横浜市と山梨県道志村で幻の飛び地合併計画があったって本当? 前編
ココがキニナル!
山梨県道志村と横浜市で飛び地合併計画があった?/横浜市が断った理由/「水カフェどうし」って(浅田真央子さん/albireoさん/bausackさん/としお029さん/紀洲の哲ちゃんさん/もまさん他)
はまれぽ調査結果!
2003年に道志村より「横浜市との合併」の申し入れがあったが、両住民の合併機運の高まりが欠けているなどの理由で合併には至らなかった。
ライター:楪 ゆう子
幻の合併計画について横浜は?
それでは、合併の申し入れを受けた横浜市の反応はどんなものだったのだろうか?
堀さんによると、市町村の合併の特例に関する法律第4条では、「選挙権を有するものが、その総数の50分の1の連署を持って、その代表者から、市町村の長に対し、当該市町村が行うべき合併対象市町村の名称を示し、合併協議会を置くよう請求することができる」とのこと。
深緑の道志村に対して海の青が眩しい横浜
今回、道志村の住民グループは、有権者の4割弱にあたる署名を集め、合併協議会の設置を道志村村長に求めた。そのため、これを受けた道志村村長は、当時の横浜市長である中田宏(なかだ・ひろし)市長に通知。
合併の可否を市議会で付議するかどうか、ホームページで市民アンケートを実施し、議会で議論した結果、同年9月に以下の理由から、市議会にかけることなく合併の申し入れを断っている。
(1) 双方の住民による合併機運の高まりが欠けている
(2) 道志村の総意として合併を求めているとは言い切れない
(3) 50kmも離れ、生活圏が一体とは言えない
合併となると通常は近隣同士の話になるため、横浜市民としても驚きを隠せないというのが正直なところだったのではないだろうか。
市民アンケートを行った横浜市ホームページ
「合併の話はなくなりましたが、横浜の水源を道志村のみなさんが100年間に渡って守り続けていることは事実ですし、合併話が持ち上がる前から水道局を通じて横浜市との交流はあった訳ですから、それだけ横浜を身近に感じてくれていたということでしょうね」と温井さん。
水を通じた縁が招いた飛び地の合併騒動は、幻に終わった。しかし、これをきっかけに、両市の関係は新たな展開を迎えることになる。
さらに友好関係が深まった両市
その後横浜市と道志村は、2004(平成16)年6月22日付けで「友好・交流に関する協定書」を締結。同村を「横浜市民ふるさと村」とすることに合意した。
これ以降、市民・村民間の交流を活発化させるため、多種多様な友好交流促進事業をスタート。
好交流に関する協定書(横浜市役所政策局大都市制度推進課公式サイト)
「横浜市民ふるさと村」に関する覚書(横浜市役所政策局大都市制度推進課公式サイト)
横浜市と道志村による「横浜市民ふるさと村事業」では、横浜市民(在住・在学・在勤)を対象とした『横浜市民優待サービス』を提供。これによって、横浜市民は道志村の宿泊・温泉・体験・スポーツ提携施設の利用が割引となる。
2010(平成22)年に体験型施設としてオープンした「みなもと体験館」
また、横浜市では、横浜市に在住・在学・在勤の18歳以下の方を含む家族・団体などを対象に、道志村観光協会加盟のキャンプ場の一部を利用する際、利用料金やテントサイト料の割引、キャンプ用機材(テント、炊事道具)の無料貸し出しなどを行っている。
加盟している道志村キャンプ場
別の取り組みとしては、2004年に始まった横浜市水道局浄水課の「道志水源林ボランティア事業」では、市民ボランティアの協力により民有林の整備を進めている。
「市民ボランティアのみなさんによる間伐のおかげで、水道局管理区域外での自然災害の未然防止につながって助かっています」と諏訪本さん。
自然を満喫しながら働く道志水源林ボランティア
このボランティアは、関内から無料のバス送迎付きで都会では味わえない非日常体験ができることから中高年を中心に人気が高く、1回に70名から80名もの参加者が集まるとのこと。活動期間は4月から11月(11月は予備日)の期間で月2回程度行われている。
2016(平成28)年10月までの活動で、これまで合わせて191回、のべ1万3000人もの横浜市民が参加しているというから驚きだ。
専門家も同行し、安全性が確保された中で作業する
ちなみに、この「NPO法人道志水源林ボランティアの会」の活動資金は、資金協力という形で水源保全に参加できるよう設置された「水のふるさと道志の森基金」でまかなっている。「水のふるさと道志の森基金」には市民や企業からの寄付やペットボトル水「はまっ子どうし The Water」の売り上げの一部が受け入れられている。
道志村の源流水を詰めた「はまっ子どうし The Water」
こうして間伐された木材などは、以前は横浜市が行った事業で、横浜市内の公共施設にも活用された。
