【横浜の名建築】横浜港大さん橋国際客船ターミナル
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第3回は、横浜港大さん橋国際客船ターミナル。曲面を多用した斬新でユニークなデザインは緻密な計算の上に設計されていた。
ライター:吉澤 由美子
インパクトあるデザインと多目的に使えるフレキシビリティー
(続き)
室内の空調は、張り合わせた床の木の隙間から行っているが、大さん橋ホールの奥のみ、床から持ち上がった壁の上部に空調のための細長い穴が並んでいる。
ホールの床と天井はゆったりした曲線を描いて支えあう
ホール奥の壁上部にある空調の穴
印象深い天井は、日本の折鶴の首の部分からヒントを得たもの。
幾何学的ながら、祈りといった敬虔な思いを彷彿させる。
巨大な千羽鶴が折り重なっているような天井の構造
柱を入れずにこれだけ巨大な建物を支えているのは、三角形が組み合わさったことで生まれる強度だ。
エントランスのガラスは面ごとに角度が変えてあって、複雑なリズムを感じる
側面のガラスは山下公園側が9度、みなとみらい側は1度の傾斜がつけられている。
この角度の変化が、曲線的な全体のフォルムをより生かしている。
山下公園側のガラス。角度があることで風景の映り込みが面白い効果を出している
ガラスはどれも15~20mmという厚さを持ち、強風にも耐える仕様だ。
建築素材の種類が少なく、装飾を極力排した全体のデザインを邪魔しないよう、案内表示は床や壁に直接ペイント。
ベンチやライト、手すりなどもとてもあっさりしている。
3塔が見えるこの場所は、結婚式の記念写真に人気の場所
下を覗き込むと、広場の真ん中に3塔のペイント
海外から客船が入出港する時だけ使われるCIQ(税関・出入国管理・検疫)には、荷物用のベルトコンベアなどが設置されているが、普段は床下に収納され、多目的ホールとして利用できるようになっている。
出入国ロビーの先、パーティションの奥がCIQ
ベルトコンベアは出入国ロビー入口の左端にも設置されている。
下りスロープから見える黒い部分がベルトコンベア
大さん橋は、それ自体のみのデザインではなく、横浜港全体から大さん橋を含めて眺める景観をも考えて設計されている。
横から見ると3層構造がよくわかる。白いものは、ボーディングブリッジ(渡船橋)
客船が入出港する時も趣があるが、普段の大さん橋は魅力ある建物自体をじっくり味わいながら横浜港のパノラマを眺めることができる。
取材を終えて
広々とした飾りのないシンプルな空間。
ともすれば無味乾燥になる要素を持ちながら、曲面を多用し、左右対称を少し崩したデザインがされていることで、どこか有機的な息遣いを感じる。
くじらやマンタのように巨大な海洋生物を思わせるフォルム
評価の定まっていないものでも、自分たちがいいと思えばいち早く取り入れる。
いつの時代も、横浜が魅力的な街であり続ける理由の1つに、そんなハマっ子の進取の気性がある。
寝転んで空を見上げると、本当にくじらに乗って大海原を漂っているような気分に
斬新でユニークな大さん橋のデザインは、そんな横浜を象徴するにふさわしいと改めて感じた。
― 終わり―
横浜港大さん橋国際客船ターミナル 公式サイト
http://www.osanbashi.com/
毎週日曜日、午後2:30~、ターミナル見学ツアーが行われています。
詳しくは公式サイトで
◆お問い合わせ先
大さん橋管理事務所(1F 防災センター)
〒231-0002 横浜市中区海岸通1-1-4
Tel.045-211-2305 Fax.045-212-3872
ootaharaさん
2012年01月23日 13時13分
今回のレポートは残念でした。屋上からの赤レンガ倉庫や山下公園の夜景をレポートしなければ、大さん橋の魅力は伝わらないのでは、と思います。屋上デッキ「くじらのせなか」は悪天候時以外は24時間開放、入場無料なのが良いですね。