川崎にかつて存在した「ウイスキー蒸留所」の歴史とは?
ココがキニナル!
かつて川崎にウイスキーの蒸留所があったそうです。どのような経緯で建てられ、なくなったのか取材してください。(ときさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
川崎のウイスキーの蒸留所は、1935年に操業開始。2003年にウイスキーの消費量は下り坂となり、川崎工場の生産機能が終了し工場閉鎖となった。
ライター:すがた もえ子
そして三楽オーシャンへ
1962(昭和37)年にはウイスキーブランドのサントリー、ニッカと肩を並べて製造・販売を行っていたオーシャン株式会社と合併。国産オールドウイスキー史に名前を残す三楽オーシャン株式会社となった。
オーシャンとの合併後はウイスキー部門が設置され、生産体制の再編成が行われた。原酒の製造は軽井沢工場に集中し川崎工場では主にびん詰めが行われていた。
1962(昭和37)年のオーシャン東京工場(東京都新宿区)(『三楽50年史』)
1985(昭和60)年ごろの三楽酒造川崎工場(『三楽50年史』)
ウイスキーに関する川崎工場の大まかな歴史は表の通り※クリックして拡大
2003(平成15)年には川崎工場の生産機能が終了。工場閉鎖となった。
川崎工場閉鎖の理由については、メルシャン社内の「工場再編プロジェクト」による活動の一環で閉場となった。当時いくつかあった工場機能を藤沢工場に一括し集約したためだという。
その後メルシャンは、2007(平成19)年にキリンホールディングスの事業会社となり、キリングループとなる。
「オーシャンラッキー ゴールド」(提供:KIRIN)
キリンで販売されているウイスキーでは、「オーシャンラッキー ゴールド」が現在唯一「オーシャン」の名前を受け継いでいる。こちらはペットボトル入りのビックサイズのみの販売だ。
現在はもうない川崎工場で作られたウイスキーは飲むことはできないのか? そう思いキリンへ伺うと「当社では保存していません」とのお答えだった。
川崎工場の原酒を追って
川崎で作られたウイスキーはどんな味だったのだろう。ご存じの方を探し、朝の連続テレビ小説でウイスキー考証の監修を務めた土屋守氏が代表を務める「ウイスキー文化研究所」へお話を聞いてみた。
すると「現在、埼玉県にあるベンチャーウイスキーの秩父蒸溜所で(川崎工場の)原酒を保管しており、『シングルグレーン川崎』として発売しています」とのお答えをいただけた。
秩父蒸溜所(提供:ベンチャーウイスキー)
秩父蒸溜所はベンチャーウイスキーという会社の蒸留所だ。
埼玉県にある醸造会社、東亜酒造・羽生蒸溜所創始者の孫である肥土伊知郎(あくと・いちろう)氏が創業し、「イチローズモルト」ブランドを展開している。予約のみで商品が完売してしまうこともあるといい、国内外にファンがいるという。
ラベルには「KAWASAKI」と書かれている(提供:J's Bar)
秩父蒸溜所の広報へ問い合わせると、2009(平成21)年に三楽オーシャン時代の川崎工場で蒸留した原酒を使った製品があるという。シングルグレーン川崎の「1982カワサキ」「1981カワサキ」「1976カワサキ」を発売していたそうだ。
シングルグレーンとは、単一の蒸留所の原酒だけでできたウイスキーを指すもの。シングルグレーン川崎は、100%川崎工場の原酒を使用していたものになる。
ラベルには「Distillery KAWASAKI(川崎蒸留所)」の文字(提供:J's Bar)
原酒入手の経緯の詳細は契約上お話できないということだったが、「今後川崎の原酒を使った商品は発売されるのか」と伺うと「原酒はほとんど残っておらず、今後ブレンドされる商品が出るかは未定」とのこと。
シングルグレーン川崎1982(提供:J's Bar)
最後にベンチャーウイスキーの方からご紹介いただいた、池袋にあるバー「J's Bar」の蓮村さんから味についてお話を伺うことができた。
蓮村さんは川崎工場についてご自分で調査されていて、詳しい方である。
川崎工場のウイスキーはシェリー樽で熟成されたのが特徴。コーヒー豆やカカオのような甘い香りがしたという。
取材を終えて
川崎にウイスキーの蒸留所があったのは本当だった。残念ながら今回川崎工場の原酒を飲むことはできなかったが、どこかのバーでオーシャンウイスキーや川崎グレーンに出会うことがあったら、その時はぜひ試してほしい。
―終わり―
取材協力
KIRIN
http://www.kirin.co.jp/
ウイスキー文化研究所
http://scotchclub.org/
ベンチャーウイスキー
住所/埼玉県秩父市みどりが丘49
J's Bar
住所/豊島区西池袋1-34-5 青井ビル2階
電話/03-3984-8773
営業時間/18:00~翌5:00
https://www.facebook.com/jsbar.ike
参考資料
『三楽50年史』(1986年)三楽/三楽株式会社社史編纂室
『鈴木忠治 : 小伝と追憶』(1956年)三楽オーシャン/鈴木三千代 等編
yjさん
2019年02月03日 20時05分
はまれぽ調査結果、興味深く拝見しました。『ウイスキー・ライジング』(ステファンヴァン・エイケン、小学館、2018-11)にも川崎蒸留所の話は出てきますが、シングルグレーン川崎として製品化された話はなかったような気がします。
oioaoiさん
2016年04月23日 14時13分
うまいウイスキーといえば「良い水」。良い水のイメージとはほど遠い「川崎」だと、なんだか工業製品のような雰囲気になってしまうのがイケなかったのかしら。
KazzSさん
2016年04月21日 19時45分
山楽オーシャンはキリンとくっ付いたのが最悪、軽井沢ディストラリーを閉鎖するなんて大間違い、あそこで出来たウィスキーは最高でした、当時国内唯一だったストレートモルトウィスキー「オーシャン軽井沢」、シップボトルの「グロリアオーシャン」味も瓶の形も最高の物でした、あれが二度と味わえないなんて・・