横浜市新市庁舎建設予定地で、発見された明治時代の遺構とは?
ココがキニナル!
横浜市新市庁舎建設予定地で見つかったレンガ造りの建築物の遺構は、今どうなっている?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
2015(平成27)年に発掘調査を行い、工事のため現場から撤去して一部を保管。保管中の遺構は新庁舎完成後に公開予定。
ライター:はまれぽ編集部
新庁舎で古き歴史を知る
横浜市の新市庁舎建設予定地で見つかった明治時代の建物遺構。2020年の庁舎完成後の遺構の公開プランについても話をうかがった。
福田さんの説明によれば、もともと付近には大岡川の船着き場が残されていたり、レンガ建築もいくつか現存している。それらの建造物と調和する形で、訪れる人がこのエリアの歴史を感じられるようなプランを策定中とのことだ。
現存するレンガ建築のひとつ、旧帝蚕(ていさん)倉庫事務所
出土した遺構のうち、新庁舎の敷地内で公開予定なのは、先ほど写真で紹介した灯台寮のレンガ遺構と石積み護岸、ならびに横浜銀行集会所の柱の一部。それらはただ展示するだけでなく、出土場所を地面に示す「フットプリント」という方法で、かつてこの地にこんな建物があったと、より実感をもって学べるような見せ方にしたいそうだ。
石積み護岸の展示案。青い円内に出土した護岸の遺構を展示する(提供:横浜市)
たとえば上記図面のグレーで囲まれた場所にフットプリントと本物の護岸遺構を展示し、往時の船着き場と護岸が広がっていた様子を見学者に伝えるといった展示内容を検討中とのことである。
また横浜銀行集会所隆起地層は、みなとみらい線馬車道駅から新市庁舎への通路に展示予定。レンガ風の馬車道駅のデザインにもマッチしたコンセプトにしたいという。
市の計画では、庁舎の1階に行政関係の部署をいれるほか、民間の商業施設も入居する予定で、新庁舎自体も周辺エリアににぎわいをもたらすコア施設になることが期待されている。発掘された遺構もそうした市の狙いに一役買い、訪れる人に歴史のロマンを感じさせて、街歩きを楽しくしてくれそうだ。
新庁舎低層階のイメージ。ここに遺構の一部も展示される(提供:横浜市)
もし予期せぬ遺跡が見つかったら?
しかし、新庁舎建設予定地の場合は、もともと明治時代の建造物が埋まっていることが予想されていたので、あらかじめ試掘調査が行われていた。そのため、多くの文化財を発掘できたが、そのような調査もなく工事現場で突然古い建物の跡が出土したらどうなるのか、さらに聞いてみた。
大津さんによると「まず工事を行っている土木業者が行政に届け出る義務があります。そうしたら行政で調査を行い、どの程度歴史的価値があるか判断します」とのことだ。新庁舎予定地の場合は遺構の価値が高いと認定されて、「埋蔵文化財包蔵地(まいぞうぶんかざいほうぞうち)」と認定された。しかし、そこまで歴史的価値がないと判断された場合は、本格的な発掘や調査まではなされず、工事が続行される。
発掘で歴史的価値がはかられる
「埋蔵文化財包蔵地」とは、歴史的価値の高い文化財が埋まっていると認定された土地のこと。認定されるとその自治体の文化財地図に登録され、土地自体もいわゆる「遺跡」とみなされる。新庁舎の建設地周辺は、「洲干島(しゅうかんじま)遺跡」と命名されている。
もし工事中に遺物が出土したら、行政による調査でその価値が鑑定される。「お宝発見!」のような世界で、ちょっとワクワクしてくる話でもある。
工事が進む新庁舎の地下もれっきとした遺跡
現在、馬車道駅周辺では民間デベロッパーによる複数の再開発計画も俎上(そじょう)に上っている。これらが着工したら、また何か歴史的な遺物が出土するかもしれない。
新しい市庁舎を中心に、近未来的なまちづくりが進む馬車道駅で、横浜の歴史に愛着が湧く話を聞くことができた。
100年前のレンガ建築が、ふたたび日の目を見るのは2020年
取材を終えて
エネルギッシュな大都会らしく、建物の解体と新築が繰り返されていく横浜の街。もしかしたら皆さんの近所にも、人知れず眠っている歴史的な建築物があるかもしれない。
工事で土地を掘り起こしてみたら、そういった遺物がひょっこり出てくる可能性も。そう考えると、普段気にしていたなかった地面の下の、横浜の先人がつくった歴史にも思いをはせてみたくなった。
ー終わりー
ホトリコさん
2018年03月09日 12時16分
遺構発掘がメインで新庁舎はついでだったくらいの大発掘(?)になりましたね!