100年の歴史ある料亭「金沢園」が「泊まれる文化財」になる?
ココがキニナル!
有形文化財の創業100年になる料亭「金沢園」をゲストハウス&レストランとして再生するプロジェクトが動いているよう。どのような歴史があり、どのような再生プロジェクトなのか調査をお願いします(まさしさん)
はまれぽ調査結果!
与謝野晶子も愛した、100年の歴史を持つ横浜市金沢区の料亭「金沢園」は、インバウンド需要を見越し、2016年7月を目安に建物の一部がゲストハウス&カフェレストランに再生される予定
ライター:岡田 幸子
100年目に再生プロジェクトが始動
国登録有形文化財も受けた風情ある建物は残しながら、新たな活用の道を開けないか? そんな模索が続くなか、名乗りを上げたのは都内で留学の斡旋や支援を手がける株式会社エー・アイ・ジェイ代表取締役CEOの喜多正顕(きた・まさあき)氏だった。
実は横浜出身という喜多氏も金沢園のことは最近まで知らなかったとか
「2019年にラグビーワールドカップ、2020年にオリンピックとパラリンピックを控え、訪日外国人向け、つまり“インバウンド需要”のさらなる拡大を見越し、金沢園を外国人向けのゲストハウス“ホステル金沢園”として再生するプロジェクトを立ちあげました。当社としても初めてのチャレンジとなりますが、成功を確信しています」とは喜多氏の言葉。
ゲストハウスとしての再始動に向けて準備中なのだ
来日する留学生の生活もサポートしている同社では、都内で4軒のシェアハウスを運営してきた。そのノウハウも生かしながら、訪日観光客向けに金沢園の建物の一部をリーズナブルな宿泊施設として提供するという。
1階は40席程度のカフェレストランとして
2階は10人程度収容のドミトリーと
数室の個室を擁する宿泊施設として活用していく方針だ
もともと、横浜市港北区出身という喜多氏が金沢園の存在を知ったのは昨年の9月。知り合いの建築家から紹介を受けたことがきっかけだったという。
「このような素晴らしい建物が横浜に残っているということを知り、後世に伝えなければと思いました。文化庁、横浜市都市整備局企画部都市デザイン室などの助言を受けつつ調査するうち、料亭としてだけではなく、旅館やレジャー施設としての役割を果たしてきた金沢園を本来の形に戻すことが、経営の安定化、ひいては施設維持に繋がると感じたのです」
建物のそこここに
風情が漂う
箱根富士屋ホテルで外国人観光客の姿を多く見かけるように、国内の歴史ある建物に宿泊したいという外国人観光客のニーズは高い。しかし、老舗旅館の風情を味わうには、高額な費用が必要になるケースが多く、バックパッカーなど若年旅行者ではなかなか難しいという現実もある。
桜の季節の金沢園。これぞCOOL JAPAN!
「“ゲストハウス”という形態をとることで、コストを抑えてより幅広く、より多くのお客さまを迎えることができます」
元旗亭ということで洒落た浴場もある
職人の技が光るタイル細工は、外国人観光客にもウケそう
喜多氏自身、海外をバックパッカーとしてまわった経験から、旅行者のニーズには敏感だ。
この風情をリーズナブルに味わえる施設に
「古い木造建築ですので、防音性や遮音性などに劣る点は否めません。それでもこの風情を楽しみたいという方に向けて、ゲストハウスは低価格での提供を予定しています」
ドミトリーは1名3800円、個室は4名まで1万2000円程度を想定しているそうだ。
それなら気軽に利用できそう。まさに「お値段以上」!
