県内に6施設

東洋ゴム工業（本社：大阪市、山本卓司社長）は2015（平成27）年3月13日（金）、同社子会社の東洋ゴム化工品（本社：東京都、藤巻勝己社長）が製造・販売した、地震による建物の損傷を防ぐ免震装置のゴムが国土交通省の認定基準を満たしていなかったことを発表した。

併せて、一部の装置について技術的根拠がない性能評価基準を国交省に申請していたと発表した。
　

ホームページ上で謝罪文を掲載した東洋ゴム工業（同社ホームページより）
　

この問題で、横浜市を含む神奈川県内でも6施設で基準を満たしていない免震装置が使われていたことが分かった。

横浜市建築安全課によると、市内で基準を満たしていない東洋ゴム化工品の免震装置が使われていたのは、中区の「神奈川芸術劇場（KAAT）」と市内の民間ビルの計2施設。
　

免震装置に不備があったKAAT
　

KAATについて、市は建築確認などを行う立場にあり、2010（平成22）年に同社の申請した図面に基づいて検査済みの証明を発行した。県は「申請書面の段階で（装置が不適合であることを）見抜くことは不可能に近いのでは」としている。

その上で、市は民間ビルについて「KAATもだが、直ちに安全に支障があるものではなく、（ビルの安全性に対する）風評被害を考慮し、公表しない」としているが「不特定多数が出入りする商業施設のような建物ではない」という。
　

民間施設については非公表
　

KAATは神奈川県と日本放送協会（NHK）が区分所有（＝1つの建物に独立して入居する場合、それぞれ区分された部分を所有すること）する複合施設。2011（平成23）年1月に開館したが、同年3月に発生した東日本大震災で大きな被害はなかった。

神奈川県県民局くらし県民部文化課によると、13日に東洋ゴム工業からKAATの施主である都市再生機構（＝UR都市機構、本社：横浜市中区）に基準を満たしていない装置を使用していた旨の連絡があり、県はURを経由して事実を確認したという。
　

県は施主であるUR経由で事実を認知
　

同課によると、KAATは地上10階地下1階建てで、地下部分にある建物を支える82基の免震装置はすべて東洋ゴム化工品のもので、そのいずれもが国土交通省の基準を満たしていないものだった。
　

免震装置のゴムの構造（東洋ゴム工業ホームページより）
　

同課は「直ちに安全に支障があるわけではない。こちらから謝罪を求めるというのも変な話だが、現時点（3月17日正午）で東洋ゴム工業からの説明は一切ない」と憤りを隠さない。

現在KAATでは1年ほど先まで講演が決まっているが、基本的に中止する予定の演目はない。しかし、東洋ゴム工業が構造計算を行い、結果に不備があり、改修などが必要になった場合には「結果を考慮して、その時点で対応を検討する」という。
　

県は早急な対応を求める考え
　

KAAT以外の施設について、県は「特定行政庁（＝建築確認を行える職員を置く自治体および、その首長※神奈川県は横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、藤沢市、厚木市、平塚市、小田原市、秦野市、茅ヶ崎市、大和市の12市）にある民間のビル」という以外は、横浜市と同様の理由で詳細を公表しない考えだという。

東洋ゴム工業は「今後、施工者らと建物の構造計算を行い、安全性を確認した後、結果に応じて必要な措置を取る」としているが、県は「利用者の安全安心の確保のため、早急に建物の構造計算をし、安全性を確認するなど必要な対応を求める。おおよそ1ヶ月がめどになる」との見方を示した。

取材を終えて

神奈川県や横浜市の説明によると、東洋ゴム工業の装置は国土交通大臣の認定基準は満たしていないものの、直ちに安全性に支障があるものではないという。
とはいえ、国の基準を満たしていない装置を使っている施設に不安を覚えるのは当然の感情だと思う。

同社には早急な安全確認などの対応と、自治体には市民の安全安心を守るための万全の策を期待したい。


―終わり―