掲示板の枠やプレート、飾り壁などに間伐材を活用(旭区役所市民ギャラリー)
横浜市内の小学校の教室の壁や、チップ舗装、コミュニティハウスのウッドデッキなどで間伐材を使用していたとのこと。
教室などの腰壁(壁の低い部分)に間伐材を活用(港南区の野庭すずかけ小学校の児童会議室)
さらに、横浜市教育委員会(以下、市教委)でも、以前「道志村自然体験学習プログラム作成のための資料集」を作成し、横浜市立小・中学校に配布していたとのこと。
小学校の宿泊体験学習や中学校の自然教室を道志村で実施することを促進し、宿泊体験学習などを充実したものとするため、道志村と協力しながら自然体験プログラムを開発した。
横浜市内の子どもたちに自然体験プログラムを提供
また、市教委が毎年夏休み期間にさまざまな社会体験を通じた「人との交流」の場や機会を提供することなどを目的として開催している「子どもアドベンチャー」において、市役所内で「横浜の友好交流村(道志村・昭和村)を体験しよう! 」というワークショップを展開。
政策局大都市制度推進課、水道局浄水課、さらに道志村の協力のもと開催し、2016年度は小中学生169人、保護者など109人が参加した。このほか、市教委では、新採用教員の初任者研修を道志村で行っている。
泥水が濾過(ろか)される様子を観察する水源かん養機能の実験装置
また、2014(平成26)年には「災害時における相互応援に関する協定」及び「道志村への水源林木材の寄附に関する協定」を締結している。
災害時における相互応援に関する協定は、具体的には、横浜市・道志村双方による被災者の一時受け入れ、食料・飲料水・生活必需品の提供、両市村住民生活の復旧・復興などに必要な職員の派遣および資機材などの提供などが含まれる。
災害時における相互応援に関する協定書
想定外の「合併騒動」により、両市の関係はかえって深まったのである。
最後に、道志村役場の諏訪本さんは「今後も村民をあげて水源を守っていく所存です。ドライブがてらに1時間半で来られる場所なので、横浜のみなさんもぜひ自然を満喫しにきてください」とコメント。
さらに、横浜市政策局の堀さんが「370万人を超える市民の中には、道志村と横浜市の友好関係を知らない方がまだたくさんいます。大切なパートナーである道志村の存在を知っていただき、実際に訪れ、良さを実感してもらうきっかけになればいいですね」と締めくくった。
後編は、洪福寺松原商店街の中にオープンして間もない“全国初の道志村アンテナショップ”「水カフェどうし」と「冬の道志村現地取材」レポートをお届けする。
取材を終えて
「血は水より濃し」ならぬ「水は血より濃し」。
今回の取材により、横浜市と道志村が100年に渡る水源の縁のおかげで、地元のみでは得られない恩恵を受け合い、助け合う関係を築き上げてきたこと。そこから派生した合併計画が両市の急接近を招いたこと。横浜市水道局浄水部の温井さんが地元民並みに道志村を愛してやまないことがよく分かった。
ふだん何気なく口にしている横浜の水道水だが、蛇口の先に森があることをいつも忘れないでいたい。
ー終わりー
ノンちゃんのパパさん
2017年04月01日 22時09分
私がまだ小学校にも入らない昭和20年代半ばに「三太物語」というラジオドラマがNHKから放送されていました。「おらあ、三太だ。山の子だ」という元気のよいかけ声で始まるドラマでした。その舞台が道志村であることを10年ほど前義兄から聞きました。大学に入り車の免許を取りドライブに出かけました。お気に入りのひとつが道志を通って山中湖に抜けるコース。谷沿いの細い未舗装の道を走りました。山伏峠は旧トンネル(今は塞がれているはず)でした。道志から山伏峠の間の道を全面通行止めにして改修していたこともあり、その時は都留に向かわせられました。道志村で昼飯を食べ、川に入ってばちゃばちゃ歩いた覚えがあります。大学に勤めてからは丹沢の岩石の年代測定の研究をした関係で、何回か道志にも足を運びましたし、卒論の学生に試料採取を命じたこともありました。いろいろとお世話になり、懐かしい道志です。
プーさんさん
2017年02月11日 16時33分
月一回程度国道246から山中湖経由で道の駅道志で休憩して16号経由で磯子までドライブを楽しんでます、距離で220KM 時間は7時間かかります、今はまだ雪がありそうなので3月になったら始動です、早く自然の美味しい空気に触れたい。
ようべえさん
2017年02月08日 22時20分
道志村出身のものです。小さい時から横浜を身近に感じていました。大学時代は横浜で生活してましたし、ちょうどその頃合併騒動がありました。かなり周りの人にびっくりされてましたし、自分でもびっくりでした。それが今となっては、このような形で取り上げられてるのが嬉しいです。少しでも道志村に興味を持っていただけたら足を運んでみてください。