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横浜に炭鉱があったって本当?(後編)

ココがキニナル!

横浜に「炭鉱」があった話を詳しく聞きたいです。第二次大戦中まで上大岡や野庭で「亜炭」が多く採掘されたそうで、現在千住院がある山の下も炭鉱だったそうです。(katsuya30jpさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

港南区最戸、日野、野庭町、戸塚区下倉田町といったところに亜炭の炭鉱があった。採算の関係で横浜市内で消費したとされている。

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ライター:松崎 辰彦

坑口はどこにあったか



訪れたのは千手院近くの道路。投稿者も述べているように、亜炭が掘られていたという場所である。
近くには神奈川県戦没者慰霊堂もある。
 


千手院
 

神奈川県戦没者慰霊堂


ここで紹介されたのが、ご近所に居住している笠原秋勝さん。1927(昭和2)年生まれというから、今年86歳か。しかし足腰は頑健で、非常に優れた記憶力をお持ちなのには感服した。
 


笠原秋勝さん
 

田代さん(左)と長谷川さんに、当時の話をする笠原さん


「このあたりは景色が変わったから、もう想像がつかないと思います」
坑口は2ヶ所あったようで、一本は中に入ると二手に分かれていたとのこと。
坑道はかなり長かったようである。
この周辺はまだ亜炭があるといった話も出て、興味が湧く。さらに「山があったから雨が降ると山崩れがあったりして、そういうことには非常に敏感だった」などという話もしてくれた。

それでは坑口はどこにあったのだろう? 記憶を頼りに、笠原さんにおよその位置を指さしてもらった。その位置は千手院の下をしばらく歩いたところ、現在ではすでに人家が建っている場所であった。
 


実際の坑口は右手にある人家の中にあったようだ


この場所に、かつて横浜の炭鉱があったのである。

「この近辺は、地下を掘っても、出てくる水が茶色く濁っている場合がありました。亜炭のアクだと思います」

かつて横浜にあった亜炭鉱。その歴史を追うことで、日本の歴史の諸相が見えてくる。



亜炭を燃やしてみた



亜炭をもらったので、燃やしてみた。家庭用ガスコンロの火、ライター、ロウソクの炎といろいろ試してみたが、一様に着火性は優れているとは言えず、熱量もたしかに高いとは思えなかった。
 


亜炭のかけらをもらった
 

火をつけてみた


その動画を撮影したので、興味のある方はご覧いただきたい。


<動画>亜炭を燃やす動画はこちらから
(YouTubeにリンクしています)




取材を終えて



宮沢賢治に「早春」という詩がある。このような詩である。

黒雲峡(かい)を乱れ飛び  技師ら亜炭の火に寄りぬ
げにもひとびと祟むるは  青きGossan 銅の脈
わが索むるはまことのことば
雨の中なる真言なり

──「技師ら亜炭の火に寄りぬ」と亜炭が登場する。北国で技師たちが暖をとっていると思われる様子が描かれている。
かつての日本では、亜炭が身近にあったことを教えてくれる一編である。

鉄の道と亜炭の道が迎陽トンネルで交差している、という亀野住職の指摘は夢があるものだった。古代人と近代人の粘り強い足腰が、鉄とエネルギーを流通させ、時代をたくましく支えたのである。亜炭は戦争という時代背景と深くかかわっている。日本のエネルギー事情が、そこに見えてくる。

また一つ、横浜の奥の深さを感じる取材だった。このたびの取材は亀野住職もメンバーである港南歴史協議会の方々の全面的なご協力をいただいた。皆さんの郷土史への知識と情熱、そして緊密な連携には目を見張るものがあった。深甚なる感謝の意を表したい。

当時の思い出を語っていただいた笠原さんも、相当のご高齢である。こうした歴史の証人の方々の話を記録に残し、後世に伝えることが、今の私たちに求められていよう。

横浜の炭鉱。もうほとんど忘れられた事跡だが、その探索は新鮮な驚きを伴うものだった。今後のさらなる究明を期待したい。


─終わり─


参考文献
・港南の歴史研究会編『こうなん みちばたの風土記』(横浜市港南区役所)
郷土戸塚区歴史の会編『ふるさと戸塚』(戸塚区老人クラブ連合会)
港南歴史協議会編『こうなんの歴史アルバム』(港南歴史協議会)
港南歴史協議会編『街づくりの歴史物語 こうなんの歴史アルバム2』(港南歴史協議会)
天沢退二郎編『新編宮沢賢治詩集』(新潮社)


参考HP
Kameno’s Digital Photo log「港南区の炭鉱と戦争の影」
http://teishoin.net/blog/003554.html

特定非営利活動法人 港南歴史協議会
http://www19.atwiki.jp/konanrekishi/

 

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  • 千葉県民なんですが、『ふるさと戸塚』を読んだことがあったので亜炭のことは知ってました。現在も埼玉県には現役の亜炭鉱山がありますね。もっとも用途は燃料ではなく肥料ですが。

  • 前編・後編共に読み終えて思う事は、『石炭』に対する『亜炭』は『檜』に対する『翌桧(あすなろ)』の話にも似て、非常に興味深く思えました! 関東の地層には嘗ての富士山の噴火堆積物により『関東ローム層』が形成されていると聞き及んでいますが、『亜炭』の形成された時代や原因なども掘り下げて紹介して欲しかったです。

  • 昭和30年代の上大岡生まれで現在日野南在住の私は、「港南区のことなら大抵のことは知ってる」と思ってましたが、まさか「炭鉱」があったとは。地元のことでも知らないことってあるんですねぇ。教科書に載るような「歴史」にはあまり興味がありませんが、人々の「暮らしの歴史」には興味津々です。丁寧な取材もご苦労様! ・・・ただ、動画はもう少しピントを合わせてほしかったかも(笑)。

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