鎌倉小町通りの遺跡発掘現場!鎌倉武士の生活とは?
ココがキニナル!
鎌倉の小町通りに遺跡調査中という看板と囲いがあり、中には地面を掘っている人がいました。どんな遺跡があるのか非常に興味があります。遺跡の調査報告は一般人には公開される?(リグヒトさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
小町通りで現在発掘している場所は鎌倉時代の武家屋敷跡と推定され、調査後は集合住宅になる。報告書も刊行される予定
ライター:ハヤタミチヨ
鎌倉の遺跡をいつでも見られる穴場スポット
本やネットなどで昔の絵は私達にも見やすいが、発掘調査で浮き彫りになる三次元の情報があれば、古い時代に生きた人たちの跡がイキイキとよみがえってくる。しかし、発掘調査は終わってしまえば埋めてしまうし、出てきた物はどこで見るのかも一般ではわかりにくい。だが、鎌倉にはその一部分を、博物館ではなく気軽に見ることができる場所がある。そんな2つのスポットを紹介したい。
1つは、鶴岡八幡宮近くの若宮大路沿いにある「タリーズコーヒー鎌倉鶴岡八幡宮前店」。外観や内装に鎌倉らしく和が取り入れられているが、グッズやコーヒー豆が売られている棚や、注文カウンターまわりなどを一見すると、他のタリーズの店舗とそれほど変わらない。
鎌倉の町に合わせた外観が渋い!
だが注文を終え、席に座ろうとした時、明らかに他の店と異なる物が目に入る。そこには発掘された鎌倉時代の遺物が展示されているのだ。
他のタリーズの店舗とは明らかに違う!まるで歴史博物館だ!
実はこの場所は、源頼朝の義弟・北条時房(ほうじょう・ときふさ)の邸宅跡地とされており、建設前には発掘調査が行われた。展示されているのはその際に出土した一部で、店を利用すれば目の前で貴重な遺物を見ることができる。
しかもそれだけではない。タリーズが建設される前はどのような様子だったのか、壁にうつされるスライドで発掘調査時の画像も写されるという凄いカフェなのだ!
遺跡調査の様子が映し出される壁
カウンターや窓の外から、復元された江戸時代の井戸や祠、説明板も見ることができる。近くでじっくり見たい時は、店の入り口横の小道を入れば見学が可能だ。
井戸、祠など一部残された遺跡が再現されている!
シアトル系コーヒーのチェーン店としてよく知られるタリーズ。ストアマネージャーの飯島隆之(いいじま・たかゆき)さんに「発掘された遺物を展示するなんて異論はなかったのか?」と尋ねてみたが、そのような話はなかったようだ。むしろこのタリーズは、歴史ある鎌倉らしい店をコンセプトに、コーヒーを飲みながら、ここが鎌倉の遺跡であったことを感じられるスポットとなっていた。
2つ目は、同じく若宮大路で、タリーズと通りを挟んでちょうど反対側のあたりにある「M'sArk KAMAKURA(エムズアークカマクラ)」
おしゃれなビル「M'sArk KAMAKURA」
飲食店やギャラリー、有料トイレが入っているビルだが、よく見ると左端の案内板に「遺構保存展示中」と書いてある。ビルへ入ってみよう。
通路を進むと、足元のガラスケースの下に、なんと鎌倉時代の遺構(建物の柱穴など土に残る跡)がそのまま保存・展示されているのだ。
まるでアートのような保存方法!
遺物の展示や写真ではなく発掘現場に来たかのような臨場感ある展示が、ビルの中で、入場料や観覧料もなく無料で見学できる。
実はここ「北条小町邸跡」とされる遺構。鎌倉北条氏の本家筋の屋敷といわれている。
大変貴重な遺構のため、通常は発掘調査を行い写真や記録をとるのみで残す二次元的な記録で終わるものだが、遺構そのものを三次元で保存する「造形保存」と呼ばれる手法がとられているのだ。
特殊な技術で現場の土を固めたもの
レプリカなどではなく本物の現場の一部。ガラス上の解説図と遺構を見比べることができるので、とてもわかりやすい。
芥穴(ごみあな)。中にあるのは当時の人の生活ゴミ
ゴミ穴とされる場所に散らばっている陶器や貝殻は、これもレプリカではなく発掘された本物。行政に申請をして許可を得た上でこのように展示しているそうだ。ちなみに、この遺構保存展示については、先に発掘現場で取材した博通からアドバイスを受けたとのこと。
撮影の時はタイミングが悪くオーナーが御不在とのことで、遺構のすぐ横にある「侍気分」店長の小西さんに説明していただき、ビルオーナーの長戸芳郎(ながと・よしろう)さんには、後日電話にて詳しいお話を伺った。
遺構のそばにある「侍気分」では、鎌倉時代や室町時代をモチーフにした雑貨を販売している
長戸さんは、これまで多くの世界遺産を訪ねた経験もあり、鎌倉の街には心地よく過ごせる清潔なトイレが必要と感じたことから、ビルの2階には1人100円で利用できる有料トイレを設置。遺構の展示は、最初は「ついで」のつもりだったそうだ。
ところが、この遺構保存には想像以上の資金と時間がかかった。それでもやりきった長戸さんだが「こんな小さな場所でも本当に大変でした」と語る。
「同じようなことをするのは民間ではなかなか難しいでしょうね」と、遺構保存を実際に手がけられたからこその実感がこもる言葉が印象的だった。
取材を終えて
個人的には、武家の古都・鎌倉だからこそ、文字や絵といった二次元だけでなく、三次元で歴史を見ることができる遺跡や遺物をできるだけ残してほしいという思いはある。ただ、古いものを壊し新しいものを作りの繰り返しで、より住みやすくなった現在があるのも事実だ。それでも、現代には全てを跡形もなく壊すのではなく、丹念な発掘調査やその記録、過去にはなかった科学や技術で、後世に情報を残し伝える手段もある。
取材した小町通りの発掘現場には、およそ700年前の鎌倉時代の武士、それも上級クラスの武士が住んでいたと推定される。そのような歴史を知ることができるのも、残されている絵巻や記録、そして発掘調査の積み重なった成果によるところが大きい。調査が進むことで過去への想像をふくらませることができるのも、歴女にはたまらない楽しみなのだ。取材した現場の報告書の刊行も楽しみに待ちたい。
-終わり-
参考資料
『神奈川県鎌倉市若宮大路周辺遺跡群(No242)発掘調査報告書(鎌倉市雪ノ下1丁目148番4・190番1地点』株式会社博通、2017年
『図説鎌倉歴史散歩』佐藤和彦・錦昭恵編、河出書房新社、1993年
『鎌倉市史社寺編』1959年
のげぞうさん
2019年04月03日 20時12分
ここ小町通りじゃないでしょ