美しく燃える森

ほほう、これはまた素晴らしい景色だなあ。まさに森林浴だね
　

と階段を上っていくと途中にひと休みするにはぴったりのベンチを発見
　

「よし、水分補給するとしよう」と言い大仏はリュックから水筒を取り出した
　

4月8日が誕生日だったんだけど、眷属（けんぞく）がプレゼントでこれをくれたんだよ
　　　

参考までに眷属とは「仏や菩薩に従うもので、薬師仏の十二神将、不動明王の八大童子の類（大辞林）」である。
　

まるで今日のことを予知していたかのようだねえ。ああ冷たくて美味しい
　

見下ろせばさっき渡った木の橋が思えば遠くへ来たもんだ　海援大仏
　

森にいるとつい撮ってしまうこのカットされど木漏れ日はいつもやさしい　大仏
　

「サンキュー眷属」と呟いて、大仏はまた階段を上っていく
　

視線を下に移すとただただ深い森が広がるばかり
　

やがて坂道を上りきると視界が開け「鎌倉方面」の頼もしい案内が登場
　

ここからは「鎌倉天園（てんえん）」の文字を追って歩いていけばよい
　

そしてここからしばらくは尾根道を歩くことになる
　

この尾根道は武蔵と相模の国境で、「たたら師」が通っていたという
　

たたら（踏鞴）とは足で踏む大きな鞴（ふいご）で風を送る道具で、炉を熱して鉄を溶かすのに用いられた。円海山周辺には古い「たたら」の遺跡がいくつか発見されているという。
　

古の職人たちが草鞋でこの山道を踏んだのかと思うと何とも感慨深い
　

円海山周辺の森は「かながわの美林50選」にも選ばれている
　

その後も「鎌倉天園」の文字を追い尾根道を歩く
　

するとふいに森が開けて青空と眩しく照り映える遠くの森が見えたりするので
　

条件反射で手を合わせてしまう大仏であった
　

その後も菩提樹を思い出して木の根でひと息ついたり
　

突然目の前に屋根が現れて人里がすぐ近くまで迫っていたことを知ったり
　

木の根の洞（うろ）に誰かが置いたファンシー地蔵を見つけて喜んだりしながら
　　

ひたすら鎌倉天園方面へと歩みを進めていく大仏であった
　

それからこのハイキングコースはランナーも少なくない
　

ランナーのほかにも犬を連れている人や赤子を抱いた家族、お年寄りの夫婦などともよくすれ違う。金沢文庫方面や近隣の住宅街からこの山道に入ってくるルートはいくつもあるので、横浜から鎌倉までというような長距離でなくても、気軽に山と森を楽しむ人も多いようだ。
　

などと言っていると分岐点にやってきた
　　

ここも「鎌倉天園」とある右側の道へと入る
　

そして歩くこと約10分で
　

金沢市民の森へ
　

大仏、横浜最高峰の頂に立つ

そして右側に相変わらず見え隠れする住宅街を横目で見ながら歩くこと10分
　

いや10分もたたないうちに見えてきた。「おお、あれだよあれ」と大仏
　

この世をばあの世とぞ思ふ横浜の高き頂に立つと思へば　藤原仏長
　　

「さあ、どんな眺めが待っているんだろう」と大仏は軽快に階段を上った
　

「意外とあるな」と大仏は歩調を緩めた
　

そしてついに山頂に到着


横浜市最高峰大丸山。標高156.8メートル
　

やあ、絶景かな絶景かな。156.8メートルとはいえさすが横浜最高峰
　

おや、あれは八景島シーパラダイスのジェットコースターじゃないか
　

あのジェットコースターはうっかり油断して乗るとものすごく恐いって聞いたことがあるぞ、いつか乗ってみたいなあ、あとこの近くで夏の終わりにヨットの レースもやっているんだっけ、などとひと通りはしゃいだあと、ベンチに座った大仏はリュックから大きなおにぎりを取り出した。
　

今朝、地蔵の家でつくってきたんだよ
　

横浜でいちばん高い場所で食べるおにぎりだと思うと格別だなあ
　　　

では、いただきます
　

うん、なかなか美味しい。初めて自分で自分に大きな丸をあげたいです
　

さあ、腹ごしらえは済んだよ。喉を潤して出発するとしよう
　　

横浜最高峰の景色を楽しんだ大仏は、達成感とともに長い階段を降りた
　

鎌倉編に続く

今回歩いたのはここからここまでである