協会も身動きの取れないコロナウイルス対策

こういった社会情勢の中、今後、多くの方に利用してもらうには、コロナウイルスに対する対策が求められると思うが、実際には何か具体的な対応を行っているのだろうか。
石川さんは、「現在、行っている事は、タクシードライバーの乗車前の体調チェックとマスク着用の推奨、車両の除菌の推奨。それと外国人を含めた、手洗いアピールを行っています」という。

　

外国人客にも手洗いを徹底するよう促している
　

大野さんは、「マスクや除菌は義務化したいところなんですが、全タクシードライバー、全タクシー車両に対応できるだけのマスクと消毒液の確保ができていません。手配できるまで各タクシー会社に努力目標として対応してもらっているところです」とのこと。

タクシー会社もウイルス感染対策のマスクや消毒液の手配に奔走しているものの、なかなか入手は難しく、個々のタクシー会社の判断に委ねている部分が多いようだ。
それでは、さらなる現状を理解するために、実際の現場であるタクシー会社に取材に行ってみることにした。

自粛発言以降に利用客減少

次に取材へ伺ったのは、横浜に拠点をおき、心霊スポット巡礼ツアーなどのさまざまなユニークな取り組みで知られる三和交通株式会社。取材に対応してくれたのは、広報の小澤千秋（おざわ・ちあき）さん、広報兼横浜駅前営業所係長の小関正和（こせき・まさかず）さんだ。ちなみに、小澤さんはYouTubeの三和交通チャンネルにチーちゃんとして出演されている。

　

左より小澤さん、小関さん
　

まず運賃改定による利用者の反応について伺うことにする。協会はコロナウイルスで外出自粛の雰囲気が出て以来、利用客が激減し、運賃改定の正しい反響を得られなかったとのことだったが、三和交通はどうだったのだろうか。
「協会と同意見です。当社の数字でも料金改定当初は、あまり大きな影響はなく、政府の外出自粛発言があってからお客様が激減しました」と小澤さん。

協会と同様にコロナウイルスによる影響が大きいようだが、その状況下で、協会の大野さんが話していた「ドライバーの待遇向上」「ユニバーサルデザイン車両の導入」「他言語対応タブレットの後部座席導入」「ネット予約に伴う相乗り対応」などへの対応は進むのだろうか。
小澤さんは、「長距離の運賃が上がるので、ドライバーの売り上げも上がります。その売り上げの向上がそのままに給料へ反映されるので、待遇向上は間違いありません」と話す。
また、小関さんは、「タクシー車両は、全国的にトヨタのジャパンタクシーへと移行することが決まっています。当社でも少しずつ導入を進めています。実際、この車両はユニバーサルデザインなので、お年寄りからは乗りやすい、外国人をはじめ身長の高い方からも快適だという声をいただいています。それとタブレットも一部導入しています。それと相乗りタクシーについては、まだ未定ですね」と、新たな取り組みの状況を話してくれた。

　

三和交通でも導入している、ユニバーサルデザインのジャパンタクシー車両
　

新横浜駅から日産スタジアムまで4人で乗れば1人125円！

では、改めて運賃改定により新しく導入された初乗りワンコイン500円については、どう考えているのだろうか。
小澤さんは、「新しい試みとして期待しています。例えば学生さん。1.2kmまでは500円ですから、学生でも4人で乗車すれば1人125円で、バスよりも格安です。これをきっかけに、高いイメージのあるタクシー利用のハードルを下げていただいて、将来のタクシー利用者を開拓していければと考えています」とのこと。

ちなみにワンコインのおすすめルートを伺ってみた。
小関さんは、「新横浜駅から日産スタジアムなどは、まさにワンコインですね。混雑にもよりますが山下公園から港の見える丘公園も、そのくらいですね」と観光などで便利に利用できそうなルートを教えてくれた。

　

新横浜駅から日産スタジアムの中途半端な距離がワンコインで行ける
　

実はマスク購入の穴場だった三和交通タクシー

次にコロナウイルスの対策について。三和交通ではマスクや消毒液の状況はどうなのだろう。
小澤さんは、「なんとか確保できています。実は当社のタクシーは、マスクとミネラルウォーターとビニール傘の車内販売を行っているんです。そのため、もともとマスクはかなり在庫がありました。ただ残念ながら、今後は、ドライバーのマスク確保を最優先に行っています」という。

そうなると、今後新しくマスクが入荷される予定があるかキニナルところだが・・・。
小澤さんは、「正直、この状況で再入荷の予定は立っていません。ただ三和交通ではSNSで情報発信を行っているので、そちらをチェックいただければ、最新情報がつかめると思います」と教えてくれた。

考えられる最良の感染対策を実行する三和交通タクシー

続いて、コロナウイルスの具体的な感染対策についても伺った。
小澤さんは、「まず運転手の衛生管理、健康管理に気を配っています。事務所もまめに次亜塩素酸水での殺菌を行っています」と話し、続けて小関さんは、「ドライバーは出社したら体温を測り、マスクを着用し、血圧を測って、問題がない場合のみ勤務に入れます。体温と血圧で、体調不良を確認できます。もちろん事務所に戻るたびに、手洗い、消毒も行っています」とのこと。

　

血圧を測るドライバーさん
　

小澤さんは、「タクシー車両についても消毒は行っています。事務所内と同じ、次亜塩素酸水で消毒をしています。この次亜塩素酸水がコロナウイルスを殺菌できるという研究成果は出ていないのですが、これはノロウイルスやインフルエンザウイルスの殺菌にも用いられる消毒液です」

　

かなりの重装備で行われている消毒
　

車内を消毒しお客様に安心して利用してもらおうという
　

小関さんは、「これだけの消毒を行うには、やはり事務所に戻ってこないと対応できません。その代わり、営業中はお客様が降車されるたびに窓を全開にして換気を行い、空調対策を徹底しています」と話してくれた。

コロナウイルスに関して研究が進んでおらず、完璧な対処方法はない中で、三和交通は、できる範囲で最良の対応を行っていると感じられた。

　

がんばれ！　神奈川県のタクシー会社の皆さん！
　

取材を終えて

運賃改定後の利用者の変化は、コロナウイルスの影響により、把握することはできなかった。ただ、このコロナウイルスの騒動がいつまで続くかわからない状況下で、タクシー会社はできる範囲で最良の対応を行っていた。
そして、今回の改定により生まれた「初乗りワンコイン」や「2km以内なら値下げになっている」などの新しい利用法に期待したい。

ちなみに三和交通といえば、毎年、エイプリルフール企画が人気だ。これまで「ロボット（の）タクシー」や「火星まで行くロケットタクシー」などが登場しているが、2020（令和2）年も鋭意企画中らしい。コロナウイルスの鬱屈（うっくつ）する騒動を笑いで吹き飛ばしてほしいところだ。


－終わり－


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