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見上げても何もない? 野毛にある謎の看板「上空注意」の意味するものは? 

ココがキニナル!

野毛の叶家さん近くの小路に上空注意という看板が有りますが、見上げて何も有りません。横浜市の中土木事務所となっていますが、何を注意するよう訴えているのでしょうか?(Aloha.Rickyさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

“上空注意”は主に通行する車両に呼びかけたもの。3.8メートル以下の“低い電線”に、車体や積荷が接触しないよう注意喚起する重要な標識だった。

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ライター:野々村 カオリ

中土木事務所にて真相判明
 


中土木事務所、きれいな建物です


お答えくださったのは管理係長の小島さんと吉澤さん。
 


職員の皆さんは全員ブルーのユニホーム


お話を伺うと、野々村が電話した際、直ちに現場を確認し、看板の端っこが剥がれかけていたので設置し直すため、一時的に外したとのこと。素早い対応に頭が下がる。

そして肝心の「上空注意」の意味はというと、「道路交通法では積載物を含む車両の高さを3.8メートル以下にするよう定めています。そこで3.8メートルに満たない低い電線が設置されているところは車体や積載物が電線に引っかかる怖れがあるので、“上空注意”という注意喚起をしているんです」とのこと。

しかし、なぜそんな“低い電線”があるのだろうか? とお聞きすると、「有線・ケーブルテレビなど何らかの用途で電線を設置する場合には、該当区の土木事務所に図面を書いた申請書を提出し、〇〇メートル以上という指示を得て設置することになっています。しかし以前は指示が守られていない場所があったようで・・・」
 


野毛だけではなくあちこちにこの看板が設置されたという


なるほど、車や車の積荷が電線に引っかかったら確かに危ないよね。しかし、このときの野々村はまだ「ふうん」という程度の反応で、実に呑気であった。青ざめる思いになったのは、次のお言葉を聞いてからだ。

「実は、2006(平成18)年に旭区でケーブルに積荷が引っかかって街灯が倒れ、人が亡くなっているんです。それを機に横浜市で一斉点検があり、基準を下回っているところに“上空注意”の看板を設置し、業者に是正するよう指導がありました。中区では90箇所ほど設置しました。“上空注意”の看板は状況を改善した段階で外されましたが、野毛の看板は電線設置者が確認できないため対応ができず、現在も“上空注意”の看板で注意喚起をしているんです」

なんと、死亡事故が起きていたんです・・・
 


呑気だった野々村の胸に、ズシーンと響くものが・・・


実はこの事故を調べる過程で野々村は、ようやく事の重大さを知り、遺族の方に当時のことを思い出させるような記事を書いていいのだろうか、と思い悩んだ。

しかし、“低い電線”にそんな危険性が潜んでいることを、おそらく私だけでなく多くの人が感じていない。だとしたら、ここで“上空注意”についてお伝えすることはやはり意味があることなのかもしれない。そう思い、今、この記事を書かせていただいている。




当時の新聞記事によると・・・

朝日新聞の2006(平成18)年11月4日の記事によると、旭区の市道でトラックが積んでいたパワーショベルのアームが“低い電線”に引っかかり、街灯を倒し、その街灯に直撃された1歳の女の子が亡くなったそうだ。パワーショベルを積んだトラック全体の高さは4.2メートルに及び、道路交通法で定められた3.8メートルを超えていた。
 


標識を無視した行動が悲惨な事故を招いた※(一部被害者・加害者の名前を伏せています)


また、2006(平成18)年12月27日の毎日新聞の記事には、電線の設置業者は横浜市から4.5メートル以上という設置許可を得ていたにもかかわらず、実際の電線は4.19~4.25メートルの高さに取り付けられていたと記されている。
 


基準の確認を怠るという重大な過失


4.2-3.8=0.4、4.5-4.19=0.31。・・・40センチと31センチ。
 


左は30センチ、真ん中は45センチ定規、右はiPhoneの大きさ


ほんの40センチ高いものを積んでしまった。ほんの31センチ“低い電線”を設置してしまった。その2つの不正が重なった。言いかえれば、たった40センチと31センチの不正をしなければ、尊い命が失われることはなかった。

積載物を含む車の高さ制限3.8メートル以下という決まりは道路交通法22条3号に、電線の高さ4.5メートル以上は道路法施行令11条の2に定められている。



事故後の対応は・・・

横浜市道路局道路部管理課の日詰(ひづめ)管理課長に伺ったところ、2006(平成18)年の事故直後、同年11月6日には横浜市の土木事務所すべてに“低い電線”再点検、11月8日には設置業者に“低い電線”是正の通知が出されたとのこと。

これにより、基準を満たしていない“低い電線”が横浜市内で1万8874箇所あることが判明し、2008(平成20)年5月31日までに土木事務所と業者の対応によって99.7%が改善された。ただし、51箇所は電線設置者が不明のため未だ改善できておらず、そのなかの1箇所が野毛の“上空注意”看板設置場所だった。



再び、現場へ

一時外されていた“上空注意”が再び設置されたとお聞きして、再び現場へ赴いた。
 


ピカピカの新品の“上空注意”


「3.6メートル」ということは、つまり車の高さ制限3.8メートルに20センチ足りない“低い電線”がある、という注意喚起。

この場所は狭い路地だし、そんなに車が通るようなところではない。しかし、リスクは避けなければならないし、公共の道路局や土木事務所では、私たち市民が気付かないこうした危険を予測して、標識を掲げている。

公共のルールは守らなければいけない。そして、標識はやはりチェックしなければならない(当たり前なんだけど・・・)。改めてそう思わされた取材だった。



取材を終えて

“上空注意”の看板は、“低い電線”に対する主に通行車両への注意喚起の標識だった。我々は、公共のルールを守り、標識をしっかりチェックするという当たり前の義務を果たしていきましょう!

そして、土木事務所の方の青いユニホームを見たら、心の中でそっと感謝しましょう!


―終わり―
 

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  • 石松の早乙女さんの生前の写真がこんな所で見れるとは思いませんでした。ありがとうございます。

  • 事故の原因が警備会社の新設ケーブルだったなんて、ガードマンの教育だけでなく、設備担当者の現場確認にも注意をしておくべきでしたね。

  • 事故からしばらくして仕事で旭区へ行くと、路面に「上方注い」の表示がありました。(写真→) http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/34/7699f58b961756dfd187380a2a4505e6.jpg 看板とどちらが見やすいかは現場判断だったのでしょうか。不正が重なり事故が起こる。新聞記事の写真の隅に写る「美しい国日本?」が皮肉めいて見えます。

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