「未納生まない仕組み」

2011（平成23）年度から2012（平成24）年度の間に会計の方法が変更して数字が大幅に変わったのは前述の通りだが、直近3年間で未納額が2倍以上に膨らんでいる。この点については、前年度の未納者の繰り越し分が含まれているためだという。
　

市教委も「増えている」印象を持っている（写真はイメージ。フリー画像より）
　

大野担当課長らが「（未納者が）増えているという感覚は受けている」と話すという理由については、これまでは横浜市内約350小学校の担当が未納の徴収に当たっていたが、公会計化後は市教委が4人で担当。

大野担当課長は「直接、学校生活と関わりがなかった市教委が徴収を行うことに距離感を感じる保護者も少なくない」こともあって、徴収が進まないケースもあるという。
　

「学校の先生」と「市教委」の「距離感」も問題
　

また、大野担当課長は「会計を変更した初年度は口座登録のうっかり忘れも多かったように思うが、未納が積み重なっている家庭は生活に困窮していたり、ネグレクト（育児放棄）など問題を抱えている場合も多い」と指摘。

生活困窮世帯の場合については、生活保護や学校に関する費用を補助する「就学援助」といった支援制度を活用するように案内するなど「未納を生み出さない仕組み」を考えていく方針。既に未納になっているケースについては、法的手段を通じて未納の解消を図る。
　

未納が積み重なると法的手段も
　

埼玉県北本市では、給食費の未納が3ヶ月続いた場合は未納が給食に及ぼす影響を保護者に説明。それでも支払いに応じない場合には「給食停止もあり得る」との立場をとっている。

これについて金井係長は「給食は十分な栄養を摂取するというだけでなく、クラスメートと一緒にご飯を食べるなど、食育の意味もある。未納は子どもの責任ではない。子どもから給食を奪うことは考えていない」と話している。
　

給食には食育の意味もある（写真はイメージ。フリー画像より）
　

市教委の取り組みもあり、0.89%だった2012（平成24）年度分の未納率は、2015（平成27）年6月に0.5%まで解消したが大野担当課長は「今のままでいいとは決して考えていない。学校給食は、みなさんからいただいた給食費で運用しているということをアピールしつつ、引き続き未納の解消を目指していく」と話していた。

取材を終えて

制度切り替え時に口座手続きを忘れたという程度であれば問題ないが、貧困や育児放棄などの虐待などの理由で給食費を納めたくても納められない状況にある家庭もある。

また、昨今、支払う余裕があるにもかかわらず、意図的に給食費を支払わない保護者が問題視されている。

学校給食法では、義務教育学校は児童生徒に給食を実施すること、そして第11条では、その給食を作るための設備以外は保護者の負担とされている。

経済的に支払いが厳しいのであれば、救済する制度はある。

さまざまな事情はあるだろうが、「未納は子どもの責任ではない」という言葉を、当事者たる親はどういう思いで受け止めるのだろうか。


―終わり―