞台の磯子から、半径3キロほどまで聞き取り範囲を取った。
京急線屏風浦駅。こちらも町から書店が消えていた
減少が叫ばれている書店はどう思っているのだろう?
いくつかの書店に質問をぶつけるが、やはりコメントはいただけない。
そんななか一軒だけ「絶対に匿名」を条件に、取材に応じていただくことができた。答えていただいたのはチェーン店舗や大型書店ではない、現役の個人経営書店の方。
—どうして磯子や、その近辺では書店がない町があるんでしょう?
「元々、出版不況もあり倒産して、それっきりということがあるんですが、いろいろな問題が複合しているんですね」
さまざまな理由がある
やはり、そうなのか。
—複合といいますと?
「ネット書店の台頭です。本屋で本を注文すると、問屋に在庫がある状態で取り寄せに10日から12日間かかってしまいます。それがネットだと、在庫があれば翌日・翌々日配達が可能なんです。もう問屋はいらない時代なんです」
—なるほど。本を扱っているのに、本で他所にスピードで負けてしまっていると。
2010年代から本格化したスマートフォン、タブレットの普及により売り上げ減少が加速したとも
「そして、ちょっとした雑誌ならコンビニや駅のキオスクで用が足りる点もあります」
—なるほど。(やっぱり、そうなのか)
駅で雑誌が買えて、ことが足りる
「そして最大の理由は、(小さな町の本屋は)大型書店にすべて駆逐されてしまったんだと思っています」
連合会の言っていた「体力勝負」だ・・・。
—具体的にそれは、なぜでしょう?
「“どうせ本を探すなら品ぞろえの多いところがいい”というお客の心理ですよ」
“迷う楽しみも書店の醍醐味”ってヤツだろうか? 現職の書店員の言葉だけに重みがある。
と、ここで筆者が磯子駅前で実施したアンケート結果をお知らせすると・・・。
「この辺り(磯子近辺)のお客は、上大岡に流れました」
—そうなんですか?
京急、そして地下鉄の乗り入れるターミナル駅「上大岡」
「上大岡にはチェーンの大型書店が2軒あります。本を探すなら・・・と、かなりのお客が流れてしまいました」
大型書店が圧倒したのか
取材を終えて
難航した今回の取材。いろいろな関係者に話を振るが、なぜか皆一様に口が重かった。
ソースの明らかにできない証言をただ載せることは、物書きとしては慎重にならなければいけないと思っている。それでも、証言には現場の声として生々しいものがあった。
匿名の証言以外にも「子どもたちのお小遣い制がなくなり、親が金銭を管理するようになった」や、「昔の購買層だった男性が書店からいなくなり、女性が辛うじて利用している」「本が売れるのは年金支給日の翌日」などといった書店員の声が上がっていたのが耳に残っている。
本を読む時間自体も減りました
調査結果は、この記事に出た理由のすべてが。そしてここに載らなかった理由も、また一因として上げられるのだと思う。
個人としては、情報と選択肢が爆発的に増えたこと。このことによる淘汰なのでは? ・・・と思っていたり。
本と書店。減りこそすれ増えることはもう、ないのかも
皆さまは、どう思われて、どんな感想を持ちましたでしょうか? そして皆さまの住む街ではまだ、“町の本屋さん”は残っていますでしょうか?
—おわり—
横浜市統計ポータルサイト
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/census/kecen1202/
角さん
2016年06月22日 21時00分
町の書店の大きな売り上げは週刊誌などの雑誌。この客層がコンビニに持って行かれて商売になるわけが無い。この理屈は酒屋とかお菓子屋等の小売業全てに当てはまる。コンビニ一軒が出来るだけで商店街の各店舗の売り上げはがた落ちだよ。
Nicksさん
2016年06月21日 00時46分
横浜市の現在の人口増加分の多くは港北ニュータウンなど北部が中心となり、昭和40年50年代とは大きく様相が異なる。昔は根岸線が磯子、洋光台、大船と伸びるたびに沿線や丘陵部を造成し、排出される土砂で根岸湾や金沢沖を埋め立てる横浜6大事業の最盛期。人口急増は主に横浜南部であり、その主役は地方から来た団塊世代だった。港北ニュータウンは造成中で田園都市は分譲が始まった頃で北部の人口増が始まるのは昭和60年代からだろう。団塊ジュニアが成人し他区へ移住し、新規住宅分譲が完了した頃から横浜南部の人口停滞・高齢化が顕在化してきたと思う。書店に限らず様々な店舗が減少していくのは絶対的な若年人口が減少しているからに他ならない。横浜市でさえ商店街が消滅するエリアが発生することは決して珍しい時代ではないと思う。再開発が無く新規流入人口が無いエリアは横浜市内でも経済活動や賑わいが減衰する可能性は否めない時代だと思う。
Hiro-Cheungさん
2016年06月19日 23時02分
「どうせ本を探すなら品ぞろえの多いところがいい」「迷う楽しみも書店の醍醐味」というコメントは真理ですね。私も大型を利用します。欲しい本があっても品揃えが悪いお店だと無駄足になるし、さらに目当ての本以外にも「あ、これ読みたい」って思える本に出逢える(ハンティング)する楽しみも味わいたいので。ネットを利用する時は、もっぱらBOOK OFFやTUTAYAの中古コーナーで目当ての本がみつからない場合に限っています。