総工費の一部はクラウドファンディングでも
補修を含め、現在リノベーション工事中の金沢園。再生計画には、総額3900万円の予算が見込まれるという。
真っ直ぐな木材の入手困難だった往時がしのばれる曲がった梁も見える
趣ある美しい飾り窓だが、やはり「古さ」は否めない
「資金の大部分は調達済みですが、このプロジェクトを知ってもらいたいという思いもあり、一部クラウドファンディングで資金援助を呼びかけることにしました」
クラウドファンディングサイト「READY FOR」で喜多氏が募るのは400万円。2016年6月28日午後11時までを期限とし、期間の半分が終了した現在、260万円超が集まったという。
「目標額を達成できなくても、再生計画自体が頓挫するということはありません。しかし、古い建物をリノベーションするということは、想像以上に大変で・・・。よりよい形で再スタートを切るためには、みなさまのご協力が必要なのです」
古い木造建築の趣を残しながらの改修は予想以上にコストがかかることも
大きなガラス戸に囲まれているため、空調の負担も大きそう・・・
利用者の快適性向上のためには、費用はいくらあっても充分ということはなさそうだ。さらに、喜多氏は金沢園に単なる宿泊施設以上の価値を付加したいと考えているという。
建物や空間だけでない付加価値が用意されている
「現時点での金沢は、外国人向けの観光地として決してポピュラーとは言えません。近隣施設と連携しながら、金沢の魅力を発信するツアーなどを企画して、地域創生につなげたいと考えています。ここを拠点に鎌倉ツアーも可能です」
訪日観光という新しい需要を取り入れて、金沢区を盛りあげたいと語る喜多氏の口からは、楽しいアイデアがどんどん飛び出してくる。
「“地産地消”をコンセプトとしたレストランでは、地元の魚介や野菜などを積極的に提供。厚木の蔵元からお酒を取り寄せることも企画中です」
福富町「横浜ベイブルーイング」のクラフトビールも提供予定
「着物や甲冑(かっちゅう)を用意して、コスプレ的な楽しみも提供できないかとも考えているんですよ(笑)」
キニナル開業日は2016年6月を予定していたが、許可申請などの関係で少し遅れそうだという。とはいえ7月、遅くとも8月には「ホステル金沢園」がスタートを迎える。生まれ変わった金沢園、楽しみだ。
取材を終えて
「横浜市内にこんな場所があったなんて!」取材中に何度も発した言葉だ。
裏手に広がる山からは
こんなにぎやかなさえずりも (※クリックすると音が流れます)
横浜市内で初めて、文化財に宿泊できる施設となるという「ホステル金沢園」。若き企業家・喜多氏のアイデアと地元愛が詰まった、素敵な場所になりそうだ。
「このプロジェクトの成功が新たなビジネスモデルを確立し、全国に新たなプロジェクト立ち上げが続くといいなと考えています。地方創生というと大げさですが、日本にはまだまだ掘り起こされていない魅力がたくさんありますから」とは喜多氏。
記念碑的に保存されるだけが歴史的な建造物の在り方ではない。歴史ある「泊まれる文化財」の試みは、はじまったばかりだ。
―終わり―
ホステル金沢園(2016年夏オープン予定)
https://www.facebook.com/HOSTELKANAZAWAEN/
住所/横浜市金沢区柴町46
電話/03-3818-0123(準備期間中受付:エー・アイ・ジェイ)
クラウドファンディングREADY FOR?
横浜で創業100年!登録有形文化財の料亭をゲストハウスに!
https://readyfor.jp/projects/7379
(2016年6月28日 午後11時まで)
スチール撮影/猪俣博史
記事中※印の画像は料亭金沢園HPより引用
http://www.kanazawaen.com/index.html
三日坊主さん
2016年06月06日 11時06分
与謝野晶子女史の文の抜粋の中に暴走とありますが、房総の間違いでは?
ryutafeijoadaさん
2016年06月04日 23時25分
↓レイシストですね。みっともない。素敵な宿として再生してくれることを願っています。
八景のカズさん
2016年06月03日 07時04分
利益を追求するあまり、大勢の客を泊まらせないよう気を付けてほしい。維持費との兼ね合いで難しいかもしれないが、人が多いと建物の傷みが早く進行してしまうし、風呂場は一番傷みやすいので手入れが大変。あまり安いと中国人観光客が目ざとく見つけてやってくるので、宿泊マナーの悪さに他の客が大迷惑を被ることが他所でよく聞くから気を付けてほしい。